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第40話
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なんとか二人をなだめた後、王の間へと僕らは移動した。荘厳な雰囲気があり、騎士達もピリピリしている様子だ。
星空の魔女ことイアはともかく、一般人である僕がこんな場所にいるのは場違いだからだろうな。
「国王様がお見えになられるぞッ!」
一人の騎士がそう叫ぶと、姿勢が元々正しかった騎士達がさらに背筋が伸びる。
コツコツと足音が聞こえ、一人の男が現れた。その男は王冠をかぶり、マントを羽織っているまさしく王だった。
これこそがリーヴェ王国現国王である、バルム・リーヴェらしい。
……しかし、なんか既視感があるような……。
「コホン、私に会いたいと申したのはその男……か……なッ!? お、お主、お主はもしやッッ!?!?」
「ん?」
国王が王座に座り、僕を見た途端になぜか瞠目させて驚いている様子だ。何が何だかわからず、僕は困惑している。
「もしやアッシュ殿か!? 私だ! 私が幼い頃、魄魔の黒林で守ってくださったッ!!」
「んー……? あー、そういえば数十年前、僕が住んでる所に変な子供が来た覚えがあるな」
「それだ! いやはや、まさかこんなところで命の恩人と再会できるとは!」
僕が魔術の研究で絶賛引きこもっている最中、外から五月蝿い喚き声が聞こえてきたかと思えば、子供が迷い込んできていたということがあった。
確か地球に誤転移する少し前のことだったか。
「お父様とアッシュ会ったことあるの!?」
「どうやらそうみたいです。穴という穴から液体を無様に漏らしていて実に滑稽だった覚えがあります」
「うがー! 娘の前でそんなことを言うでないッ!!!」
しかし、恩を売っていたという事実はとても都合がいい。これを使えばいけるだろう。
「早速本題に入りますが、国王様に願いがあります。僕はこれから冒険者ギルドのような、市民や騎士、あらゆる職業の依頼をこなす便利屋を開業したいんです」
「ふむ? それくらいであればいくらでも認めようぞ」
「いえ……どこにも属さない超法規的機関にしたいと考えているので」
「……成る程な。確かにそれは難しい」
「ん、私からもお願いしても?」
「うむ。星空の魔女とて、だ」
やはりそうことは上手くいかないみたいだな。だが国王は『難しい』と言っている。つまりは0%出ないということだ。
「それで、どうしたら作れるんですか?」
「本来であれば一般市民に教えることではないが、私の恩人ゆえに教えよう。
どこにも属さなぬも企業を開業するには、三つの国の王族家からの認証と、それぞれの国の特異人の承認が必要になる」
「特異人?」
「我が国ではそこにいる星空の魔女か、ギルドマスターのロブストに該当する」
ゔーん……面倒くさくてもうやめたい……。
でもここまで来たし、魔王様とも約束をしたからやり遂げなければな。
「茨の道になるかもしれぬが……アッシュ、やるか?」
「『はい』以外の選択肢はないです」
「……分かった。ではまず、我が国の東に在るフィアンマ王国に伝言を送ってみよう」
「「っ……!」」
国王がその国名を言った瞬間、隣にいたイアとシエルお嬢様が小さく同様の声を漏らしていた。無言を貫いているが、頰には汗が一滴垂れている。
「二人とも、どうした?」
「……いや、隣のフィアンマ王国には私個人の因縁があるのよ」
「ん、私も」
とりあえずお嬢様の方から聞いてみることにした。
「隣の国にも国王の娘がいるのよ。けどアイツ……っ! 悉く私と好きなものが合うのよ! だからちょっと……」
「なぜ問題が?」
「それは、えっと……。あ、アッシュを……」
「なるほど?」
「な、何がなるほどよ! 何も言ってないじゃない!!」
要するに、僕が取られないか心配、と。魔王様みたいに可愛いとこあんじゃ~ん。
とか思ったりしてみたが、これ以上政治にズブズブと参加はしたくないので、シエルお嬢様だけでぶっちゃけ十分である。
「イアの方は?」
「そこに私のお姉ちゃんがいる」
「え、お前姉いたのか!?」
「ん……。でも、姉についたあだ名は〝破壊神〟。私には手がつけられないから、私はこの国に逃げてきた……」
イアは僕と並ぶほど魔術の腕が極められている。だが、そんなイアでさえ手がつけられないほどの姉とは……少し気になるな。
そんなことを心の中で思ったからなのか、思ってしまったからなのか……次の瞬間にこんなことが耳に入ってきた。
「たっ、大変です! フィアンマ王国にて念話をしたところ、〝破壊神〟も聞いていたらしく、こちらに向かってきているようです!!!」
「破壊神ってもしかして……」
「ん……お姉ちゃんが、来る……!」
一応イアとは関係を結ばせてもらっている。義姉様には、きちんと挨拶をしなければな。
果たして言葉の挨拶になるのか、拳の挨拶になるかはわからないけれど。
