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 スミレは一旦自警団に戻り、要人を警護する際の制服に着替え、馬を走らせ屋敷に戻った。屋敷にはすでに人が集まりつつある。デイジーを見つけ父の様子をたずねると

 「お父様の頭にはツノが生えてましたよ?」

 と苦笑いしながらの返事だった。

 あ~、あの状態か。

 何度か目撃していたので、スミレも苦笑いするしかなかった。

 勝手知ったる屋敷内を賊が紛れ込んでないか、隠れていないかみて回る。自警団の者とも途中で会い、注意箇所を確認する。そうこうしている間に歓迎会が始まったようだ。

 「お前は向こうで参加しなくていいのか?」

 自警団員達はスミレが伯爵令嬢だと知っているので聞いてくる。

 「綺麗に着飾ってダンスしたいとは思わないね。上部だけの笑顔もお世辞も何の役にも立たない。女性の役目はデイジーに任せたよ」

 手をヒラヒラと振る。

 その時、香水の匂いがフンワリと漂ってきた。その方向を見ると本日の主役だろう、ガイナード殿下が女性に囲まれていた。

 あ~あ、大変そうだな。

 あの一団から匂いが来ているのか。こないだの匂いと同じだからガイナード殿下の香水か。この距離で臭うって凄いな。

 「ガイナード殿下はどんだけ香水を振りかけてるんだろうな?この距離で臭うって凄くないか?」

 「は?香水?別に臭わないぞ?」

 そんな話しをしていると、会場外に不審な動きをする者の姿が見えた。

 「外に不審者だ、注意しろ」

 声を掛けてそちらに向かう。

 外に出る窓ギリギリの所で壁に身を潜め、外を伺う。人数は・・・、多いぞ?仲間に賊の人数が多い事を知らせ、会場内の人をなるべく庭とは別の方に移動してもらう。

 パリンッ!!パリンッ!!パリンッ!!

 窓ガラスが一気に破られ、賊が入り込み会場内には悲鳴が響き渡る。

 自警団と騎士は賊と対峙する様に向かい合った。スミレは賊の中に数日前に戦った、異常に強かった男を見つけた。その男もスミレを見つけニヤリと笑った。

 ジリジリとした空気の中、賊の男がスミレに斬りかかってきた。ソレを合図に賊が一気に動き始めた。会場内は惨憺たる、状態になっている。スミレは数日前と同じく、異常に強い男の相手をしている。

 「お嬢ちゃん、可愛い顔してるのに俺と互角とは、嬉しいぞ。でもなぁ、顔には傷付けたくはないだろう?俺と一緒に来ないか?」

 男はニヤニヤしながら問いかけてくる。

 「誰が賊の仲間になんかなるかっ!」

 「ふはっ!威勢がいいのも俺好みだよ、お嬢ちゃんっ!!」

 剣が振り下ろされるが、スミレはギリギリで避ける。しかし、だんだん男に押されていて、かなりキツイ。周りも手一杯で他人の事は見ていられる状況だ。

 くっ!!負ける訳にはいかないっ!!

 その時、フワリと香水の匂いが強く漂い、スミレと男の間にガイナード殿下が立ちはだかった。

 『ギンッ!!!』

 剣と剣がぶつかる音がし、スミレは後ろに下がる様に腕で押される。

 「あぁ?俺がお嬢ちゃんと遊んでるのに、邪魔をするのか?邪魔すんじゃね~よっ!!」

 剣を振り払う男にガイナード殿下は楽々と剣を突き立てた。ソレを見た男の仲間は2人に襲いかかってくる。

 「気をつけろよっ」

 ガイナード殿下が声をかけてくれる。

 「あなたもねっ!」

 2人はお互いに背中を預け、敵を迎え討つ。

 あの男以外は大した事なく、来るやつはどんどん切って捨てた。残り数人になった所で賊は逃げ出そうとしたが、自警団や騎士に取り抑えられた。

 一息つき、会場内を確認しようと足を踏み出すが、突如腕を掴まれる。

 ああ、ガイナード殿下がいたんだったな。安心し過ぎて忘れてた。

 「やはりあなただったのか、マイ エンジェル」

 おもむろにギュッと抱きしめられた。

 


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