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ジナルド王子の勘違い

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一方その頃、コーコラン家を訪れた、ジナルド・セ―ランは、開いた口が塞がらなかった。

「わ、私が、遠征に出かけている間に、レンフィアが国外追放を……?」
「……申し訳ございません」

ジナルドが遠征に出かけたのは、たった三か月前のことだ。
その間に、婚約者が、大罪を犯したことにより、国外追放。
さらには婚約破棄までもが、自分の知らない間に行われてたという。

「ボルバル様……。突然のこと故、私はまだ、受け入れることができておりません」
「私もそうです。レンフィアが急に別人のようになってしまったのは……。ちょうど、ジナルド様が、遠征に出かけてすぐのことでした。それからあっという間に、今日です。まさか自分の娘が……。こうなるとは」

ボルバルは頭を抱えた。
レンフィアは比較的真面目で、多少怒りっぽいところはあったが、それでもまさか、あれだけ罪を重ねるとは、思ってもみなかったのだ。

二人の間に、沈黙が訪れる。やがて……。ジナルドが、重たい口を開いた。

「レンフィアは今、どこに?」
「悪役令嬢を示す紋章が刻まれておりますから、追跡が可能です。教会に行けば、わかるかと……」
「わかりました。ありがとうございます」



教会に向かったジナルド。早速司祭に、レンフィアの居場所を尋ねた。

「……なんということだ。あの者は、魔王の城にいる」
「魔王の城……!それは本当ですか?」
「間違いない」

なぜレンフィアが、魔王の城に……。ジナルドは考え、そして一つだけ、思い当たる節があることに気が付いた。

「そう言えば、私を見送りに来てくれた時、森で魔王の手下とすれ違いました。戦闘に至ること無く、ただお互い睨みを利かせただけではありましたが……。やけに上級魔族が多かった気がするんです」
「つまり?」
「……魔王に近しい者が、あの群れの中にいたのではないかと。そして、上級魔族は、かなり高い魔力を持っています。魔法の種類も様々です。もしかすると……。すれ違い様に、レンフィアに何か、心を操るような魔法をかけた。そういう可能性が、あるのではないでしょうか」

司祭はただ、腕を組んでうなるだけだった。

「……私は、レンフィアとは長い付き合いです。悪さをするような人ではなかった。性格が変わったのも、私が遠征に行ってすぐだと聞きました。ちょうど一致します」
「もしそうであるとするならば、魔王の目的はなんだろうか」
「もしかすると、ついに人間への戦争を仕掛けるつもりかもしれませんね。その人質として、第一王子である私の婚約者を、連れ去った……」
「確かに、辻褄は合う」

ジナルドの考えは、最早確信へと変わっていた。
そうであるならば、自分は夫となるものとして、レンフィアを助けねばならない。

確かな覚悟を持ちながら、教会を後にした。
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