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崩壊
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ベネットが去った後の国――アンバネラに、モンスターの大群が押し寄せていた。
「第十二部隊全滅! 至急援軍願います!」
「第四魔法部隊、連絡が取れません! 魔力の供給を!」
次から次へと、第一部隊の隊長、ベリンガル・ファウストの元へ、兵がやって来ては、報告をする。
そのほとんどが、絶望的な報告で、まだ一度も、モンスターを制圧したという話は聞いていない。
いつまで経っても、他国の支援部隊が来ない。このままでは時間の問題だ。
そう考えたべリンガルは、国王の元へと向かった。
こんな事態だというのに、国王は玉座に座り、猫を撫でている。
「おぉベリンガル。もうモンスターの駆除は終わったか?」
「……何を言っておられるのです。部隊のおよそ半分が、壊滅状態です。このままでは、王宮が攻め落とされるのも、時間の問題かと」
「なにぃ!? なぜそのようなことが起きておるのだ! 無能な兵たちめ!」
ミゲルが剣神に目覚めたこと。
フレイアが聖女に目覚めたこと。
この二つが重なった時点で、兵の訓練量は著しく落ち始めていた。
また、軍事費のほとんどが、産業の発達のための資金に回されたため、まともな武器が揃っていない。絶望的な状況。
そこへさらに、次女のレオノンが賢者として目覚めたことが、いよいよ追い打ちをかけた。
もはやこの国は終わっている……。もし、不測の事態が起きた時、対処することはできない。ベリンガルは、すでに察していた。
それに対して、国王はあまりに能天気すぎる。
「援軍はまだですか。もうモンスターに結界を突破され、二時間ほど経っておるのですが」
「援軍? 呼んでおらんが」
「……は?」
ベリンガルは耳を疑った。
「なぜです? 結界を突破された時点で、自然に他国へ連絡が行くはずでは」
「全て断った」
「……意味が分かりません。なぜそのようなことを?」
「そう慌てるでない。我が子供たちがおろう」
「しかし、三人は本調子では無いとの話も」
「ええい黙れぇ! 不愉快じゃ! さっさと出て行けぇ!」
ベリンガルは拳を握りしめながら、王室を後にした。
……もはやこんな国で、命を燃やす意義も無い。
ベリンガルはすぐに、生き残った兵をかき集めた。
「……この国は終わりだ。我らは他国へ逃亡する」
「と、逃亡!?」
「隊長、正気ですか!?」
「落ち着け。……この国を守る意義を、感じなくなったのだ。皆もそうだろう? 削減され続ける軍事費。その上、王族からは奴隷のように扱われ、あちらこちらに遠征に向かわされる……。もう限界だ。ここを区切りにしよう。だが、国に残り、戦いたい者は、好きにするがよい。そうでないものは……。私に続け」
こうして、第一部隊の隊長が、国外逃亡を決めたのを機に、次々と兵たちは国から出て行った。
そして、三十分が経過したころには――。国に、まともに戦える兵は残っていなかった。
民たちは取り残され、なすすべなくモンスターの餌になる。
そんな光景を、王宮から眺めていたミゲルは、足をガクガクと震わせていた。
「第十二部隊全滅! 至急援軍願います!」
「第四魔法部隊、連絡が取れません! 魔力の供給を!」
次から次へと、第一部隊の隊長、ベリンガル・ファウストの元へ、兵がやって来ては、報告をする。
そのほとんどが、絶望的な報告で、まだ一度も、モンスターを制圧したという話は聞いていない。
いつまで経っても、他国の支援部隊が来ない。このままでは時間の問題だ。
そう考えたべリンガルは、国王の元へと向かった。
こんな事態だというのに、国王は玉座に座り、猫を撫でている。
「おぉベリンガル。もうモンスターの駆除は終わったか?」
「……何を言っておられるのです。部隊のおよそ半分が、壊滅状態です。このままでは、王宮が攻め落とされるのも、時間の問題かと」
「なにぃ!? なぜそのようなことが起きておるのだ! 無能な兵たちめ!」
ミゲルが剣神に目覚めたこと。
フレイアが聖女に目覚めたこと。
この二つが重なった時点で、兵の訓練量は著しく落ち始めていた。
また、軍事費のほとんどが、産業の発達のための資金に回されたため、まともな武器が揃っていない。絶望的な状況。
そこへさらに、次女のレオノンが賢者として目覚めたことが、いよいよ追い打ちをかけた。
もはやこの国は終わっている……。もし、不測の事態が起きた時、対処することはできない。ベリンガルは、すでに察していた。
それに対して、国王はあまりに能天気すぎる。
「援軍はまだですか。もうモンスターに結界を突破され、二時間ほど経っておるのですが」
「援軍? 呼んでおらんが」
「……は?」
ベリンガルは耳を疑った。
「なぜです? 結界を突破された時点で、自然に他国へ連絡が行くはずでは」
「全て断った」
「……意味が分かりません。なぜそのようなことを?」
「そう慌てるでない。我が子供たちがおろう」
「しかし、三人は本調子では無いとの話も」
「ええい黙れぇ! 不愉快じゃ! さっさと出て行けぇ!」
ベリンガルは拳を握りしめながら、王室を後にした。
……もはやこんな国で、命を燃やす意義も無い。
ベリンガルはすぐに、生き残った兵をかき集めた。
「……この国は終わりだ。我らは他国へ逃亡する」
「と、逃亡!?」
「隊長、正気ですか!?」
「落ち着け。……この国を守る意義を、感じなくなったのだ。皆もそうだろう? 削減され続ける軍事費。その上、王族からは奴隷のように扱われ、あちらこちらに遠征に向かわされる……。もう限界だ。ここを区切りにしよう。だが、国に残り、戦いたい者は、好きにするがよい。そうでないものは……。私に続け」
こうして、第一部隊の隊長が、国外逃亡を決めたのを機に、次々と兵たちは国から出て行った。
そして、三十分が経過したころには――。国に、まともに戦える兵は残っていなかった。
民たちは取り残され、なすすべなくモンスターの餌になる。
そんな光景を、王宮から眺めていたミゲルは、足をガクガクと震わせていた。
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