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1 変な夢
しおりを挟む目が覚めると、僕はどこかの家の中にいた。なんとなく、知っている場所だな。そう思いながら、僕は暗闇に目を凝らした。
「スサノオ? スサノオ? どこにいるんだい?」僕はスサノオの名前を何度も呼び、その姿を探した。まったく、また独りでどこかに出かけたんだな。そんなことを考えながら目をこすり、暗闇に目が慣れてくると、家の隅に身を寄せ合いながら震える三人の女の人が目に入った。どこかで見覚えのある顔だ……。
あの三人は確か……。
あっ、そうか、苧うに、苧うにと戦った時の。
あれ? じゃあ僕は今、こんなところで何をしているんだ?
「スサノオ? スサノオーーー!?」
返事はない。僕は覚め切らない頭できょろきょろと辺りを見ていると、家の外で何やら人の悲鳴と争うような音が聞こえた。
ま、まさか!? スサノオ、独りで苧うにと戦っているんじゃ!? 僕は剣を探した。僕がいつも使っている剣があるはずだった。けれどどこを探しても見つからない。天叢雲剣もない。「や、八岐大蛇!」そう呼んでみたが、家の中にいるのは僕と三人の女の人だけだ。僕はもう剣を探すのをあきらめ表に飛び出て叫んだ。「スサノオーーー!!!」
だがそこにスサノオの姿はなく、なぜか剣を手にした香奈子の姿があった。
え、え、えええ!? どうして香奈子が!!!
夢か? 僕は何か変な夢でも見ているのか?
僕はでも、そんな疑問に答えを探している暇があるはずもなく、急いで香奈子の加勢に加わろうと全速力で走った。だが手には剣がない。どうすればいいんだ!
香奈子は思いのほか強い。苧うにを相手に一歩も引かず、剣を振るってその攻撃を受け止め、相手の懐に入って喉元に剣を突き立てた。だが、そんなんじゃ苧うにを倒せるわけもなく……。
「駄目だ! 香奈子!!! そんなんじゃ無理だ!」
そんな僕の言葉も聞こえる様子もなく、香奈子はなおも苧うにの攻撃をよけ、さらに横に回ってその体を突き刺した。だが苧うにはやはり、傷一つ負った様子はない。スピードでは香奈子の方が勝るが、攻撃がまったく効かず、このままでは勝ち目がなかった。
やがて香奈子は苧うにの後ろからその体に登り、首を真上から剣で突き刺そうとした。
けれど逆に攻撃を跳ね返された拍子にバランスを崩し、下に落ちてしまった。
苧うにはすかさず右手を振り上げ、香奈子の体を打った。
「一矢必殺!」僕はそう言って矢を放った。
矢は苧うにの首に当たったが、刺さらずそのまま下に落ちた。わかってる。これじゃ苧うにを倒せない。けれど苧うにの気を逸らすことはできた。苧うにはもう香奈子を見てはいない。
「こっちだ! 僕と戦え!」そう言ったものの、僕は剣を持っていなかった。だが見ると、香奈子がさっき苧うにに攻撃された時に手放した剣が落ちていた。僕はそれを拾い、剣に力をみなぎらせた。瞬く間に僕の体も手に持った剣も金色の光に覆われた。
香奈子はもう気を失っている。苧うにの手の下にあり、動く様子がない。
「香奈子を離せーーー!!!」僕はそう言って飛び上がると、一気に苧うにの首を切り落とした。
苧うには頭を失った体から黒い血を吹き出し、ゴボゴボと気道から出す空気とともに「うあああああああああああああん!」と悲鳴を上げて絶命した。
「香奈子、香奈子……」僕はそう言って香奈子に近づくと、ぎゅっと香奈子の体を抱きしめた。
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