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ミーム
しおりを挟む四角い箱が、世界を漂っていた。
それは、実体のない箱。
妄想の箱。ただ人がそれがあると思ったからあり、そして忘れ去られれば消える、ただの箱だ。
それが無数に、無限ともいえる数を漂っていた。
中には、映像がある。それは、一つずつ異なる。無論本物ではない。妄想ゆえに中の者も妄想。
それは当然。
ある箱の中には、『政治は間違っている!』と書かれている。
別の中には、『最近の若者は・・』
また別の中には、『肉食反対!!』『宗教反対!!』『ヴィーガンうざい』『学校行きたくない』『童貞うざい』『彼女ほしい』『セックスしたい』『結婚したい』・・などなど。無数の妄想が入っていた。
そして、その中の一つ、『最近の若者は・・』が、あるサラリーマンの頭の中に入っていった。
すると、彼は、ふと、通りすがりの学生を見て、『最近の若者は元気がなさすぎる!私の若いころはもっと。。』と思った。
また、『彼氏ほしい』が、ある女子学生の頭に入ると、『彼氏ほしいなぁ・・』と思った。
また、別の者は、『神に逆らうとどうなる・・?』。別のものは・・『死にたい』、別の者は、、それぞれの妄想を得た。
箱は、人に影響を与えない。何故なら、箱とは妄想にすぎないからだ。
人は誰にもなれない。何故ならここは、誰かが作り出した物語ではないからだ。
全員、顔を持たぬ化物なのだ。
故に、人は誰かになりたがる。インスタントに、手軽に、物語の人物になりたいという欲望を持っているのだ。
箱は、その手助けをしているに過ぎない。ゆえに、箱は世界を支配しているのだ。
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