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第17話 真っ赤な令嬢
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「どうやら大丈夫みたいですね」
レンバルト家にて、ウリアの教育プログラムが始まるということで、ロハーナは進捗を気にしていた。
みるみるうちに性格が改善されていくウリアの状態を聞き、今日様子を見るため、戻ってきたのだ。
必死で働くウリアを見て、ロハーナは笑みを浮かべた。
しかし、念には念を入れる必要がある。
ウリアとロハーナは、できるだけ引き合わせないように配慮がなされていた。
護衛として、マイクもロハーナの部屋を訪れている。
「驚いたな……。まさか本当に、短期間で人の心が変わってしまうだなんて」
「彼女は牢獄の中で、十分叫びましたから。まだ十五歳です。本来、人の上に立つ年齢ではないのだから。失敗もあって然るべきでしょう」
「……君も十五歳だけどね」
「そうでしたっけ」
とぼけたようにニヤけるロハーナだったが、マイクは心配でならなかった。
伯爵家の領地を手に入れたことで仕事量は増えており、ほとんど人を雇うこともなく、多くの事務作業をロハーナがこなしているのだ。
もちろんみかねたマイクたちや子爵家の人々も手伝うのだが、ロハーナはあまり進んで仕事を他に回すことはしてくれない。
「久しぶりの自宅なんだ。ゆっくり休んだ方がいいよ。僕は外に――」
マイクが振り返ると。
――ロハーナが倒れていた。
「ロハーナ!?」
「大丈夫です……。ちょっと安心しただけですから。体の力が抜けてしまったようですね」
「待ってて。すぐに医者の元へ運ぶから」
「え? あの、大丈夫ですから……」
「行くよ!」
マイクはロハーナに構わず、お姫様だっこをして部屋を飛び出した。
「きゃあっ!」
慌てて跳び出した先で、一人のメイドが驚き、尻もちをついた。
「あっ、ウ、ウリア様。申し訳ございません!」
「いえ……。って、ロハーナ!?」
ぐったりした様子のロハーナを見て、ウリアはすぐに駆け寄った。
「どうしたのロハーナ! ねぇロハーナはどうなったの!?」
「落ち着いてください。おそらく貧血か何かだと思います。僕が医者に見せにいきますから」
「ロハーナ! 返事をしなさい!」
「……うるさいですね」
ロハーナは、ぐったりしているのではなく、実はお姫様抱っこが恥ずかしすぎて、頬を赤めながら俯いているだけだった。
しかしウリアの目から見れば、その状況に気が付くことは難しい。
実はウリアは、ロハーナに謝罪しようと、部屋の前まで来ていたのだ。
教育プログラムの成果により、心が入れ替わったことを報告するため――。
その目前で、この状態のロハーナを見れば、取り乱すのも無理はない。
走り出すマイクの後ろを、ウリアは追いかけた。
レンバルト家にて、ウリアの教育プログラムが始まるということで、ロハーナは進捗を気にしていた。
みるみるうちに性格が改善されていくウリアの状態を聞き、今日様子を見るため、戻ってきたのだ。
必死で働くウリアを見て、ロハーナは笑みを浮かべた。
しかし、念には念を入れる必要がある。
ウリアとロハーナは、できるだけ引き合わせないように配慮がなされていた。
護衛として、マイクもロハーナの部屋を訪れている。
「驚いたな……。まさか本当に、短期間で人の心が変わってしまうだなんて」
「彼女は牢獄の中で、十分叫びましたから。まだ十五歳です。本来、人の上に立つ年齢ではないのだから。失敗もあって然るべきでしょう」
「……君も十五歳だけどね」
「そうでしたっけ」
とぼけたようにニヤけるロハーナだったが、マイクは心配でならなかった。
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もちろんみかねたマイクたちや子爵家の人々も手伝うのだが、ロハーナはあまり進んで仕事を他に回すことはしてくれない。
「久しぶりの自宅なんだ。ゆっくり休んだ方がいいよ。僕は外に――」
マイクが振り返ると。
――ロハーナが倒れていた。
「ロハーナ!?」
「大丈夫です……。ちょっと安心しただけですから。体の力が抜けてしまったようですね」
「待ってて。すぐに医者の元へ運ぶから」
「え? あの、大丈夫ですから……」
「行くよ!」
マイクはロハーナに構わず、お姫様だっこをして部屋を飛び出した。
「きゃあっ!」
慌てて跳び出した先で、一人のメイドが驚き、尻もちをついた。
「あっ、ウ、ウリア様。申し訳ございません!」
「いえ……。って、ロハーナ!?」
ぐったりした様子のロハーナを見て、ウリアはすぐに駆け寄った。
「どうしたのロハーナ! ねぇロハーナはどうなったの!?」
「落ち着いてください。おそらく貧血か何かだと思います。僕が医者に見せにいきますから」
「ロハーナ! 返事をしなさい!」
「……うるさいですね」
ロハーナは、ぐったりしているのではなく、実はお姫様抱っこが恥ずかしすぎて、頬を赤めながら俯いているだけだった。
しかしウリアの目から見れば、その状況に気が付くことは難しい。
実はウリアは、ロハーナに謝罪しようと、部屋の前まで来ていたのだ。
教育プログラムの成果により、心が入れ替わったことを報告するため――。
その目前で、この状態のロハーナを見れば、取り乱すのも無理はない。
走り出すマイクの後ろを、ウリアは追いかけた。
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