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隠されていた真実。そして和解――。

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「お母様――どうしてですか?」
「ごめんなさいリラ。全て私のせいなの」

 私はウィン様の顔を見つめます。
 しかし、ウィン様は首を横に振りました。
 母から直接聞けと――そうおっしゃるのです。

 私は震える足で、母の元へ近づいていきます。

「……説明をしてくださいますか?」
「事業に失敗した私は――あなたを売ることに決めたの」
「えっ――」
「悪い噂を流したのは私よ。それであなたが公爵家のペットになれば、もっとたくさん金を渡してやると言われて――」

 信じられないことでした。

 つまり――。
 この一連の出来事は、母の行動をきっかけとして始まったということなのですから。

「ごめんなさい……。私もあの穴に入って、永遠に眠ることにするわ。あなたに合わせる顔なんてないもの」

 母が立ち上がり、ウィン様の元へと向かいます。

「どうか、私をあの中に――」
「待ってください!」

 私は母に抱き着きました。

「……私を売り飛ばそうとしたのは、許せないことです。しかし、父がいなくなり、私の家族はあなただけ――。どうか、行かないでください。私の傍にいてほしいのです」
「リラ……」

 母が、私を優しく抱きしめ返してくれました。

「……改めて、初めましてお母様。僕はリラ様と――結婚をする予定……いや、確定した未来なので、予定というのはおかしいでしょうか。とにかく、リラ様の隣にいることを願うウィンと申します」
「ウィン王子……。ありがとうございます。私の娘を、たくさん愛してあげてください」

 泣きながら、私の背中を叩く母に――。
 私も涙を流してしまいました。

 全て、母が原因で起きたこと。
 それでも、ウィン様と出会えたのは、母のおかげなのです。

 であれば……。
 誰を恨む必要もありません。
 私は家族を愛します。

「涙はこれまでにしておきましょう。この国から、権力者が抜け落ちてしまいました。新たな王女となるリラ様……。そして、僕はこの国に越して来ねばなりませんね」
「……私が、王女?」
「そうですよ。その国で生まれた人間しか、一番高い地位には付けないのが通常の決まりです。リラ様なら、きっと誰からも愛される王女様になるはずです」
「……母である私も、保証するわ」
「お母様……」

 これでやっと……。全てが終わるのでしょう。

 三人で、身を寄せ合うようにして、抱きしめ合います。

「これからもよろしくお願いします……。家族として、妻として、娘として……」
「こちらこそ。リラ様。お母様。どうが末永く仲良くしてください」
「……もちろんです。皆を愛し、過去の罪を償うこととします」

 こうして私たちは――家族になりました。

 穏やかな光が外から差し込んでくるような、非常に天気の良い日のことだったのです。
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