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第17話

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 のぼせたイアをベッドまで運び、魔術で体に触れることなく服を着させる。依然として体は熱くなる一方だが、彼女が心配で隣で耐えていた。

「詳しく聞かないといけないしな……」
「んー、ぅう……?」

 唸り、少し苦しそうにゴロゴロとベッドを転がるイアだが、とうとう目を開けて僕と視線が合う。
 色々と聞きたいことがあるので、聞かせてもらうとしよう。

「おはようイア。もう大丈夫か?」
「ん……多分……。でもまだ熱い……」
「風呂でのぼせてたからな」

 かという僕も同じようなものだ。全然体は熱いし、ぶっちゃけ今この状況が非常にまずい。
 しかし事情を聞かなければ解決はできない。致し方がないことなのだ。

「イア、単刀直入に聞くぞ。料理に何を仕込んだ。さっきから僕の体がおかしいんだけど……」
「…………ぷいっ」
「そっぽを向いても無駄だ」
「うぅ……媚薬……」

 やっぱりか。精がつく料理だとしても、こんなに元気MAXにはならないだろうからな。
 ……しかし、出会ってまだ数日、会話している時間もまだ全然無いというのになぜこんなものを食べさせたのだろうか。

「なんで媚薬入りの料理を?」
「……あ、アッシュの子供欲しかったから……」
「ゲホッゲホッ!! な、なんで!?!?」

 上目遣いでモジモジとしながらそんなことを口走って、僕は思わず吹き出してむせる。今回ばかりは性欲よりも驚きが優った瞬間だった。

「アッシュが優秀な魔術師同士だとすごい子供できるって言ったから……。すごい魔術見てみたくなった……」
「そ、それは確かに……僕らの子供だったらとんでもない魔術師生まれそうだけど。順序ってもんがあるでしょ」
「……ごめんなさい……」

 まぁ僕も一時期考えたことがあったけどなぁ。けど、時間だけがたくさんあったから自分で作る楽しみのほうが強かった。
 イアもとい、人間の命は限られているし、急いでことを進めてしまうのは仕方がないことなのかもしれない。

「んで? 媚薬とかの効果はどうなるんだ? 依然として熱いけど。……うーん、イアも僕と同じくらいの体温か」

 イアと自分のおでこを触って確認したが、同じくらいだろうか。
 ……いや、待て。なんか急激にイアの体温が高くなっている……!?

 イアの方に顔を向けると、口を押さえて必死に声が出ないように我慢し、体が小刻みに痙攣していた。

「ど、どうしたんだ!?」
「さ、触ったからっ……♡」

 これはだいぶまずい。イアの限界が近いのかもしれないな。かという僕もそろそろ本気でやばいから対処しないと。

「イ、イア、入れた媚薬はどこにある」
「き……キッチン……」

 僕は中腰になりながらもキッチンに移動し、件の媚薬を探した。そこにはわかりやすく桃色のオーラを放つ空の瓶を見つけた。
 これを【究極鑑定】という、あらゆるものを事細かく鑑定できる魔術で詳細を見る。そして対処を見つけ出すのだ。

 △ △ △

 ◾︎超ウルトラハイパーアルティメット媚薬
 (製造者:イア)

・あらゆる生物を0.1mlで発情状態にできる、魔術を極めたる魔女が製造した媚薬。
・どんな解呪魔術やエリクサーでさえ発情状態を解くことは不可能。
・過剰摂取をした場合は心臓麻痺か、生殖器が爆発して死ぬ。耐えれる者でさえ、6時間以内に性行為をしなければ死に至る。

 ▽ ▽ ▽

 なんッッてもん作ってんだイアのやつ!!! 名前は馬鹿丸出しだが効果がえげつなさすぎるだろ!
 心臓潰されても生きられる僕はどうせ死なないだろうが、イアは違うだろう。なんとかせねば……。

 とりあえずこの情報をイアに伝えるべく、ベッドにいるイアにこのことを伝えた。

「と、いうことでだな。コレコレがアレアレというわけだ」
「ん……なるほど……。…………」

 あらかた媚薬の効果について説明をした。すると下をうつむき、何か考え込んでいる様子だった。
 二人で協力したらなんとかなるかもしれない。どちらも今の状態で作業をするのは酷なものだがやるしかないだろう。

「イア、ここは僕らで協力をし、て――」

 ――グイッ。

 イアに僕の腕を掴まれ、そのまま引っ張られる。まるで食獣植物の蔦が獲物を引きずりこむようなそんな感覚だった。
 ベッドに引きずり込まれ、イアから発せられているであろう良い匂いもとい、フェロモンが嫌でも嗅いでしまっている。

「ねぇアッシュ……。もう、仕方ないんじゃないかな……♡」

 僕を下にし、覆いかぶさるような形になっている。ふー、ふーと息を切らし、翡翠色の目がハートマークになっている。
 も、もう限界だったのかイア……! だが僕はまだ……まだ耐えるぞっ!

「だ、ダメだ……! まだ会って間もない関係だし、僕は何万年と生きてるクソジジイだよ!?」
「関係ない。どれだけ年がいってようと、あの時の試合で見たあなたが今まで見た男の中で一番だった。好きだったら、いいんでしょ?♡」
「く……っ!!!」

 シエルお嬢様助けてっ! この子とヤっちゃいそう!
 魔術では互角。だが体つきや体術は僕の方が上だ。どかそうと思えばどかせられる……はずだった。自分の意思とは違い、体はイアを求めてしまっているのだ。だから言うことを聞かない。

 なんとか策を考えるが、とうとうイアは終わりを告げた。

「ねぇアッシュ……――♡」

 ――プチッ。

 瞬間、自分の中で何かが切れた音がした。理性という名の本能を押さえつける鎖だろうか。それにしては随分ちゃちい音だった気がする。
 その後のことはまぁ……想像に任せるとしよう。

 ――ベッドの乱・イアの勝利。
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