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第3話 作戦成功

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「ようこそいらっしゃいました。ウリア様」

 おかしい。
 ウリアはすぐに、何かを察した。

「どうして……。あなたがいきなり出てくるのよ」

 マイクと腕を組み、意気揚々とレンバルト男爵家を訪れたウリア。
 本来であれば、執事かメイドあたりが、彼女を出迎えるはずである。

 それなのに、令嬢であるロハーナが、いきなり姿を見せたのだ。

「あなた、まさか……!」

 そこまで言いかけたところで、マイクがウリアの手を振りほどいた。

「申し訳ございませんウリア様。ここまでです」
「……ハメたわね? 私を」
「ウリア様。最初にハメようとしたのはそちらでしょう?」
「黙りなさい! 舐めた真似を……! 絶対に許さないわよ!」
「良いんですか? そんなに威勢良く怒鳴ったりなんてして」
「何が言いたいのよ」

 ウリアが怒鳴りつけると、ロハーナはクスクスと笑った。

「隣国の婚約者様に、ご報告をさせていただきましょうか? というお話です」
「……好きにすればいいじゃない。男爵家の話なんて、まともに聞くはずがないでしょう?」
「ふふっ。本当に頭が弱いのですね」
「なんですってぇ!?」

 ロハーナに殴りかかろうとしたウリアを、マイクが止めた。

「お止めください。伯爵令嬢ともあろう方が、暴力だなんて……」
「うるさい! 殴らないと気がすまないわ!」
「本当に……。ケイトハーグ家は野蛮で仕方がありませんね。そうやって領民も脅してきたのでしょう?」
「離しなさいよっ!」

 ウリアがあまりにも暴れるので、マイクは仕方なく離してやった。
 さすがのウリアも、もう一度ロハーナに殴りかかるつもりはないようだ。

「この浮気話は、男爵家からではなく、国を跨ぐのですから……。国際問題になるのですよ?」
「……国王を利用するつもり?」
「利用ではありません。証言者は子爵家と我が男爵家……。果たして、悪名高い伯爵家に味方するような方はいらっしゃるでしょうか」
「くっ……!」

 ウリアは、尻尾を巻いて逃げ出した。

「あらあら。あんなに威勢が良かったのに、もう降参してしまったんですね……」
「ロハーナ。君は相変わらずだな……。もう少し優しい言い方はできないのかい?」
「マイク、こっちに来てください」

 近づいてきたマイクの腕に、ロハーナが抱き着いた。

「これはあくまで浄化のためです。伯爵家の汚れがついてしまったようですから」
「……はぁ」

 ため息をつきながらも、マイクの頬は赤く染まっていた。
 普段、ロハーナはあまり、マイクに甘えることはない。

 できればこういう場面ではなく、もう少しムードのある場所で、抱き着いて欲しかったなぁと、マイクはしみじみ思うのだった。
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