上 下
11 / 16

真実の通告 ➁

しおりを挟む
「……嘘でしょ?」

渡された資料を見て、私は頭が真っ白になった。

「真実です。あなたの父親は……。他国では、指名手配を受けています」
「そんな……。ありえません!」
「もう三か月も前の話ですよ? まさか、家に連絡が行っていないとは、思いませんでしたが……」
「ですが、父上の傍には、お母様がいたはず!」
「夫が指名手配されてからは、娼婦として働いているそうですね……」
「嘘だ……」

膝から、崩れ落ちてしまった。

こんなことが、ありえるわけがない。

「元々あなたの父親は、詐欺グループの代表として、様々な悪事を働いていたそうですね。指名手配されてからは、当然稼げなくなったので、代わりに母親が、娼婦として働くことで、なんとか家に、お金を送っていたと……。そういう話になります」
「こんなの、デタラメですよ! 指名手配されたのであれば、すぐにでも家に連絡があるはずです!」
「私もそう思います。えっと……。すいません。急だったので、資料がまだ整理できていなくて……」

ネイリアが、私の落としてしまった資料を、確認している。

「あ、なるほど……。ブレッザ家は、そのタイミングで、父親自らの手によって、解散しているんですね」
「解散……?」
「はい。もう、ブレッザという名前は、この世に存在しません」
「……意味がわかりません。だったらなぜ私の元には、三か月も、それを知らせる人が、現れなかったのですか?」
「単に、面倒だったからでしょう……。あるいはこんな小さな街で、支配者面していたことすら、気が付かれなかったか」

嘘だ。こんなの、嘘でしょう……?

ブレッザ家は、誇り高き家……。
有名な軍人を多数排出した、名家……。

「……さて、セレノー。それとこれとは、話が別です。あなたはあなたで、罰を受けねばなりません」
「罰……?」
「三か月間、ブレッザ家という、存在しない家の名前を使い、街を支配していた罪は重い……。必ず、その間に得た金などは、本人たちに返してもらいます」
「そんなの無理です!」
「無理じゃないです。今でも、健気な母親から、お金が送られてきているのでしょう? それをちょっとずつ返していけばいいじゃないですか」
「……ボディガードの給料で、消えてしまいます」
「今月の給料を払い終えれば、後は解雇すればいいでしょうに」
「一人で、生きていけと……?」
「当たり前でしょう? 何を甘えたことを言ってるんですか」

無理だ……。

ボディガードが、全部やってくれていた。

面倒な手続きも、母上から送られてくる、金の整理も……。

一人で、できるわけがない。

「明日、またここへ来ます。それまでに、諸々の作業を済ませておくように。良いですね?」
「い、いや。お待ちください!」
「待ちません。私は忙しいのです」
「そんなぁ! 姫さ――」

無情にも、ドアが閉じてしまった。

どうして……。こんなことに。

私が一体、何をしたというんだ。

ブレッザ家の誇りを持って、必死で……。

その結果が、これ?
きっと夢だ。
夢に決まってる。

目を覚ませば、そこには父上と母上がいて……。

私は部屋に戻り、ベッドに籠った。
頭を空っぽにして、何も考えず、ただ時が過ぎるのを待つだけだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

婚約破棄?お黙りなさいと言ってるの。-悪役令嬢イレーナ・マルティネスのおとぎ話について-

田中冥土
恋愛
イレーナ・マルティネスは代々女性当主の家系に生まれ、婿を迎えることとなっていた。 そのような家柄の関係上、イレーナは女傑・怪女・烈婦などと好き放題言われている。 しかしそんな彼女にも、近頃婚約者が平民出身の女生徒と仲良くしているように見えるという、いじらしくそして重大な悩みを抱えていた。 小説家になろうにも掲載中。

姉が年々面倒になっていくのを弟と押し付けあっていたのですが、手に負えない厄介者は他にいたようです

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたシュリティ・アガルワルには、姉と弟がいた。両親は、3人の子供たちに興味がなく、自分たちの好きなことをしているような人たちだった。 そんな両親と違い、姉は弟妹たちに何かと外の話をしてくれていたのだが、それがこんなことになるとは思いもしなかった。

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。

藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」 婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで← うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。

婚約関係には疲れたので、しばらく義弟を溺愛したいと思います。

木山楽斗
恋愛
婚約者の浮気を知ったラルティアは、確固たる証拠は掴めなかったものの、彼に対して婚約破棄を突きつけた。少なからず噂になっていたため、婚約破棄しても婚約者側に非があるとされると、ラルティアは思っていたのである。 結果的に、彼女の思っていた通りにことは進んだ。しかし、ラルティアも少なからずあることないこと言われることになり、新たな婚約を結ぶのが難しい状況となったのである。 そこでラルティアは、しばらくの間の休息を弟とともに楽しむことにした。 ラルティアの行動は義弟であるルヴァリオにも少なからず影響しており、彼もしばらくの間は婚約などの話はなくなり、暇になっていたのだ。 元々仲が良い姉弟であったため、二人はともに楽しい時間を過ごした。 その時間の中で、二人はお互いが姉弟を越えた感情を抱いていることを自覚していくのだった。

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

処理中です...