19 / 44
第19話
しおりを挟む
ついに二人で【奇跡に寵愛されし一撃】を完成させることができた。
朝飯を食べさせてもらい、ついにここを出ることになった。
「【念話】はいつでもどこでも使えるから、困ったらいつでも連絡してくれ。多分近いうちにまた来るだろうから」
「りょ~。……これがいわゆるセ○レ?」
「ぶっ! それは違ッ……くわない、のか?」
女の子のところを転々として飯を食わせてもらうという……。肉体関係を持った女誑しのヒモニートみたいになってないか!?
そのためにはちゃんと働かないとな。面倒だけど仕方ない。
「アッシュ、私の料理もっといらない? まだ作れるよ」
「いや、もう十分【無限収納《ストレージ》】に入れたから大丈夫だよ。珍しい食材見つけたら【転送】して送るから」
「感謝」
イアの料理に惚れてしまい、僕も手伝いをしてだけれど作ってもらった。それくらい僕を狂わせた料理だ。
「イアの料理めっちゃ好きになっちゃったんだよなぁ……」
「む……私は?」
「ん? そりゃイアも好きだよ」
「……え。~~っ!!? も、もう……っ!!!」
僕が面白い反応をするかと思っていたのか、鳩が豆鉄砲を食ったような反応をイアがしていた。
今までにないほど目が大きくなったと思えば顔が真っ赤に染まり、とんがり帽子を深くかぶって顔を隠した。
「長い付き合い……というか、永遠の付き合いになりそうからな。そういうイアは? 僕のことどう思ってるんだ?」
「う……わ、私は……。私も、アッシュのこと、好き。……だいすき……」
顔は隠れて見えないが、もごもごしている口だけを見せながらそう言い放つ。
「よかった。聞きたいの聞けたし、僕はもう行くよ」
「ん、またね。すぐ会いに来てもいいからね。そんで子供作ろ」
「う、うん……。子供はまだもう少し先がいいけど……」
イアはニコッと笑い、小さく手を振った。僕も負けじと笑い、大きく手を振って見せた。
###
「それでお嬢様、今後はどんな仕事に就いたらいいと思います?」
「えぇと……どうして私のとこに来たのかしら、アッシュ。う、嬉しいけどね!?」
街に戻った僕はシエルお嬢様の下に向かい、相談に乗ってもらうことにした。
イアには泊めてもらったり料理作ってもらったりと、なんとなく貰いすぎかと思って聞くのを自然と忘れていた。
「知り合いがあまりいないし、お嬢様なら街について詳しいかと思いまして。……ところでなんですけど、それは一体?」
お嬢様の手とは思えないほど汚れており、金属を組み立てて何かを作っている様子だった。
てっきりゲームに夢中かと思ったが……。
「ゲームよ? ゲーム機から作ってるけどね」
「この短期間でゲームを作ろうという意思に成長したッ!!?」
なんかお嬢様の横にパソコンみたいな機械もあるし、アレも自作なんだろう。子供の成長って早いんだなぁ……。
「シエルお嬢様、アッシュさんがいらしてから活発的になりましてね。勉強、魔術、剣術がどれも右肩上がりなんですよ」
「そうなんですね……ところでメイドさん、旦那様や奥様はこれをご存知で?」
「はい。『娘がよくわからん発明をしようとしておる! 儂感激~!』とか言って喜んでおりました」
「子に好きなことさせる親は信頼できますね。良い親です」
「うふふ、そうですよね」
おっと、話が逸れてしまった。閑話休題。
軌道修正をし、お嬢様に相談に乗ってもらうことにした。
「私のとこで働きなさい」
「却下」
「むぅ! ……というか、なんかアッシュから他の女の匂いがすごい臭ってくるんだけど!」
「い゛っ!? あ、あぁ……それはイア、星空の魔女のとこで働いてたからですよ」
「……働いてただけでこんなにつくのかな……」
妙に鋭いなお嬢様。聖眼を持っているからか? それとも流石に深夜までイアとシてたのはまずかっただろうか。
けれどまぁバレてはいないか、まだそれを知らないので気づかれることはなかった。
「そうね……自由がいいなら冒険者になればいいんじゃない?」
「冒険者、とは?」
「依頼をこなせば報酬がもらえる。働かないとお金はもらえないけれど、仕事をするもしないもの自由だし」
「いいですねそれ、採用」
この前の試合で確か冒険者を束ねるギルドマスターとやらも倒したことだし、もしかしたら簡単になれるかもしれない。
やはりお嬢様に聞いて正解だったな。
「次は冒険者の職場体験をしてきます。ありがとうございましたお嬢様」
「え、も、もう行っちゃうの……? もう少しいればいいのに……」
「善は急げと言いますしね。まぁ、落ち着いたら一日中ゲーム三昧とかしてあげますから」
「本当!? 約束よ!!!」
ポンポンと頭を撫でながらそう言った。すると嬉しそうに「えへへ~」と鳴き声を漏らす。
「ふふっ、今度会うときはもっと良い女になっておくから覚悟しておきなさいよっ!」
「はぁ、そうですか。なんで良い女になろうと?」
「えっ!?(別れ際にしたのが実は婚姻の儀のやつだけど、満更でもなくアッシュを好きになって良い女になろうとしてるなんて言えないわ……)」
どうやら言いたくなさそうだったので、深く言及はせずに置いてこの場を立ち去った。
……しかし冒険者か。僕が住んでいた村でもたま~に見かけたが、果たしてどんな仕事をするのだろうか。
国王の娘の騎士してたら惚れられたり、魔女から子作りを要求された身だ。また何か、厄介ごとが舞い込んできそうな気がするのは果たして気のせいなのか。
朝飯を食べさせてもらい、ついにここを出ることになった。
「【念話】はいつでもどこでも使えるから、困ったらいつでも連絡してくれ。多分近いうちにまた来るだろうから」
「りょ~。……これがいわゆるセ○レ?」
「ぶっ! それは違ッ……くわない、のか?」
女の子のところを転々として飯を食わせてもらうという……。肉体関係を持った女誑しのヒモニートみたいになってないか!?
