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ものかき
しおりを挟む物書きの世界。
世界は破壊されたのだ。
物質としての世界は、ね。
核戦争によって、この惑星はダメになってしまった。
が、神様が慈悲をおくれになったのである。
人類一人一人に、妄想を作り出す空間を授けてくれたのだ。
たとえば・・そうだな。これから女の子がバナナを食べるという物語を書くことにしよう。
ーー
「あっばななだ」
女の子はバナナを手に取った。
薫芳醇な香り。思わずむしゃぶりつきたくなるその欲求。彼女はその欲求に身を任せ、そのスウィーツにも劣らない果実を貪り食う!!
「おいすい」
終
ーー
そう、それによって、確かにこの妄想の空間に、女の子がバナナを食べるという現象が起きた。
しかし、物語には終わりがある。終わった瞬間、彼女たちは消滅した。
無論、続編を書けば、彼女は存在し続けるだろう。しかし、実際にはそれはなく、彼女はその週秒間、この妄想空間に存在しただけで終わるだけの生命体だった。
いや、そもそも生命体と言えるのだろうか? それを認識しているのは、物書き本人以外にはいない。いや、いるにはいるが、それは天使と呼ばれる、物書きのサポート役だ。それすらも僕の妄想かもしれないのである。
天使は、まず初めに行った。
「ははは、終わったなぁ人類。なあ終わったなぁ」
「は?」
最初は、何のことかわからなかった。
だが、彼、嫌彼女の言うことには、全て論理的で筋が通っていた。というか、まあ現実に照らし合わせてみればだが。
まあ、ここでいう現実というのは、物質、という意味ではなく、目に見えるものという意味での現実だが。それすらも妄想ではないという確証は・・いや、これはもういい。
とにかく、天使は、要約するとこういった。
「人類が核戦争で惑星をダメにした愚かさに、かみさまは慈悲を与えたんだよ。お前らに妄想を実現する力をやる。ただし、他の人に会うことはできない。会いたければ、自分の妄想の中で似たような人物を描けばいい。」
「描く?というか、ここはどこだ?」
「それはお前が決めることだ。ほら、そこに紙とペンがあるだろう。そこにここがどこなのか、お前が誰なのかを描けばいい」
「はぁ・・」
とりえあず、言われたとおりに描く。
「えっと、俺は・・俺はいったい」
「適当に、イケメンなり、美少女なり、天才なり、主人公成り、なんでもいいんじゃねぇか?」
「・・・いや、違う」
「違う?」
「俺はただの凡人だ」
「ふーん?じゃあそう描けばいい。何度でも書き直しできるからな」
言われたとおりにすると、自分が現れた。いや、今気が付いたが、意識が戻ってからいままで自分の体が無かったことに気が付いた。新しく表れた僕は、平凡で、どこにでもいるような姿をしていた。
「で、ここはどこか、か」
「ああ、スラム街でも、天国でも、SF世界でもファンタジー世界でも、何でも好きなものを掻きやがれ」
「ここは・・そう、ただの平凡な住宅街だ」
「つまらないな・・」
と言ってもそれ以外に思い浮かばない。そうだ。そこは自分がかつて生きていたところだった。
しかしそこは・・あまりにも静かだ。
道には人が行きかい、道路には車が行きかっているが、何故かその運転手には何の魂も感じなかったのだ。
このまま放置していれば、彼らは何万年でもそれを繰り返すだろう。そう言った確信があった。
不安になって僕は言う。
「そして、、これから何が起こるんだ?」
「何が起こると思う?お前が書かないと、この世界は永久にこのままだぜ」
「・・なら、僕はこのもまでいい。何も起きずにただ平穏な日常を・・」
「そうだな。それでもいい。だが、、何億年、何兆年もそれを続けるつもりか?
「何を言っているんだ?何億年も生きられるわけ・・」
「寿命ってなんであると思う?次の世代に席を譲るためだ。だがこの世界にはお前ひとりしかいない。
お前が死んだら終わりの世界で、死ねると思うのか?」
「・・そんなの詭弁だろう」
「かもしれないな。お前がそう設定するのならば」
そうだ。日常を僕は取り戻す。
だが、本当にこのまま日常が続くのなら、、僕はどこへ行けばいいのだろうか?
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