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 「・・・ィー、ソフィー。そろそろ起きないと、襲うよ?」

 心地よい眠りの中、ソフィーの意識を急浮上させる声が聞こえてくる。

 「ん・・・、お・そう?」

 「襲って欲しいんだ?」

 ちょっと意地悪そうな声色に変えた呟きが聞こえ、ソフィーの唇に暖かいモノが押し当てられる。

 「!?」

 バチっと目を覚ましたソフィーの目の前には、目を閉じたドアップのグレイ様の顔があり、唇に押し当てたモノの中からヌルリとしたものがソフィーの唇を押し開けて入ってきた。

 「・・・んっんっ!」

 全く準備が出来てなかったソフィーはすぐに息苦しくなり、グレイ様の顔を引き剥がそうとするが、ギュっと抱きしめられ身動き取れない。

 「ふっ、朝から可愛いな。おはようソフィー」

 唇を離され、満面の笑みでグレイ様は言うが・・・。

 「・・・、朝から死ぬかと思いました」



 朝食を2人でとり、食べ終わればグレイ様とはココでお別れで、日を改めて婚約の申し込みを再度受ける事に話し合って決めていた。

 しばらく会えなくなるのに、2人とも黙々と朝食を食べ、食後のお茶を飲んでいる。

 「では、グレイ様。お名残惜しいですが、そろそろ失礼しますわ」

 いつまでもココに留まってもいられない。両親もソフィアの帰りを首を長くして待っているだろう。

 「俺も一緒に出るよ、ソフィー荷物はそれだけ?」

 「ええ」

 ソフィアが答えると、グレイ様がサッと荷物を持ってくれる。

 「えっ、侍女に運ばせるので・・・」

 「俺が運んだ方が早いだろ。行くぞ」

 スタスタと歩き始めるグレイ様を追いかけて行く。退去の手続きをして外に出ると、スッと一台の豪華な馬車が目の前に止まる。馭者が降りてきてグレイ様から荷物を預かると荷物台に積み始め、グレイ様はソフィーに馬車に乗るようにエスコートしてくれる。

 「グレイ様、うちの馬車も迎えに来るので大丈夫ですよ?」

 「もう、荷物も積んだし。ソフィーは俺と一緒の馬車はイヤか?」

 ソフィーの手を握りしめたまま、目尻を少し下げながら問われる。

 「イヤなんて・・・。では、遠回りになりますがお願いします」

 答えると、優しく微笑みながら、

 「久しぶりのソフィーの家、楽しみだな」

 と言うのだ。




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