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 セイラが学院に通いはじめ、3ヶ月が経った頃、年に1度の舞踏会が開催される。一般的には婚約者がいる場合は婚約者の家から舞踏会用のドレスが送られてくるのだが、セイラの元には届いた事が無い。セイラの両親も婚約下からにはドレスは送られて来るものだと思っていたが、婚約してから初めての舞踏会1ヶ月前になっても、王家から針子達が派遣されず、セイラは王宮でも採寸されていないと話した為、慌てドレスの作成を依頼したのだ。大人であれば最悪、ドレスの飾りや宝飾品で印象を変える事ができるが、子供の1年はサイズが全然違う。毎年、作らなければならないのだ。

 デビュタント前の令嬢でも早い時間帯に開催される第一部の舞踏会前の立食パーティーには参加出来る。そういった場で他の貴族子息・令嬢達は親の監視の元、親睦を深める。親としても、敵対する貴族や悪意ある貴族から子供達を守るれる。

 婚約者であるマリウスからドレスを用意されない事が分かり切っているシャーロック家は、多忙なセイラの予定の合間に採寸、調整などを終わらせていた。

 伯爵家の思惑通り今年も針子達の派遣はなく、舞踏会当時を迎えた。今年はセイラのデビュタント歳だ。

 なので、例年はカラードレスだが、今年は白いドレスにパールの宝飾品を身につける。一般的にはデビュタントで婚約者からパールを送られ、結婚式でもそのパールを見に着ける事が慣わしとなっている。家によっては代々嫁に受け継がれるパールもあると言う。

 セイラはもちろんマリウスからパールの宝飾品は受け取っていない。プレゼント等も一切ないのだ。手元にあるのは唯一、婚約時に王妃様より手渡されたアイスブルーの指輪のみ。まだ5歳だったセイラに代わり、両親が厳重に保管し、デビュタントの際には指輪をする決まりとなっていた。その指輪は代々王太子妃のみが身につける事が出来る指輪だった。

 


 デビュタントの歳を迎えるセイラの舞踏会当日は朝から大忙しいだった。朝から爪の先から髪の毛一本一本に至るまで綺麗に手入れされ、王宮に向かう頃には既にグッタリしてしまう。が、本番はこれからだ。

 しかし、今年もマリウスからエスコートする連絡は一切ないので、家族と共に王宮へと向かった。

 毎年の事ながら、婚約者がいるにも関わらず、家族と一緒の入場。しかも相手は王子なのだ。シャーロック伯爵家は毎年恒例の気まずい入場をこなした。





 
 そして、デビュタントの挨拶が終わった後、冒頭の出来事が起こったのだ。



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