「イア、暴れられる場所に行こうか!」
「ん!」
「ちょ、ちょっと二人共どこ行くのよー!」
そして、冒頭のシーンに戻る。
星空の魔女ことイアはともかく、一般人である僕がこんな場所にいるのは場違いだからだろうな。
「国王様がお見えになられるぞッ!」
一人の騎士がそう叫ぶと、姿勢が元々正しかった騎士達がさらに背筋が伸びる。
コツコツと足音が聞こえ、一人の男が現れた。その男は王冠をかぶり、マントを羽織っているまさしく王だった。
これこそがリーヴェ王国現国王である、バルム・リーヴェらしい。
……しかし、なんか既視感があるような……。
「コホン、私に会いたいと申したのはその男……か……なッ!? お、お主、お主はもしやッッ!?!?」
「ん?」
国王が王座に座り、僕を見た途端になぜか瞠目させて驚いている様子だ。何が何だかわからず、僕は困惑している。
「もしやアッシュ殿か!? 私だ! 私が幼い頃、魄魔の黒林で守ってくださったッ!!」
「んー……? あー、そういえば数十年前、僕が住んでる所に変な子供が来た覚えがあるな」
「それだ! いやはや、まさかこんなところで命の恩人と再会できるとは!」
僕が魔術の研究で絶賛引きこもっている最中、外から五月蝿い喚き声が聞こえてきたかと思えば、子供が迷い込んできていたということがあった。
確か地球に誤転移する少し前のことだったか。
「お父様とアッシュ会ったことあるの!?」
「どうやらそうみたいです。穴という穴から液体を無様に漏らしていて実に滑稽だった覚えがあります」
「うがー! 娘の前でそんなことを言うでないッ!!!」
しかし、恩を売っていたという事実はとても都合がいい。これを使えばいけるだろう。
「早速本題に入りますが、国王様に願いがあります。僕はこれから冒険者ギルドのような、市民や騎士、あらゆる職業の依頼をこなす便利屋を開業したいんです」
「ふむ? それくらいであればいくらでも認めようぞ」
「いえ……どこにも属さない超法規的機関にしたいと考えているので」
「……成る程な。確かにそれは難しい」
「ん、私からもお願いしても?」
「うむ。星空の魔女とて、だ」
やはりそうことは上手くいかないみたいだな。だが国王は『難しい』と言っている。つまりは0%出ないということだ。
「それで、どうしたら作れるんですか?」
「本来であれば一般市民に教えることではないが、私の恩人ゆえに教えよう。
どこにも属さなぬも企業を開業するには、三つの国の王族家からの認証と、それぞれの国の特異人の承認が必要になる」
「特異人?」
「我が国ではそこにいる星空の魔女か、ギルドマスターのロブストに該当する」
ゔーん……面倒くさくてもうやめたい……。
でもここまで来たし、魔王様とも約束をしたからやり遂げなければな。
「茨の道になるかもしれぬが……アッシュ、やるか?」
「『はい』以外の選択肢はないです」
「……分かった。ではまず、我が国の東に在るフィアンマ王国に伝言を送ってみよう」
「「っ……!」」
国王がその国名を言った瞬間、隣にいたイアとシエルお嬢様が小さく同様の声を漏らしていた。無言を貫いているが、頰には汗が一滴垂れている。
「二人とも、どうした?」
「……いや、隣のフィアンマ王国には私個人の因縁があるのよ」
「ん、私も」
とりあえずお嬢様の方から聞いてみることにした。
「隣の国にも国王の娘がいるのよ。けどアイツ……っ! 悉く私と好きなものが合うのよ! だからちょっと……」
「なぜ問題が?」
「それは、えっと……。あ、アッシュを……」
「なるほど?」
「な、何がなるほどよ! 何も言ってないじゃない!!」
要するに、僕が取られないか心配、と。魔王様みたいに可愛いとこあんじゃ~ん。
とか思ったりしてみたが、これ以上政治にズブズブと参加はしたくないので、シエルお嬢様だけでぶっちゃけ十分である。
「イアの方は?」
「そこに私のお姉ちゃんがいる」
「え、お前姉いたのか!?」
「ん……。でも、姉についたあだ名は〝破壊神〟。私には手がつけられないから、私はこの国に逃げてきた……」
イアは僕と並ぶほど魔術の腕が極められている。だが、そんなイアでさえ手がつけられないほどの姉とは……少し気になるな。
そんなことを心の中で思ったからなのか、思ってしまったからなのか……次の瞬間にこんなことが耳に入ってきた。
「たっ、大変です! フィアンマ王国にて念話をしたところ、〝破壊神〟も聞いていたらしく、こちらに向かってきているようです!!!」
「破壊神ってもしかして……」
「ん……お姉ちゃんが、来る……!」
一応イアとは関係を結ばせてもらっている。義姉様には、きちんと挨拶をしなければな。
果たして言葉の挨拶になるのか、拳の挨拶になるかはわからないけれど。
「イア、暴れられる場所に行こうか!」
「ん!」
「ちょ、ちょっと二人共どこ行くのよー!」
そして、冒頭のシーンに戻る。
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