貴方との運命

ゆきりん(安室 雪)

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 消毒薬と冷んやりと空気で目が覚める。

 見慣れない天井と硬めのベッド。室内を見ようと首を右に向けると葉月さんが椅子に座ったまま寝ている。

 「はず・・・、くっ・・・」

 喋りたいのに、顔と口が痛く途中で詰まってしまった。

 「美緒っ、起きたのか?身体は大丈夫か?」

 椅子からガバリと立ち上がり、葉月さんは近づいてくる。今まで見た事も無いような憔悴した顔だ。

 「顔が痛くて、血の味がする」

 卯月さんに殴られたんだっけ。どうしよう、怪談話のお岩さんとかみたいな微妙な顔になってたら・・・。

 「殴られた左の頬は青アザになってて、腫れている。口の中は少し切ったみたいだ。他は多少の軽いアザみたいだ」

 「そうなんだ、思ったほど酷くないかも」

 一応ほっとする。

 「こんな事に巻き込んで済まなかった」

 何時もの葉月さんからは考えられない態度に少し笑えてくる。

 「卯月さんの行動は読めませんから仕方ナイです。許せませんけど。でも、葉月さんが無事で良かった」

 「は?逆だろうよ、美緒。怪我を負わせてしまったが、助かって良かった」

 ギュッと抱きしめられる。

 「でも、打撲の割にはなんで点滴?」

 よく見ると2種類の液体が腕に点滴されている。

 「タイミング的にいつ話そうか考えていたんだが、早い方がいいだろうな。美緒、お前は妊娠している。俺の子以外は考えられないな、状況的に」

 真面目な、でも少し思いつめた表情と震えた声で続けて話す。

 「お前が産みたくないのは分かっている。今回の卯月の行動で分かった。俺もアイツと同じだ。アイツは未遂だったが、俺はお前を犯し続けたんだ。まだ間に合う、堕ろすなら早い方がいい。お前の身体の負担になる。今後のお前の生活についても、三ノ宮家が保証する。お前の住みたい所でゆっくり過ごせばいい。街中でも田舎でも、いくらでも手配する。数日中で退院出来るはずだ。住みたい場所は考えおいてくれ」

 言うだけ言って、葉月は部屋から去って行った。その背中は、いつもの俺様オーラを全く感じさせなかった。






 
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