上 下
13 / 30

13

しおりを挟む
 フレッドはさすが王太子だけあって、日々の業務が多岐に渡り忙しいようだ。王に付いて学ぶ事もあれば、国内の問題を解決したり、提案したり。

 そんな忙しいなかであっても、必ずミーシャと朝食・夕食は共にしたいようだ。しかし、業務で夕食に間に合わない時は、フレッドが食事をする際に、横でお茶を飲まないかと誘われる。

 たまに昼間に時間が出来ると、ミーシャを散歩に誘ってくれたり、ローズガーデンでお茶をしたりする。このお茶の時、ミーシャは最初戸惑った。フレッドは自分の足の上にミーシャを座らせ、お菓子を食べさせたり・お茶を飲ませたりと甲斐甲斐しくお世話をするのだ。番では当然の行動らしい。冗談だと思い、後日ライムさんにたずねたら、

 「ええ、ソレが普通のようです。王妃様もそうですよ?」

 と答えが返って来た。ああ、確かに初対面の時にフレッドの上から降りようとしたのを、別にかまわないと言われたような覚えが。

 それに隙あらばキスをするので、あちらこちらに薔薇を撒き散らしてしまい、侍女の人には申し訳ない思いだ。しかしソレも、

 「侍女の人に謝ったら、部屋に沢山の薔薇がタダで飾れるから逆に嬉しい。侍女達で分け合っていると言われた」

 とライムさんは笑っていた。

 それで許されてしまうのか・・・。

 確かにたまにライムさんと薔薇の交換をしたりしている。ピンクだけもいいが、真紅の薔薇が混じると華やかになるのだ。




 ミーシャが王宮の客室で生活するようになって、2週間程経った頃、突然来客があった。

 「ミーシャ様、ライオネル伯爵令嬢がいらっしゃいました。お通ししてもーーーあっ!」

 「ふ~ん?あなたがフレデリック様の番なんて嘘を言ってる子?借金男爵なんでしょ?お金目当てな訳?居座ってないで早く帰りなさいよっ!私がフレデリック様と結婚するって決まってるのよ!!」

 思いっきり突き飛ばされ、転んでしまう。

 騒ぎを聞きつけた護衛が、部屋に入って来ようとするが、

 「わたしを誰だと思っているの?私に歯向かえばクビにするわよ!?」

 との声を聞き、ミーシャはこの女性が医務室にいた香水女だと、やっと気がついた。

 ああ、フレッドが言ってた迷惑女だ。

 そしてこの迷惑女は、倒れたミーシャの指から指輪を抜き取り、自分の指に嵌めた。

 「ほら、アンタよりも私の方が似合うじゃないのっ!うふふっ!」

 護衛達は何も出来ずにマゴマゴしている。うわっ、こないだの女医の人の方が格好良かったな!!って、そんな、場合じゃなかった。

 「指輪、返して下さい。それは私のモノです」

 手を伸ばすが、

 「泥棒猫の癖にっ!」

 バッチーンと頬を叩かれる。

 

しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍

バナナマヨネーズ
恋愛
貧乏男爵令嬢のリリル・クロケットは、貴族たちから忌み嫌われていた。しかし、父と兄に心から大切にされていたことで、それを苦に思うことはなかった。そんなある日、隣国との戦争を勝利で収めた祝いの宴で事件は起こった。軍を率いて王国を勝利に導いた将軍、フェデュイ・シュタット侯爵がリリルの身を褒美として求めてきたのだ。これは、勘違いに勘違いを重ねてしまうリリルが、恋を知り愛に気が付き、幸せになるまでの物語。 全11話

はずれの聖女

おこめ
恋愛
この国に二人いる聖女。 一人は見目麗しく誰にでも優しいとされるリーア、もう一人は地味な容姿のせいで影で『はずれ』と呼ばれているシルク。 シルクは一部の人達から蔑まれており、軽く扱われている。 『はずれ』のシルクにも優しく接してくれる騎士団長のアーノルドにシルクは心を奪われており、日常で共に過ごせる時間を満喫していた。 だがある日、アーノルドに想い人がいると知り…… しかもその相手がもう一人の聖女であるリーアだと知りショックを受ける最中、更に心を傷付ける事態に見舞われる。 なんやかんやでさらっとハッピーエンドです。

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~

瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)  ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。  3歳年下のティーノ様だ。  本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。  行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。  なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。  もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。  そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。  全7話の短編です 完結確約です。

初夜に「私が君を愛することはない」と言われた伯爵令嬢の話

拓海のり
恋愛
伯爵令嬢イヴリンは家の困窮の為、十七歳で十歳年上のキルデア侯爵と結婚した。しかし初夜で「私が君を愛することはない」と言われてしまう。適当な世界観のよくあるお話です。ご都合主義。八千字位の短編です。ざまぁはありません。 他サイトにも投稿します。

[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。

キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。 離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、 窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語

おいしいご飯をいただいたので~虐げられて育ったわたしですが魔法使いの番に選ばれ大切にされています~

通木遼平
恋愛
 この国には魔法使いと呼ばれる種族がいる。この世界にある魔力を糧に生きる彼らは魔力と魔法以外には基本的に無関心だが、特別な魔力を持つ人間が傍にいるとより強い力を得ることができるため、特に相性のいい相手を番として迎え共に暮らしていた。  家族から虐げられて育ったシルファはそんな魔法使いの番に選ばれたことで魔法使いルガディアークと穏やかでしあわせな日々を送っていた。ところがある日、二人の元に魔法使いと番の交流を目的とした夜会の招待状が届き……。 ※他のサイトにも掲載しています

番認定された王女は愛さない

青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。 人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。 けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。 竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。 番を否定する意図はありません。 小説家になろうにも投稿しています。

番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか? 何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。 12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...