そのためにはちゃんと働かないとな。面倒だけど仕方ない。
「アッシュ、私の料理もっといらない? まだ作れるよ」
「いや、もう十分【無限収納《ストレージ》】に入れたから大丈夫だよ。珍しい食材見つけたら【転送】して送るから」
「感謝」
イアの料理に惚れてしまい、僕も手伝いをしてだけれど作ってもらった。それくらい僕を狂わせた料理だ。
「イアの料理めっちゃ好きになっちゃったんだよなぁ……」
「む……私は?」
「ん? そりゃイアも好きだよ」
「……え。~~っ!!? も、もう……っ!!!」
僕が面白い反応をするかと思っていたのか、鳩が豆鉄砲を食ったような反応をイアがしていた。
今までにないほど目が大きくなったと思えば顔が真っ赤に染まり、とんがり帽子を深くかぶって顔を隠した。
「長い付き合い……というか、永遠の付き合いになりそうからな。そういうイアは? 僕のことどう思ってるんだ?」
「う……わ、私は……。私も、アッシュのこと、好き。……だいすき……」
顔は隠れて見えないが、もごもごしている口だけを見せながらそう言い放つ。
「よかった。聞きたいの聞けたし、僕はもう行くよ」
「ん、またね。すぐ会いに来てもいいからね。そんで子供作ろ」
「う、うん……。子供はまだもう少し先がいいけど……」
イアはニコッと笑い、小さく手を振った。僕も負けじと笑い、大きく手を振って見せた。
###
「それでお嬢様、今後はどんな仕事に就いたらいいと思います?」
「えぇと……どうして私のとこに来たのかしら、アッシュ。う、嬉しいけどね!?」
街に戻った僕はシエルお嬢様の下に向かい、相談に乗ってもらうことにした。
イアには泊めてもらったり料理作ってもらったりと、なんとなく貰いすぎかと思って聞くのを自然と忘れていた。
「知り合いがあまりいないし、お嬢様なら街について詳しいかと思いまして。……ところでなんですけど、それは一体?」
お嬢様の手とは思えないほど汚れており、金属を組み立てて何かを作っている様子だった。
てっきりゲームに夢中かと思ったが……。
「ゲームよ? ゲーム機から作ってるけどね」
「この短期間でゲームを作ろうという意思に成長したッ!!?」
なんかお嬢様の横にパソコンみたいな機械もあるし、アレも自作なんだろう。子供の成長って早いんだなぁ……。
「シエルお嬢様、アッシュさんがいらしてから活発的になりましてね。勉強、魔術、剣術がどれも右肩上がりなんですよ」
「そうなんですね……ところでメイドさん、旦那様や奥様はこれをご存知で?」
「はい。『娘がよくわからん発明をしようとしておる! 儂感激~!』とか言って喜んでおりました」
「子に好きなことさせる親は信頼できますね。良い親です」
「うふふ、そうですよね」
おっと、話が逸れてしまった。閑話休題。
軌道修正をし、お嬢様に相談に乗ってもらうことにした。
「私のとこで働きなさい」
「却下」
「むぅ! ……というか、なんかアッシュから他の女の匂いがすごい臭ってくるんだけど!」
「い゛っ!? あ、あぁ……それはイア、星空の魔女のとこで働いてたからですよ」
「……働いてただけでこんなにつくのかな……」
妙に鋭いなお嬢様。聖眼を持っているからか? それとも流石に深夜までイアとシてたのはまずかっただろうか。
けれどまぁバレてはいないか、まだそれを知らないので気づかれることはなかった。
「そうね……自由がいいなら冒険者になればいいんじゃない?」
「冒険者、とは?」
「依頼をこなせば報酬がもらえる。働かないとお金はもらえないけれど、仕事をするもしないもの自由だし」
「いいですねそれ、採用」
この前の試合で確か冒険者を束ねるギルドマスターとやらも倒したことだし、もしかしたら簡単になれるかもしれない。
やはりお嬢様に聞いて正解だったな。
「次は冒険者の職場体験をしてきます。ありがとうございましたお嬢様」
「え、も、もう行っちゃうの……? もう少しいればいいのに……」
「善は急げと言いますしね。まぁ、落ち着いたら一日中ゲーム三昧とかしてあげますから」
「本当!? 約束よ!!!」
