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レンドーン・ラグジッス

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「ただいま。ユーラ」
「お姉様……」

私はユーラを、強く抱きしめた。

「三人には、ちゃんと復讐しておいたわ」
「ありがとう……。だけど、彼女たちにも、きっと理由があったの。人は、生まれながらにして、悪であるはずがないもの」
「ユーラ……。あなたは優しすぎるわ。罪には必ず、罰が必要なの。……もちろん、その後、どう生きていくかも含めて、制裁だから、やりすぎてしまうのは、良くないけれどね……」

少々、我を忘れてしまったところもある。
だけど……。ユーラを酷い目に遭わせた奴らを前にして、冷静でいられなかった。

「さぁユーラ。あなたを酷い目に遭わせたのは、あいつらだけじゃないでしょう? 次は……」
「ユーラ様! ローザ様!」
「あら……。どうしたの? エリオ」

メイドのエリオが、慌てた様子でやって来た。

「レンドーン様が、今、お見えになっております」
「レ、レンドーン様!?」

ユーラの顔が、真っ赤になった。

レンドーン様は……。ここから少し離れた土地にある大国、カイムハーデンの侯爵令息だ。

父同士が仲が良く、もしバッテンガルムの王太子との婚約がなければ……。
きっと、ユーラの夫になっていた人である。

そして、そのユーラは、国での生活に堪え切れず、逃げ出してきたところ!

「ユーラ。大丈夫よ。私が時間を稼ぐから、ゆっくりお化粧して、身だしなみを整えてからいらっしゃい」
「は、はい! お願いします!」
「エリオ! ユーラを頼むわよ!」
「かしこまりました!」

私は急いで、レンドーン様の元へ向かった。

☆ ☆ ☆


「レンドーン様……。すいません。ユーラったら、お寝坊さんで」
「ローザ様……。いえいえ。お気遣いなく」

やっぱりかっこいい……。
振る舞いもどこか気品があって。

この人こそ、ユーラの夫に、ふさわしい人だわ。

「今日は、どうされたのですか?」
「実は……。バッテンガルムから、ユーラ様が帰国したとの噂を聞きまして……」
「もう噂になっていますか……」
「すいません。ついうっかり、小耳に挟んでしまったものですから。いてもたってもいられず」
「いいえ。そのユーラを想う気持ちが、何より嬉しいですわ。……レンドーン様。少し、お話してもよろしいですか?」
「はい。是非、お聞かせください」

私はレンドーン様に、ユーラが受けた仕打ちを話した。

「なるほど。そのようなことが……」

レンドーン様は、静かに……。
だけど、確かな怒りを感じている表情で、話を聞いてくれた。

「それで……。レンドーン様。これは、私からの提案なのですが」
「はい」
「きっと、このまま私が、ユーラのための復讐を果たして行ったとき、二人の婚約は破棄されるでしょう」
「……はい」
「私は元々、あなたこそが、ユーラの夫にふさわしいと思っていました」
「ありがとうございます」
「ですから……。かつてのように、ユーラと親しくしてあげてほしいのです」

シャガ―との婚約が成立してから、レンドーン様とは、半年間疎遠になっていた。
しかし、ユーラにも、まさかシャガ―を愛しいと思う気持ちが、あるはずがない。

きっと、レンドーン様への愛が、強く残っているはずだ。

「僕で良ければ……。できることは、全てします」
「……ユーラを愛する気持ちは、きっと私の方が上ですが、越えられるように、頑張ってください」
「は、はい……。頑張ります」

しばらくすると、ユーラがやって来た。

あれだけ泣いて腫れてしまった瞼は、昨日のうちに、私の魔法で癒しておいた。

傷が目立っていた肌も、しっかりと綺麗にして……。

今のユーラは、ここを旅立つ時と同じ、完璧な姿に戻っている。

「……お美しい」

レンドーン様が、呟くように言った。
……ユーラが褒められると、まるで自分が褒められたかのようで、嬉しくなる。

「じゃあ、後は二人で、仲良くやってちょうだいね」
「そんな。ローザ様も、ぜひご一緒に」
「いいのいいの。夫婦水入らず……。久しぶりなのだから、ゆっくり会話を楽しんでちょいだい」
「お、お姉様。夫婦というのは」
「ふふふ。じゃあね」

真っ赤になったユーラの背中を、優しく叩いて、私は自分の部屋に戻った。
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