上 下
17 / 20

第17話 真っ赤な令嬢

しおりを挟む
「どうやら大丈夫みたいですね」

 レンバルト家にて、ウリアの教育プログラムが始まるということで、ロハーナは進捗を気にしていた。
 みるみるうちに性格が改善されていくウリアの状態を聞き、今日様子を見るため、戻ってきたのだ。

 必死で働くウリアを見て、ロハーナは笑みを浮かべた。
 しかし、念には念を入れる必要がある。
 ウリアとロハーナは、できるだけ引き合わせないように配慮がなされていた。

 護衛として、マイクもロハーナの部屋を訪れている。

「驚いたな……。まさか本当に、短期間で人の心が変わってしまうだなんて」
「彼女は牢獄の中で、十分叫びましたから。まだ十五歳です。本来、人の上に立つ年齢ではないのだから。失敗もあって然るべきでしょう」
「……君も十五歳だけどね」
「そうでしたっけ」

 とぼけたようにニヤけるロハーナだったが、マイクは心配でならなかった。
 伯爵家の領地を手に入れたことで仕事量は増えており、ほとんど人を雇うこともなく、多くの事務作業をロハーナがこなしているのだ。
 もちろんみかねたマイクたちや子爵家の人々も手伝うのだが、ロハーナはあまり進んで仕事を他に回すことはしてくれない。

「久しぶりの自宅なんだ。ゆっくり休んだ方がいいよ。僕は外に――」
 
 マイクが振り返ると。
 ――ロハーナが倒れていた。

「ロハーナ!?」
「大丈夫です……。ちょっと安心しただけですから。体の力が抜けてしまったようですね」
「待ってて。すぐに医者の元へ運ぶから」
「え? あの、大丈夫ですから……」
「行くよ!」

 マイクはロハーナに構わず、お姫様だっこをして部屋を飛び出した。

「きゃあっ!」

 慌てて跳び出した先で、一人のメイドが驚き、尻もちをついた。

「あっ、ウ、ウリア様。申し訳ございません!」
「いえ……。って、ロハーナ!?」
 
 ぐったりした様子のロハーナを見て、ウリアはすぐに駆け寄った。
 
「どうしたのロハーナ! ねぇロハーナはどうなったの!?」
「落ち着いてください。おそらく貧血か何かだと思います。僕が医者に見せにいきますから」
「ロハーナ! 返事をしなさい!」
「……うるさいですね」

 ロハーナは、ぐったりしているのではなく、実はお姫様抱っこが恥ずかしすぎて、頬を赤めながら俯いているだけだった。
 しかしウリアの目から見れば、その状況に気が付くことは難しい。

 実はウリアは、ロハーナに謝罪しようと、部屋の前まで来ていたのだ。
 教育プログラムの成果により、心が入れ替わったことを報告するため――。
 その目前で、この状態のロハーナを見れば、取り乱すのも無理はない。
 
 走り出すマイクの後ろを、ウリアは追いかけた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

【完結】優雅に踊ってくださいまし

きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。 この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。 完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。 が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。 -ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。 #よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。 #鬱展開が無いため、過激さはありません。 #ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。

薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……

四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。 しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。

誘拐されました。犯人は護衛です。

たんぽぽ
恋愛
両親に就寝の挨拶をして寝室で寝たはずの男爵令嬢サリーナ。目が覚めると、移動中の馬車の中だった。 誘拐犯は信頼していた護衛兵士。 雇われていた護衛は、男爵家が裕福な貴族ではないと知っていての犯行。 そして馬車が到着したのはサリーナの実家よりも広い屋敷。 顔を隠した誘拐犯は毎日サリーナに贅沢をさせているけど、その資金はいったいどこから……?

【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?

桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。 天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。 そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。 「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」 イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。 フローラは天使なのか小悪魔なのか…

【完結】婚約破棄からの絆

岡崎 剛柔
恋愛
 アデリーナ=ヴァレンティーナ公爵令嬢は、王太子アルベールとの婚約者だった。  しかし、彼女には王太子の傍にはいつも可愛がる従妹のリリアがいた。  アデリーナは王太子との絆を深める一方で、従妹リリアとも強い絆を築いていた。  ある日、アデリーナは王太子から呼び出され、彼から婚約破棄を告げられる。  彼の隣にはリリアがおり、次の婚約者はリリアになると言われる。  驚きと絶望に包まれながらも、アデリーナは微笑みを絶やさずに二人の幸せを願い、従者とともに部屋を後にする。  しかし、アデリーナは勘当されるのではないか、他の貴族の後妻にされるのではないかと不安に駆られる。  婚約破棄の話は進まず、代わりに王太子から再び呼び出される。  彼との再会で、アデリーナは彼の真意を知る。  アデリーナの心は揺れ動く中、リリアが彼女を支える存在として姿を現す。  彼女の勇気と言葉に励まされ、アデリーナは再び自らの意志を取り戻し、立ち上がる覚悟を固める。  そして――。

いじめっ子が私の婚約者に嘘をついたせいで婚約破棄に?!

ほったげな
恋愛
ラウラは一つ年上のロルフと婚約した。だが、いじめっ子が「ラウラにいじめられた」と嘘をついたらしく…?!

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

処理中です...