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偽物聖女の末路
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「お、お父様!?」
エルモバルアに到着したシーシアは、その場で固まって動けなくなっているベリオルを見て、困惑した。
「シーシア……。我はもうダメじゃ。ここで一生、まるでマネキンの如く、生きてゆくしかないわい」
「何があったのよ……」
広場で松明を持って立ち尽くしている兵士たち。その火が、徐々に兵士たちに近づいていっている。そのまま放置すれば、やがて手元まで火が達し、兵士たちは……。
シーシアは考えることを放棄した。兵士は死んでなんぼだと考えている彼女にとっては、簡単な判断であったといえる。
「お父様。サンダルシアは?どこに行ったの?」
「国に帰った。リルビーと、両親と、リーマスを連れてな」
「リーマスも!?許せないわね……。ちょっとあんたたち聞いた!?ダントレアに行くわよ!あいつらをぶっ殺して、リーマスを取り返すの!」
シーシアの号令に、答えた兵士は一人もいなかった。
すると、一人の兵士が。
「なぁ、この国の兵士が、全員このまま固まって動かないなら……。俺たちで、ここを支配できるんじゃないか?」
「そうだよな。金も資材も、サンティーカと合わせれば、ほとんど働かなくたってやっていける」
「お、おい貴様ら、一体何を」
「……国王さん。そこで大人しくマネキンやっててくれよ。な?」
「くっ……」
「ちょ、ちょっとあんたたち、何勝手なこと」
シーシアはようやく気が付いた。
――兵士たちが、自分に淫らな視線を向けていることに。
「ずっとどうにかしてやりたいと思ってたんだよ!このエロ女!」
「なっ、さ、触らないで!私は聖女なのよ!?」
「嘘つけ!もうとっくに気が付いてんだよ!てめぇが偽物だってことくらいよ!」
「今まで散々こき使ってくれたよなぁ……?今度はシーシア様が、俺たちに奉仕する番じゃねぇの?」
「い、いや……。来ないで……。いやあああ!!!」
兵士を失った両国が滅びたのは、それからすぐのことだった。
エルモバルアに到着したシーシアは、その場で固まって動けなくなっているベリオルを見て、困惑した。
「シーシア……。我はもうダメじゃ。ここで一生、まるでマネキンの如く、生きてゆくしかないわい」
「何があったのよ……」
広場で松明を持って立ち尽くしている兵士たち。その火が、徐々に兵士たちに近づいていっている。そのまま放置すれば、やがて手元まで火が達し、兵士たちは……。
シーシアは考えることを放棄した。兵士は死んでなんぼだと考えている彼女にとっては、簡単な判断であったといえる。
「お父様。サンダルシアは?どこに行ったの?」
「国に帰った。リルビーと、両親と、リーマスを連れてな」
「リーマスも!?許せないわね……。ちょっとあんたたち聞いた!?ダントレアに行くわよ!あいつらをぶっ殺して、リーマスを取り返すの!」
シーシアの号令に、答えた兵士は一人もいなかった。
すると、一人の兵士が。
「なぁ、この国の兵士が、全員このまま固まって動かないなら……。俺たちで、ここを支配できるんじゃないか?」
「そうだよな。金も資材も、サンティーカと合わせれば、ほとんど働かなくたってやっていける」
「お、おい貴様ら、一体何を」
「……国王さん。そこで大人しくマネキンやっててくれよ。な?」
「くっ……」
「ちょ、ちょっとあんたたち、何勝手なこと」
シーシアはようやく気が付いた。
――兵士たちが、自分に淫らな視線を向けていることに。
「ずっとどうにかしてやりたいと思ってたんだよ!このエロ女!」
「なっ、さ、触らないで!私は聖女なのよ!?」
「嘘つけ!もうとっくに気が付いてんだよ!てめぇが偽物だってことくらいよ!」
「今まで散々こき使ってくれたよなぁ……?今度はシーシア様が、俺たちに奉仕する番じゃねぇの?」
「い、いや……。来ないで……。いやあああ!!!」
兵士を失った両国が滅びたのは、それからすぐのことだった。
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