ポンポンと頭を撫でながらそう言った。すると嬉しそうに「えへへ~」と鳴き声を漏らす。
「ふふっ、今度会うときはもっと良い女になっておくから覚悟しておきなさいよっ!」
「はぁ、そうですか。なんで良い女になろうと?」
「えっ!?(別れ際にしたのが実は婚姻の儀のやつだけど、満更でもなくアッシュを好きになって良い女になろうとしてるなんて言えないわ……)」
どうやら言いたくなさそうだったので、深く言及はせずに置いてこの場を立ち去った。
……しかし冒険者か。僕が住んでいた村でもたま~に見かけたが、果たしてどんな仕事をするのだろうか。
国王の娘の騎士してたら惚れられたり、魔女から子作りを要求された身だ。また何か、厄介ごとが舞い込んできそうな気がするのは果たして気のせいなのか。
32
お気に入りに追加
829
あなたにおすすめの小説
全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!
迷路を跳ぶ狐
BL
森の中の小さな領地の弱小貴族の僕は、領主の息子として生まれた。だけど両親は可愛い兄弟たちに夢中で、いつも邪魔者扱いされていた。
なんとか認められたくて、魔法や剣技、領地経営なんかも学んだけど、何が起これば全て僕が悪いと言われて、激しい折檻を受けた。
そんな家族は領地で好き放題に搾取して、領民を襲う魔物は放置。そんなことをしているうちに、悪事がバレそうになって、全ての悪評を僕に押し付けて逃げた。
それどころか、家族を逃す交換条件として領主の代わりになった男たちに、僕は毎日奴隷として働かされる日々……
暗い地下に閉じ込められては鞭で打たれ、拷問され、仕事を押し付けられる毎日を送っていたある日、僕の前に、竜が現れる。それはかつて僕が、悪事を働く竜と間違えて、背後から襲いかかった竜の王子だった。
あの時のことを思い出して、跪いて謝る僕の手を、王子は握って立たせる。そして、僕にずっと会いたかったと言い出した。え…………? なんで?
二話目まで胸糞注意。R18は保険です。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。
地球の知識で外れスキルと言われたスキルツリーはチートでした。
あに
ファンタジー
人との関係に疲れ果てた主人公(31歳)が死んでしまうと輪廻の輪から外れると言われ、別の世界の別の人物に乗り替わると言う。
乗り替わった相手は公爵の息子、ルシェール(18歳)。外れスキルと言うことで弟に殺されたばかりの身体に乗り移った。まぁ、死んだことにして俺は自由に生きてみようと思う。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
いやいやながら女にされて
ミスター愛妻
ファンタジー
ある日ある時、男、いや、元男は荒野のど真ん中に立っていた。
ただ慌ててはいない、神に出会い、色々と交渉して納得の状況だったからだ。
転生について、代わりに『お取り寄せ』という能力を授かった。
が、くだらない理由のために、次の様な事になってしまった。
彼女?は、生理周期の黄体期に母乳が出て、それから沈香(じんこう)の薫りがする『霊薬』を精製する……
そんな神との契約を結んでの転生……
その上、神様のお仕事も引き受け?させられ、お給料をいただくことにもなった。
お仕事とはこの世界に充満する、瘴気を浄化すること、更には時々『神託』を遂行すること……
最低限のお仕事をこなし、のんびりと過ごそうと……だがそうはうまくいくはずもない……
**********
カクヨムでも公開しております。
表紙はゲルダ・ヴィークナー作 若者のためのダンスドレス です。
パブリックドメインのものです。
多分R18とまではいかないと思いますが、チョットばかりエッチなので、とりあえずR18とさせていただきます。
拙作、『エーリュシオンでお取りよせ?』と同じく『お取り寄せ能力』をメインにした『さえない男シリーズ』の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる