上 下
20 / 20

第20話 ようやく肩の力を抜いた令嬢

しおりを挟む
「乾杯」

 式もパーティも終わり、ロハーナはマイクと二人で、部屋でワインを飲んでいた。
 
「ロハーナ。疲れてないかい?」
「疲れましたよ……。式ってあんなに長いものなのですか? 初めて参加したものですから」
「参加って……」

 思わずマイクは笑ってしまった。
 
「あなたの言う通り、私はしばらくの間休みます。特に目立った仕事もありませんし」
「そうしてくれ。これまでの人生、ずっと動き続けてきたんだから、ここらでブレーキをかけないとね」
「ふふっ。あなたは本当に……。私の体調のことばかり気にしていますね。自分はどうなのですか?」
「もちろん気を使っているよ。君を守る立場になったんだから」
「まぁ……」

 ロハーナが、頬を赤く染めた。
 マイクがロハーナの横に行き、そっと身を寄せる。
 二人の手は、自然と絡み合った。

「これからは、二人の人生だから……」
「……わかっています」
「わかっていても、口うるさく言い続けないとね……。また倒れられたら大変だから」
「それでしたら、いつ倒れてもいいように、もう少し近くに寄ってください……」

 ロハーナが、組んでいる腕を引っ張るように、マイクを引き寄せた。

「おおっと」

 ワインが零れそうになり、マイクは慌てて体制を立て直した。
 ロハーナがテーブルの上にグラスを置く。
 ……マイクも、同じように。

 そして二人は、見つめ合った。

「……来てください」
「あぁ……」

 ゆっくりと――唇を重ね合わせた。
 お互いの体温を確かめ合うような、長いキス。
 マイクは目を閉じていたが、ロハーナはずっと開けていた。

 マイクが眉間にシワを寄せ、余計な部分に力を入れていることが気になった。
 しかし、ロハーナも同じように、足のつま先に力が入り、足を攣りそうになっている。

 自分たちはまだまだ子供だなぁと、思い知らされるような、緊張感のある時間だった。
 ……しかしながら、それがとても心地良くて。

「……どうしよう。私、あなたのことが怖いくらい好きみたいです」
「怖いくらい……?」
「わかりません。自分でも理解できないですから。だけど、あなたを好きだということだけは、はっきりとわかります」

 ロハーナは、強くマイクを抱きしめた。
 そして、マイクの胸元に顔を押し付けるように、何度も何度も頭を振り続けている。

「ロ、ロハーナ? どうしたんだい?」
「これまで意地を張って、強い人間であろうとしていた……。その分、あなたに甘えたい気持ちが溜まり続けて、とうとう爆発したのかもしれません」
「ちょっ……」

 その後二人は、愛を確かめ合った。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

dragon.9
2021.01.05 dragon.9
ネタバレ含む
冬吹せいら
2021.01.05 冬吹せいら

ご感想ありがとうございます!

解除

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……

四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。 しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。

いじめっ子が私の婚約者に嘘をついたせいで婚約破棄に?!

ほったげな
恋愛
ラウラは一つ年上のロルフと婚約した。だが、いじめっ子が「ラウラにいじめられた」と嘘をついたらしく…?!

【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?

桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。 天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。 そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。 「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」 イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。 フローラは天使なのか小悪魔なのか…

【完結】婚約破棄からの絆

岡崎 剛柔
恋愛
 アデリーナ=ヴァレンティーナ公爵令嬢は、王太子アルベールとの婚約者だった。  しかし、彼女には王太子の傍にはいつも可愛がる従妹のリリアがいた。  アデリーナは王太子との絆を深める一方で、従妹リリアとも強い絆を築いていた。  ある日、アデリーナは王太子から呼び出され、彼から婚約破棄を告げられる。  彼の隣にはリリアがおり、次の婚約者はリリアになると言われる。  驚きと絶望に包まれながらも、アデリーナは微笑みを絶やさずに二人の幸せを願い、従者とともに部屋を後にする。  しかし、アデリーナは勘当されるのではないか、他の貴族の後妻にされるのではないかと不安に駆られる。  婚約破棄の話は進まず、代わりに王太子から再び呼び出される。  彼との再会で、アデリーナは彼の真意を知る。  アデリーナの心は揺れ動く中、リリアが彼女を支える存在として姿を現す。  彼女の勇気と言葉に励まされ、アデリーナは再び自らの意志を取り戻し、立ち上がる覚悟を固める。  そして――。

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。