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葬式には、大勢の人が集まっていた。

家族を亡くした人。
友人を亡くした人。
尊敬する師を亡くした人。そして……。

「……ありがとう、ございます」

……王子である、兄を亡くした二人。

フレイアは、立派に挨拶をしていた。

残された、ゼファーノ家の人間として、生きていかなければいけない。
大勢の大人に囲まれ、丁寧に頭を下げる彼女は……。私の知る姿とは、まるで別人のようだった。

「……あっちで、話しましょう」

フレイアに呼びかけられ、人のいない場所へ移動した。
……レオノンが、フレイアにピッタリとくっついている。

「この子、こうでないと、泣いちゃうのよ」
「……そうなんですね」
「……いいわよ。フランクに話しましょう。今の私は……。なんでもない、ただの一人の女なんだから」
「……いいのね?」
「えぇ。元はこうあるべきだったんだもの」

フレイアが無理やり作った笑顔が、とても痛々しかった。

「その、本当に……」
「辛気臭い話は無しよ。今日は、あなたにお願いがあるのよ」
「お願い?」
「……私を、もう一度、聖女にしてくれない?」
「え……」

まさか。
そんなことを頼まれるとは、思ってもいなかった。

いや、それよりもフレイアは、私の固有スキルのことを?

「詳しいことはわからないわ。でも、あなたの国に、剣神と賢者が誕生したって聞いて……。そうなのかなって」

そういうことか。
フレイアは、レオノンの頭を撫でながら、続ける。

「聖女になれば、きっとお兄様を復活させられるはずなの」
「いや、さすがにそれは、聖女でも」
「もちろん、犠牲は伴うわ。……それがどんな犠牲かも、わからないけれど」
「いいえ。例え犠牲を払ったところで、きっとうまくいかない。あなたが傷つくだけよ」
「もう、傷もわからないわ」

フレイアが自重気味に笑った。

「たまにね? ボーっとしてしまって、道で転ぶことがあるの。かすり傷ができるでしょう? その痛みと、心の痛みが、たまにどちらがどうなのか、わからなくなってしまう。痛くないはずの場所に、治療を受けたり、ただ腕をどこかにぶつけただけなのに、過呼吸になったり……。おかしくなってしまった」
「……医者には?」
「付き合っていくしかないって。レオノンも同じよ。彼女がまともに言葉を話せる日は……。二度とこないわ」

胸が締め付けられる。
まだ若い二人が、こんな状況で、それに家族もいなくて……。

「でも、これは全部、私たちの責任よ。あなたを追い出さなければ、こんなことにはならなかったもの。すごく反省してるの。痛かったわよね? あの時頬をぶっちゃって。同じだけ私を殴って良いのよ? だから、だからお願い。もう一度聖女に」
「それはできない」
「……なんで?」
「精霊の加護は、自ら手放した人たちには、二度と訪れないの」
「……嫌よ」

フレイアが急に、地団太を踏み始めた。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」

そのせいで、レオノンが混乱している。
目に大粒の涙を浮かべながら、フレイアをじっと見つめているのだった。

「フレイア、落ち着きなさい」
「帰ってこないの。お兄様は!? ああああ!!」
「……」
「……お願いします。返して、お兄様を。ただの生活を」

……フレイアが、土下座をした。
あのフレイアが、である。

信じられなくて、私は言葉を失った。

「あ、ううあ、い」

レオノンが、必死で口を動かし、言葉を発しようとするが、籠った音しか出ない。

「い、いいヴ」

……わからないよ。ごめん。レオノン。

「あの、だから、精霊の加護は」
「ううううう!!!」
「あ……だ……」
「……ごめんね」

私は二人の頭を撫でてから、アンバネラを後にした。

二人を壊してしまったのは。私なのだろうか。
……ミゲルは死の間際、何を思っていたのだろうか。

この傷は、治ることはないのかもしれない。
私もまた、二人と同じように、何かを背負って、生きていかなければならないのだろう……。
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