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第82話

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 ――翌日、学校の昼休憩時にて。

「痛たたたた! 全身筋肉痛でやばいよぉ……!!」

 無事に目的を達成して帰ってこれたはいいものの、現在進行形で筋肉痛に苦しめられている。

「おいおい、咲太大丈夫か~? 昨日何してたんだよ」
「え、えーっと。色々大変だったんだ~? あはは……」
「なんだそりゃ。エッチな奴め」
「えっちじゃないよ!」

 今は昼休憩時間なので、涼牙とともにお弁当を食べている。筋肉痛がものすごいというのに弁当を作れたのかという疑問が生まれるだろうが、これはなんと天宮城さんが作ってくれたのだ。
 ボロボロで少し焦げている卵焼きや未確認生命体のようなウィンナーなどいるが、どれもものすごく美味しい。

「ったくよ~。あの超有名美少女配信者に弁当を作ってもらうだけでなく、このテストの点数はなんなんだ咲太!」
「んぇ?」

 バサッと僕の目の前に突き出された複数の紙。それらは僕の中間テストのテスト用紙であり、全て90点以上の数字が赤ペンで書かれていた。

「お前テスト期間中にも配信しててよぉ、今回こそ俺が勝てると思ったのによぉ……! なんでオール90以上なんだよ!!」
「むふー、筋肉は無くとも頭はいいからねっ! 僕の脳みそはしわっしわだよ!!」
『ヌゥ』
『ぬぅ』

 山から降りてきて隣で草を食べてる鹿さん親子も同意してくれている。
 実はシャドウファングと色々している時はすでにテスト期間であり、ほぼノー勉でテストを受けたのだが、地頭の良さで助かった。

「はぁあ、俺も頭よくなりて~」
「趣味を勉強にしたらいいんじゃない?」
「それは絶ッッ対にやだ!!」
「だと思ったよ……」

 赤点ギリギリで苦しむ涼牙を横目にスマホをいじっていると、一つのニュースが僕の目に飛び込んできた。

「あっ……」

 そこには、「有名クラン・シャドウファングの不祥事発覚」というものだった。
 リーダーを含む構成員の九割を緊急逮捕。残り一割は身元を追っているとのこと。

 クランのリーダーを倒した後に凛理が任せてほしいと言ったのでそうしていたのだが、うまく情報をばら撒いてくれたらしい。
 そしてリーダーについてだが、だいぶショックだったのか、簡単な質疑応答にも答えられないほどの状態らしい。

(凛理が「気に病む必要はない」って言ってたけど、ちょっとかわいそうかな……)

 メンタルが回復したらきちんと更生してほしいなと思っていたその時、誰かから通知が来てスマホが震える。

 ♡しおりん♡:お兄ちゃん、あたしが日本に帰った時覚悟しててね♪

「ぐはっ!!」
「咲太!? 急にどうしたーーッ!?」
「うぐぐ……だい、じょう、ぶ……。し、鹿さん、慰めの雑草はいらないよ……」
『ヌヌゥ……』

 昨日のうちに連絡が来なかったからセーフだと思っていたのに……! 妹にバレてたなんて!
 おそらくお母さんにも伝えられてしまうだろうが、日本に帰ってくるまでまだ時間がある。それまでに言い訳と覚悟を決めておこう。

 涙で少ししょっぱくなってしまったお弁当を食べていると、再びスマホが震える。
 ビクッと驚いて身構えながらスマホの画面を見たが、今度は妹からのメールではなかった。

 美玲:咲太君、お弁当お口に合ったかしら? ちょっと不細工なお弁当になって申し訳ないわ。

 お弁当を使ってくれた天宮城さんからの連絡で、ほっと一安心する。

 咲太:すごい美味しいですよ! 今度お返し作ります!!
 美玲:喜んでもらえてよかった。作ってくれるなら楽しみに待ってるわ。お料理上手みたいだしね。

 一瞬でも「もしやピーマン料理が入っているのでは?」と疑ってしまった僕を叱ってほしい。
 なんやかんや言って天宮城さんはピーマン料理を強要したことないしなぁ。ピーマンの肉詰めを無理やり食べさせた担任の先生とは大違いだ。

 美玲:ところで咲太君、今週の休日とか暇だったりしないかしら?
 咲太:何もないですよ! また何かしますか?

 またコラボ配信でもしたいのかなぁと考えていたのだが、予想外の単語が出てきて素っ頓狂な声を出してしまう。

 美玲:デートに行きましょう。


 # # #


 そしてやってきた休日。
 僕は海がすぐそばにある場所にやってきていた。

「ということで~。皆さんこんにちは、サクたんです! 今日は!!」

:何ィーーッ!?!?
:えっ、えっ、えっ???
:冗談よしてよ~。……じょ、冗談よね?
:マジすか……?
:嘘だと言ってくれぇえええ!!
:俺たちのサクたんがぁあああ!!
:【超悲報】サクたん、あまみやちゃんに寝取られる
:↑寝てから言え定期
:あままや許すまじ
:あまみやはサクたんの独占をするなーー!
:普通逆だろ(笑)
:サクたんの方がヒロイン適正高いんよ
:あまみやはイカれたモフラーだから……
:黒狐たんやルハたそを出し抜いて行くぅ~w

 天宮城さんからデートのお誘いを受けたのだが、今僕は配信をしている。なぜかというと、だ。

:デートだからダンジョン用の服じゃないんやね
:オーバーオールにキャスケット帽か
:可愛いよサクたん……♡
:そんなサクたんを掻っ攫おうってかあまみやァ!!
:俺たちも本気出すしかねぇな(ポキポキ)
:あまみや萌え豚リスナーに火を点けたのさ
:ってか張本人こんな

「なんか、服のコーデについてお姉さんと言い争ってるらしいです」

 リスナーさんたちと雑談しながら待つこと数分、突然天宮城さんがバシュッと音を立てて隣に現れた。

「うわっ! びっくりした~」
「待たせてごめんなさい。ちょっとお姉ちゃ……姉さんと言い争ってたわ」
「そうなんですね! 服すごい似合ってますよ!!」
「ふふっ、ありがと。サクたん君も似合ってるわよ」

 いつもの戦闘しやすそうな服ではなく、ものすごいお洒落な格好だ。
 黒いミニスカートの上に、足首辺りまで伸びる黒い巻きスカート? を履いていた。リスナーさん曰く、プリーツミニ×ロングラップスカートというものらしい。
 高級そうなショルダーバックを掛けていたり水色の雫のイヤリングとかもしており、隣に立つのが少し恥ずかしいくらいだ。

「それで今日はまぁ……デート配信というのは間違いないかもだけれど、私とサクたん君でのよ」

:ふぁっ!?
:じゃあ付き合ってないってことかい?
:まだチャンスがあるッ!
:や っ た ぜ
:勝ったな。風呂を啜る~!
:↑土俵にすら立てない哀れな生き物だ……
:いや待て。サクたんに案件をこなせるか?w
:絶対やらかすというスゴ味があるッ!!
:ってかあまみやちゃん綺麗だな……
:くっ、ライバルが強ェ!
:ふつうにオシャレで可愛くてムカつくぜ

「えーっと……。水族館と同化したダンジョンで、若いカップルに人気なスポットらしいデスネー!!」
「カンペガン読みでカタコトすぎるわよサクたん君……。まぁそういうことだから、デートという程でこの〝アクアリウムダンジョン〟に潜っていくわ」
「れっつご~~!!」

 こうして、僕と天宮城さんとの案件デート配信がスタートした。
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