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真実の通告 ➁
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「……嘘でしょ?」
渡された資料を見て、私は頭が真っ白になった。
「真実です。あなたの父親は……。他国では、指名手配を受けています」
「そんな……。ありえません!」
「もう三か月も前の話ですよ? まさか、家に連絡が行っていないとは、思いませんでしたが……」
「ですが、父上の傍には、お母様がいたはず!」
「夫が指名手配されてからは、娼婦として働いているそうですね……」
「嘘だ……」
膝から、崩れ落ちてしまった。
こんなことが、ありえるわけがない。
「元々あなたの父親は、詐欺グループの代表として、様々な悪事を働いていたそうですね。指名手配されてからは、当然稼げなくなったので、代わりに母親が、娼婦として働くことで、なんとか家に、お金を送っていたと……。そういう話になります」
「こんなの、デタラメですよ! 指名手配されたのであれば、すぐにでも家に連絡があるはずです!」
「私もそう思います。えっと……。すいません。急だったので、資料がまだ整理できていなくて……」
ネイリアが、私の落としてしまった資料を、確認している。
「あ、なるほど……。ブレッザ家は、そのタイミングで、父親自らの手によって、解散しているんですね」
「解散……?」
「はい。もう、ブレッザという名前は、この世に存在しません」
「……意味がわかりません。だったらなぜ私の元には、三か月も、それを知らせる人が、現れなかったのですか?」
「単に、面倒だったからでしょう……。あるいはこんな小さな街で、支配者面していたことすら、気が付かれなかったか」
嘘だ。こんなの、嘘でしょう……?
ブレッザ家は、誇り高き家……。
有名な軍人を多数排出した、名家……。
「……さて、セレノー。それとこれとは、話が別です。あなたはあなたで、罰を受けねばなりません」
「罰……?」
「三か月間、ブレッザ家という、存在しない家の名前を使い、街を支配していた罪は重い……。必ず、その間に得た金などは、本人たちに返してもらいます」
「そんなの無理です!」
「無理じゃないです。今でも、健気な母親から、お金が送られてきているのでしょう? それをちょっとずつ返していけばいいじゃないですか」
「……ボディガードの給料で、消えてしまいます」
「今月の給料を払い終えれば、後は解雇すればいいでしょうに」
「一人で、生きていけと……?」
「当たり前でしょう? 何を甘えたことを言ってるんですか」
無理だ……。
ボディガードが、全部やってくれていた。
面倒な手続きも、母上から送られてくる、金の整理も……。
一人で、できるわけがない。
「明日、またここへ来ます。それまでに、諸々の作業を済ませておくように。良いですね?」
「い、いや。お待ちください!」
「待ちません。私は忙しいのです」
「そんなぁ! 姫さ――」
無情にも、ドアが閉じてしまった。
どうして……。こんなことに。
私が一体、何をしたというんだ。
ブレッザ家の誇りを持って、必死で……。
その結果が、これ?
きっと夢だ。
夢に決まってる。
目を覚ませば、そこには父上と母上がいて……。
私は部屋に戻り、ベッドに籠った。
頭を空っぽにして、何も考えず、ただ時が過ぎるのを待つだけだった。
渡された資料を見て、私は頭が真っ白になった。
「真実です。あなたの父親は……。他国では、指名手配を受けています」
「そんな……。ありえません!」
「もう三か月も前の話ですよ? まさか、家に連絡が行っていないとは、思いませんでしたが……」
「ですが、父上の傍には、お母様がいたはず!」
「夫が指名手配されてからは、娼婦として働いているそうですね……」
「嘘だ……」
膝から、崩れ落ちてしまった。
こんなことが、ありえるわけがない。
「元々あなたの父親は、詐欺グループの代表として、様々な悪事を働いていたそうですね。指名手配されてからは、当然稼げなくなったので、代わりに母親が、娼婦として働くことで、なんとか家に、お金を送っていたと……。そういう話になります」
「こんなの、デタラメですよ! 指名手配されたのであれば、すぐにでも家に連絡があるはずです!」
「私もそう思います。えっと……。すいません。急だったので、資料がまだ整理できていなくて……」
ネイリアが、私の落としてしまった資料を、確認している。
「あ、なるほど……。ブレッザ家は、そのタイミングで、父親自らの手によって、解散しているんですね」
「解散……?」
「はい。もう、ブレッザという名前は、この世に存在しません」
「……意味がわかりません。だったらなぜ私の元には、三か月も、それを知らせる人が、現れなかったのですか?」
「単に、面倒だったからでしょう……。あるいはこんな小さな街で、支配者面していたことすら、気が付かれなかったか」
嘘だ。こんなの、嘘でしょう……?
ブレッザ家は、誇り高き家……。
有名な軍人を多数排出した、名家……。
「……さて、セレノー。それとこれとは、話が別です。あなたはあなたで、罰を受けねばなりません」
「罰……?」
「三か月間、ブレッザ家という、存在しない家の名前を使い、街を支配していた罪は重い……。必ず、その間に得た金などは、本人たちに返してもらいます」
「そんなの無理です!」
「無理じゃないです。今でも、健気な母親から、お金が送られてきているのでしょう? それをちょっとずつ返していけばいいじゃないですか」
「……ボディガードの給料で、消えてしまいます」
「今月の給料を払い終えれば、後は解雇すればいいでしょうに」
「一人で、生きていけと……?」
「当たり前でしょう? 何を甘えたことを言ってるんですか」
無理だ……。
ボディガードが、全部やってくれていた。
面倒な手続きも、母上から送られてくる、金の整理も……。
一人で、できるわけがない。
「明日、またここへ来ます。それまでに、諸々の作業を済ませておくように。良いですね?」
「い、いや。お待ちください!」
「待ちません。私は忙しいのです」
「そんなぁ! 姫さ――」
無情にも、ドアが閉じてしまった。
どうして……。こんなことに。
私が一体、何をしたというんだ。
ブレッザ家の誇りを持って、必死で……。
その結果が、これ?
きっと夢だ。
夢に決まってる。
目を覚ませば、そこには父上と母上がいて……。
私は部屋に戻り、ベッドに籠った。
頭を空っぽにして、何も考えず、ただ時が過ぎるのを待つだけだった。
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