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リアーナの苦悩
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「ただいま帰りました」
「お帰りベネット。あなた宛てに、手紙が届いていたわよ?」
「手紙、ですか?」
「えぇ。レジャーノラっていう国からね」
レジャーノラ……。確か、アンバネラの友好国だ。
一体、どんな用事だろう。
私は自室に入り、手紙を開封した。
「……えっ」
そこには、目を覆いたくなるような出来事が、たくさん書かれていた。
まず最初に、アンバネラは崩壊したこと。
次に、国王とミゲルは死んだこと。
下の妹である、レオノンは、ショックで言葉を話せなくなったこと。
……パーティで、オーベル様が言っていた、モンスターの大群のせいで、そうなってしまったらしい。
そんな。剣神と聖女と賢者がいたのに……。
まさか、私がいなくなった後、一切鍛錬を積まず、そのまま平気で暮らしていたというのだろうか。
兵は何をしていたんだろう。民は無事だったのか。
色々気になることはあったが、とりあえず手紙を読み進めていく。
「……葬式」
アンバネラを更地にする前に、今回死んだ人たちを弔うのだという。
……ミゲルの元婚約者である私にも、連絡が来たというわけだ。
「ベネット~? お客様よ~」
「は、は~い! 今向かいます!」
私は慌てて手紙をしまい、部屋を飛び出した。
ドアの前で、リアーラが、優しく手を振っている。
「どうしたの? リアーラ」
「あの」
「う、うん」
「ベネットに、どうしても話したいことがあるの」
「……うん」
リアーラの表情は、真剣だ。
いつもは明るい笑顔が特徴の彼女が、これだけ動きの無い表情を浮かべるということは……。相当真面目な話なのだろう。
「上がって。部屋で話しましょう?」
「えぇ……。おじゃまします」
部屋に入ってすぐ、リアーナは、私に抱き着いてきた。
「リ、リアーナ?」
「あのね、あのね? 私……。諦めようと思って」
「諦める?」
「うん……。ブライリー様のこと」
「……え?」
嘘だ。
誰がどう見たって、お似合いの組み合わせなのに。
「どうして? 喧嘩でもしたの?」
「してない。あんな優しい方と、言い争いなんて、するわけがないもの」
「じゃあ、一体何が……」
「……ブライリー様は、あなたのことが好きなのよ」
リアーナが、泣きながら言った。
……ブライリー様が? 私を?
「そんなことない。ブライリー様は、いつも楽しそうに、リアーナと」
「いいえ。あなたと話している時の方が、何倍も……。何十倍も、幸せそうな顔をしている。それに気が付いていないのは、あなただけよ」
信じられなかった。
私は……。ここに帰って来てから、いつも二人を後ろから見ていたのだ。
「……リアーナ。あなたの思い違いじゃ」
「ありえないわ。だって……。あなたが、ブライリー様を見ていない間も、私はずっと見ていたんだもの」
「……」
「隣で、ずっと……」
「リアーナ。泣かないで」
「私、恐ろしいことを考えていたわ。あなたがこの国から出て行って、しばらくした時……。このままなら、私がブライリー様と結婚できるって。だって、ベネットは、他の方との婚約が決まったから」
……そんなことを。
私が帰ってきた時、リアーナは笑顔で出迎えてくれたのに。
「嬉しかったの。あなたが帰ってきた時。だって、待ちきれなくて、ブライリー様を呼んで、先に来ちゃったくらいなんだもの。それなのに……。今は、あなたにどんどん惹かれていくブライリー様を見て……。説明できない感情になるわ」
「待って。リアーナ。一旦涙を拭いて。服がびちょびちょよ」
「ご、ごめんなさい……」
私はリアーナに、ハンカチを渡した。
「お帰りベネット。あなた宛てに、手紙が届いていたわよ?」
「手紙、ですか?」
「えぇ。レジャーノラっていう国からね」
レジャーノラ……。確か、アンバネラの友好国だ。
一体、どんな用事だろう。
私は自室に入り、手紙を開封した。
「……えっ」
そこには、目を覆いたくなるような出来事が、たくさん書かれていた。
まず最初に、アンバネラは崩壊したこと。
次に、国王とミゲルは死んだこと。
下の妹である、レオノンは、ショックで言葉を話せなくなったこと。
……パーティで、オーベル様が言っていた、モンスターの大群のせいで、そうなってしまったらしい。
そんな。剣神と聖女と賢者がいたのに……。
まさか、私がいなくなった後、一切鍛錬を積まず、そのまま平気で暮らしていたというのだろうか。
兵は何をしていたんだろう。民は無事だったのか。
色々気になることはあったが、とりあえず手紙を読み進めていく。
「……葬式」
アンバネラを更地にする前に、今回死んだ人たちを弔うのだという。
……ミゲルの元婚約者である私にも、連絡が来たというわけだ。
「ベネット~? お客様よ~」
「は、は~い! 今向かいます!」
私は慌てて手紙をしまい、部屋を飛び出した。
ドアの前で、リアーラが、優しく手を振っている。
「どうしたの? リアーラ」
「あの」
「う、うん」
「ベネットに、どうしても話したいことがあるの」
「……うん」
リアーラの表情は、真剣だ。
いつもは明るい笑顔が特徴の彼女が、これだけ動きの無い表情を浮かべるということは……。相当真面目な話なのだろう。
「上がって。部屋で話しましょう?」
「えぇ……。おじゃまします」
部屋に入ってすぐ、リアーナは、私に抱き着いてきた。
「リ、リアーナ?」
「あのね、あのね? 私……。諦めようと思って」
「諦める?」
「うん……。ブライリー様のこと」
「……え?」
嘘だ。
誰がどう見たって、お似合いの組み合わせなのに。
「どうして? 喧嘩でもしたの?」
「してない。あんな優しい方と、言い争いなんて、するわけがないもの」
「じゃあ、一体何が……」
「……ブライリー様は、あなたのことが好きなのよ」
リアーナが、泣きながら言った。
……ブライリー様が? 私を?
「そんなことない。ブライリー様は、いつも楽しそうに、リアーナと」
「いいえ。あなたと話している時の方が、何倍も……。何十倍も、幸せそうな顔をしている。それに気が付いていないのは、あなただけよ」
信じられなかった。
私は……。ここに帰って来てから、いつも二人を後ろから見ていたのだ。
「……リアーナ。あなたの思い違いじゃ」
「ありえないわ。だって……。あなたが、ブライリー様を見ていない間も、私はずっと見ていたんだもの」
「……」
「隣で、ずっと……」
「リアーナ。泣かないで」
「私、恐ろしいことを考えていたわ。あなたがこの国から出て行って、しばらくした時……。このままなら、私がブライリー様と結婚できるって。だって、ベネットは、他の方との婚約が決まったから」
……そんなことを。
私が帰ってきた時、リアーナは笑顔で出迎えてくれたのに。
「嬉しかったの。あなたが帰ってきた時。だって、待ちきれなくて、ブライリー様を呼んで、先に来ちゃったくらいなんだもの。それなのに……。今は、あなたにどんどん惹かれていくブライリー様を見て……。説明できない感情になるわ」
「待って。リアーナ。一旦涙を拭いて。服がびちょびちょよ」
「ご、ごめんなさい……」
私はリアーナに、ハンカチを渡した。
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