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 ミーシャは客間に案内され、紙とペンも借り手紙を書きはじめた。よくよく考えれば、フレッドに手紙を書くのは初めてだ。普通なら初めての手紙となればドキドキしそうなものだが、今は緊急事態だ。身に起こった事を要領よく伝えなければならない。

 何だか報告書になってしまったわ。

 文章の1番下に署名をする。明日の朝、コクーン男爵に手渡せばいいかな?

 手紙の文字が乾いた頃、署名の上にキスをした。口紅は付けていないので何も残ってはいないが、何となくキスしたかったのだ。




 翌朝、コクーン男爵に手紙を渡す。男爵はソレを報告書の3枚目辺りに挟み込んだ。

 「必ずお届けしますよ」

 そう言って男爵は屋敷を出発した。




 ミーシャとサリナは、人目に付くのを避けなければならなかったので、屋敷の中で大人しく過ごす事にした。午後には夫人に呼ばれ3人でお茶会をして過ごし、王宮内での誘拐について話していた。

 「見慣れない護衛をサリナは見なかったのよね?」

 「廊下を歩いていたのが最後の記憶で、目が覚めたら荷馬車の上だったから」

 「う~ん、全く見覚えが無い護衛だったのよ。どうやって入ったのかしら?」

 「それこそ誰かの護衛として着いて来たとかは?上位貴族ならあるんじゃない?」

 「そうね、護衛何人連れてきたとかは、皆覚えてなさそうだし」

 「ねえ、それよりも王太子様との馴れ初めを教えて頂戴?」

 夫人にお願いされ、馴れ初めを話すのだった。

 「王太子様を変質者や変態と間違えるなんてっ!ミーシャちゃん、ナイスだわ!」

 「ライム様の部屋からは変質者出てこないと思うわよ?」

 2人にケタケタと笑われる。

 「イヤイヤ、凄い勢いで歩いて来る足音がして扉が開いたと思ったら、抱きしめられるんだよ?ありえないよ、普通」

 あの時は正直怖かった。

 「逃げても追いかけて来るし」

 「面白いからお茶会のネタにさせてもらうわ~っ!」

 夫人は気に入ったらしい。



 そんな話を夕方までしていると、男爵が帰って来た。早くない?

 「ミーシャ様っ!!殿下からお手紙を預かってますっ!」

 男爵がササッと手紙を取り出した。

 ミーシャはすぐに中を見る。初めてのフレッドからの手紙だ。

『マイ スィート ミー

 良かった、ホントに無事で良かった。

 サリナ嬢と男爵家の皆には感謝しかない。

 ミーの判断は良かったと思う。護衛が絡んでいるとなると、うかうかと行動しない方が良いだろう。ミーはまだ行方不明という体を取る事にする。

 寂しい思いをさせてすまない、必ず犯人を見つけるまで待っていて欲しい。

                                            フレッド』


 短い文だが、忙しい合間に書いてくれたのだろう。嬉しい。思わず署名の上にキスをしてしまう。するとーーー。

 ポンッ!!

 と、愛の花が数輪舞い降りてきた。

 ああ、久しぶりのフレッドとの愛の花だ。今迄雑に扱った覚えは無いが、今程この花を愛しいと思った事は無い。




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