上 下
7 / 11

7

しおりを挟む
目が覚めるとそこはエルフィスト家のソフィアの部屋の天井だった。

夢の事を思い出しベッドから飛び起きる。

だけど私の手の中にはあの白い猫のぬいぐるみはなくて……

「やっぱり夢だったのかな……」

そう思いながら近くのテーブルを見た。

「えっ……?」

そこに置いていた夢見の水晶はどこにもなかった。

誰かが盗っていた?とも思ったけど私の家には寝る前にはメイドさんが水の入ったポットとコップを置いて置くしトイレは部屋の中にあるから部屋の外に出る事もない。

さらに私達家族の寝室には超強力な結界が張れる水晶が置いてありそれに触ると触った本人がもう一度触らない限り結界が破れることもない。

じゃあ、あれは……

「夢じゃない…?」

そう言った瞬間心の中がぽかぽかしてきた。

するとドアの方からトントンと叩かれる音がする。

「お嬢様ー!おはようございます!起きていらっしゃいますかー?」

そうメイドの声が聞こえてくる。

私は少しだけ目を閉じお父さんとお母さんの事を思い出して目を開ける。

私はソフィア。ソフィア・エルフィスト。

エルフィスト家の長女でこのbeautifulLoveの悪役令嬢。

バッドエンドを避けてヒロインと攻略対象の恋愛
(特に第一王子との恋愛)を見るために全力でこの世界を生きていこう。

前を向いて行こう。

結界を解除するとメイドさんが入ってくる。

「おはようございます。ソフィア様。」

私はそれに笑顔で

「おはよう。」

と答えた。


とある場所から彼女をじっと見つめる白い影には気づかずに。






~佐藤家~母親視点

夢を見た。

大事な一人娘が亡くなって1ヶ月。

辛くて辛くてしょうがない時にみた1人の女の子の夢。


私も夫も家の中に気づいたら立っていて困惑しているとリビングに倒れているとても可愛い女の子にあった。

その子に怒られて泣かれてさらに困惑していたけどその怒り方がとてもあかりにそっくりで……

その子にあかりなの?と聞くとあかりと一緒に見ていた恋華という恋愛アニメの事を持ち出されて
さらに夫の健康事情の話もされて……

あぁ、この子はあかりなんだなと思った瞬間だった。

それから楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

最後に渡したあの猫のぬいぐるみ。
あれは私達があかりに渡した誕生日プレゼント。

あかりはあのぬいぐるみをとても大事にしていて汚れていたら綺麗に手入れをしていた。
だからあかりの部屋の整理をしていてもあれだけは捨てられなかった。

最後にあの子の今の名前も聞けた。

ソフィア・エルフィスト……

それが今のあの子の名前。

あの子がやっていた乙女ゲームの悪役令嬢の名前。
なんであれに転生したのかとは思うけどどうせ

『第一王子とヒロインの恋愛を間近で見たかったの~!』

とでも言うのだろう。
だって私はあの子の母親だから。

でもその役目ももう終わり。
私はもうあの子には会えないのだろう。
何となくわかってしまったから。

だから私はあの子が幸せに笑える未来を願おう。

目を開けると夫が泣きながら私の手の中を見ている。

なんだろうと思い手を動かすとゴツゴツとした感触がある。

それを見た瞬間涙が溢れた。

あぁ、あれは夢であって夢じゃなかったのだと

私達は目を合わせ笑顔で泣いていた。

彼女の部屋にはあの白いぬいぐるみはない。

彼女の仏壇の写真はより笑顔で写っているように見える。

ただその日から写真立ての横に美しい青い水晶が置かれているらしい。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

婚約破棄は踊り続ける

お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。 「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

処理中です...