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 「ソフィア、食事が終わったらお話しがありますの。部屋にいらっしゃい」

 昼食時に母から告げられる。

 ここでは話せない事なのだろうか?

 「わかりましたわ。伺います」

 昼食の席には、母、弟、私の3人しかいない。父は国王と一緒に狩りに行っているらしい。

 弟には聞かせたく無い話しなのだろうか?




 昼食が終わり、のんびりお茶を頂いた後、母の私室に向かう。夫婦の寝室の左右にそれぞれの私室があるのが一般的な造りだ。

 扉を軽くノック。

 「ソフィアです、よろしいですか?」

 「ええ、お入りなさい」

 母のその言葉に、扉を開け中に入る。母は猫脚のソファーに座ってお茶を飲んでいた。ソフィアを向かいに座るように促し、侍女に新しくお茶を用意させ、退出させた。

 部屋にはソフィアと2人だけになり、母は1度咳払いをしてから話しはじめる。

 「ソフィア、あなたはもう16歳になるわ。これからデビュタントを迎えれば殿方と交際する事もあると思うの。この国は比較的、婚前交渉には大らかだから、まあ、そういう流れになる事はあると思うの。だから、春休みを利用してマナー教室に通ってはどうかと思ったのよ」

 「お言葉ですか、お母様。マナーは一通り習っております」

 「ええそうね。一般的なマナーは・・・ね?でも、今回のマナーは大人のマナーよ?殿方と愛し合う為の大切なモノ。それに、少し殿方に対する免疫もつけなくてはね?」

 「はあ・・・。」

 確かにソフィアが通う学校は、貴族女子が通う学校で教師に至るまで女性で、庭師も女性だ。そんなソフィアは男性との接点は、父かその執事、弟。後は使用人位だ。他は従兄弟だったり父の仕事繋がりの人など、年に数人会う位だ。

 「大丈夫よ。実はお父様とも、その講習会で出会ったのよ?まあ、1種のカルチャーショックな出来事になるかもしれないけれど、この知識は無いよりもあった方があなたの為だからね?明日から7日の予定よ。準備は侍女にさせてあるから心置きなく行ってらっしゃいな」

 笑顔で言われ頷く。

 ここで頷いてしまった事に、後に後悔する事になるとはソフィアはこの時には思いもしなかったのだ。


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