上 下
6 / 36

6

しおりを挟む
 ゆっくりと目を開けると、見覚えの無い天井が見える。

 ここ、どこ!?

 「目が覚めたか?いきなり気を失うからびっくりしたぞ?」

 ソフィアの頭を撫でながら、グレイが話しかける。その瞬間、一気に記憶が戻る。

 「ひゃっ、ぐ、グレイ様、離れてくださいっ」

 グレイから距離を取ろうと、ソフィアはベッドの上でゆっくりと後ずさる。

 「あ?何でだ?ほら、もう少し休め」

 グレイはベッドに乗り上げて、ソフィアを抱きしめた頭をポンポンする。少しパニックしていたソフィアだが、頭を撫でられるのが気持ちよく、瞼を閉じると再び眠りに落ちる。




  再びソフィアが目を冷ますと部屋に1人だけだったが、何かいい匂いがする。匂いの元を辿ると、サイドボードの上には何かが載っていて、布がかけてある。フワリと布をめくるとまだ湯気がたっているスープとお粥とお茶が載っていた。寝起きでも胃に優しそうだ。

 スープを一口飲んでみると、野菜の優しい味でスルスルと飲めてしまう。お粥もサツマイモが入っていて甘くて美味しい。全部食べ終わり、一息ついていると、グレイが部屋に入ってくる。

 「気分は悪くないか?」

 「はあ、機嫌は悪いですが気分は悪くないです」

 「ふっ、7日間パートナーなんだから機嫌は治せ」

「努力はしますが、保証致しかねます」

 そう言って、私は自分の部屋に戻って行った。

 とりあえずは1人で落ち着きたい。




 翌朝、小鳥のさえずりで目が覚めた。しかし、それは自然の鳥ではなく館内放送による鳥のさえずりだった。部屋の中にはパンのいい匂いが漂っている。

 そう、ティーセットが置いてある棚は、部屋に入らずに廊下から棚の中身を入れ替える事が出来るようになっていて、日に何度か入れ替えられている。朝、昼、夜の3食に加えティーセットやお茶菓子もだ。
 
 朝食をのんびり食べ、窓の外を見るとどうやらベランダになっているようで、少しだけ外に出られそうだ。窓を開けると心地良い風が室内に流れ込んでくる。

 しかし、それも束の間の幸せ。

 無粋なアナウンスが流れてくる。

 『皆様おはようございます。9時より講習会が始まります。5分前迄に隣室にお入り下さい』

 ソフィアはそのアナウンスに思わず溜息が出てしまう。

 何故、父母がこの講習会に参加させたのか理解不能だった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

腹黒王子は、食べ頃を待っている

月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

《R18短編》優しい婚約者の素顔

あみにあ
恋愛
私の婚約者は、ずっと昔からお兄様と慕っていた彼。 優しくて、面白くて、頼りになって、甘えさせてくれるお兄様が好き。 それに文武両道、品行方正、眉目秀麗、令嬢たちのあこがれの存在。 そんなお兄様と婚約出来て、不平不満なんてあるはずない。 そうわかっているはずなのに、結婚が近づくにつれて何だか胸がモヤモヤするの。 そんな暗い気持ちの正体を教えてくれたのは―――――。 ※6000字程度で、サクサクと読める短編小説です。 ※無理矢理な描写がございます、苦手な方はご注意下さい。

【R18】お父さんとエッチした日

ねんごろ
恋愛
「お、おい……」 「あっ、お、お父さん……」  私は深夜にディルドを使ってオナニーしているところを、お父さんに見られてしまう。  それから私はお父さんと秘密のエッチをしてしまうのだった。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

処理中です...