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退学
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「そんなぁ! お父様ぁ!」
「……決まったことだ」
「嫌です! 私、まだまだ頑張れます! 必死でやりますから!」
「もう、これ以上君が、どう頑張ったところで……。カルホーン家の、名前を汚すことにしか、ならないよ」
私は、膝から崩れ落ちた。
あの模擬戦から、三日ほどたった今日。
いきなりお父様に……。
私を退学させたという、知らせを受けた。
信じられない。
まだ、正式な入学前だというのに。
「オーロラが不正をしていたという事実も、これで完全に、君の嘘だとわかった。……残念だよ。本当に」
「退学なんて……。考え直してください! お父様!」
「ディアナ……。受け入れなさい。毒林檎の件も、許されることじゃない。裏切られた気分だよ」
「ごめんなさい……。もう二度と、勝手な真似はしません。どうか、退学だけは……」
「……そうは言っても。あれだけ生徒が見ている前で、醜態を晒したわけだ。ディアナ、君を普通の人間として扱ってくれる人は、もうあの学園にはいないだろう」
お父様は、ため息をついた。
そして、私に哀れみの視線を向ける。
いつも厳しく、私を指導してくれたお父様。
それなのに……。
まるで、全て諦めたかのような態度。
それは、私がカルホーン家の娘ではなく。
……ただの娘として、扱われるようになったことの、証だった。
「嫌だ……。こんなところで、終わりたくないです! お父様!」
「正直、才能が無いなと思っていたんだ。カルホーン家の血を引いていれば、もっと圧倒的な力を示せるはず……。最後まで、それは見られなかった」
「あ、あれは、あの女が、異常だっただけです!」
「君が、本当に、彼女に次いで、あの学園で優秀なのであれば……。まだ考えたさ。だけど、そうじゃない。圧倒的に実力が無い。無能だ。でも……。他に仕事があるよ。幸い、妻に似て、美人だからね。秘書を目指したらどうだろう」
「秘書……?」
秘書は、魔法を使うことなんて、きっとないだろう。
私の個性を、完全に否定されてしまった。
「……まだ、あれから三日だ。もっと休むといいよ。どうせ、魔法を使うことは、二度と無いのだから」
「お父様! 嫌です! 嫌ぁ!」
「……」
お父様の合図で、ルエールが部屋に入って来た。
そして、私を羽交い絞めにして、ベッドに戻そうとする。
「お父様ぁ……。うぅ……」
涙が止まらなかった。
それと同時に、腹痛も。
じっくりしこんだ魔法を、まともにくらってしまったせいで、未だに私は、一日の半分を、トイレで過ごす羽目になっている。
身も心も、ボロボロだ……。
……全部、あいつのせい。
文句を言ってやりたい。
だけど、部屋からは、出してもらえない……。
「ディアナ様。午後から、ナイザー様がお見えになるそうです」
「ほ、本当?」
「はい。ですから……。身なりを整えましょう」
「そうね。わかったわ」
ナイザー様……。来てくれるのね。
こんなことになってしまった私だけど。
きっと、彼なら優しく慰めてくれる。
少しだけ、沈んだ気持ちが、前向きになった。
「……決まったことだ」
「嫌です! 私、まだまだ頑張れます! 必死でやりますから!」
「もう、これ以上君が、どう頑張ったところで……。カルホーン家の、名前を汚すことにしか、ならないよ」
私は、膝から崩れ落ちた。
あの模擬戦から、三日ほどたった今日。
いきなりお父様に……。
私を退学させたという、知らせを受けた。
信じられない。
まだ、正式な入学前だというのに。
「オーロラが不正をしていたという事実も、これで完全に、君の嘘だとわかった。……残念だよ。本当に」
「退学なんて……。考え直してください! お父様!」
「ディアナ……。受け入れなさい。毒林檎の件も、許されることじゃない。裏切られた気分だよ」
「ごめんなさい……。もう二度と、勝手な真似はしません。どうか、退学だけは……」
「……そうは言っても。あれだけ生徒が見ている前で、醜態を晒したわけだ。ディアナ、君を普通の人間として扱ってくれる人は、もうあの学園にはいないだろう」
お父様は、ため息をついた。
そして、私に哀れみの視線を向ける。
いつも厳しく、私を指導してくれたお父様。
それなのに……。
まるで、全て諦めたかのような態度。
それは、私がカルホーン家の娘ではなく。
……ただの娘として、扱われるようになったことの、証だった。
「嫌だ……。こんなところで、終わりたくないです! お父様!」
「正直、才能が無いなと思っていたんだ。カルホーン家の血を引いていれば、もっと圧倒的な力を示せるはず……。最後まで、それは見られなかった」
「あ、あれは、あの女が、異常だっただけです!」
「君が、本当に、彼女に次いで、あの学園で優秀なのであれば……。まだ考えたさ。だけど、そうじゃない。圧倒的に実力が無い。無能だ。でも……。他に仕事があるよ。幸い、妻に似て、美人だからね。秘書を目指したらどうだろう」
「秘書……?」
秘書は、魔法を使うことなんて、きっとないだろう。
私の個性を、完全に否定されてしまった。
「……まだ、あれから三日だ。もっと休むといいよ。どうせ、魔法を使うことは、二度と無いのだから」
「お父様! 嫌です! 嫌ぁ!」
「……」
お父様の合図で、ルエールが部屋に入って来た。
そして、私を羽交い絞めにして、ベッドに戻そうとする。
「お父様ぁ……。うぅ……」
涙が止まらなかった。
それと同時に、腹痛も。
じっくりしこんだ魔法を、まともにくらってしまったせいで、未だに私は、一日の半分を、トイレで過ごす羽目になっている。
身も心も、ボロボロだ……。
……全部、あいつのせい。
文句を言ってやりたい。
だけど、部屋からは、出してもらえない……。
「ディアナ様。午後から、ナイザー様がお見えになるそうです」
「ほ、本当?」
「はい。ですから……。身なりを整えましょう」
「そうね。わかったわ」
ナイザー様……。来てくれるのね。
こんなことになってしまった私だけど。
きっと、彼なら優しく慰めてくれる。
少しだけ、沈んだ気持ちが、前向きになった。
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