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第1章 勇者ライオネル・ブラッド

第6話 帰還

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「勇者ライオネル・ブラッドに大勇者の称号を授ける」

 国王サイオク・ルイスがひざまずくライオネルにこう言い渡す。

「ありがたき幸せ」

 ライオネルは国王に深々と頭を下げた。

 魔王の城から国に帰ってきたライオネルは国民から大いに祝福された。

 国、いや世界を滅ぼしかねない力を持つ魔王から国民を守った勇者は帰ってくるや否や国王に城へと呼ばれ、あれやこれやという内に今の状態になっていた。

「ライオネル、今晩はこの城で祝福のパーティーを開くことにした。ぜひ出席してくれ」

 国王の頼みには流石のライオネルも断れず、ハイと答える以外声は出なかった。

 パーティーには国王から他国の王、重役たちが集まり、大いに盛りあがった。

 ライオネルにとってパーティーで飲む酒など水に等しく、全く酔わないまま家路に就こうとしていた。

 帰り道、未だ国民が勝利の宴をしている中で聞きなれた声がした。

「おい、ライオネル!」

「あ?誰だ?」

「こっちだ、俺だよ、俺。ガロア!こっち来いよ!」

 後ろを向くと、一人の男の姿がこっちを向いていた。

「おい、ガロアか?」

 ガロアとはライオネルが軍隊長を務めていた軍の副隊長だった男で、古くからの友人だった。

 ガロアに呼ばれるまま店に入ると大勢がまだ飲んでいた。

「ちょうどいいところに呼んでくれたよ、ガロア。城のパーティーの酒では酔いきれなくてな」

「そうだろ。まぁ、飲めよ。今日は俺のおごりだ。なんたって世界を救った勇者、いや大勇者様なんだものな」

「大袈裟だ。脳筋の俺にはこんなことしかできない。お前ほどの頭はねーよ」

「また、お前は謙虚だなぁ。
ところで、魔王ってやつはどんなやつだったんだ?
実際、戦ったんだろ?」

「まぁー、いいやつ?かな?」

 疑問系にならざるおえない質問だった。

「いいやつ?魔王が?もう酔ってるんじゃないか?ライオネル?この国や世界を滅ぼすと言われる魔王だぞ?」

「確かになー。でも、戦ってみるとあいつも一人の人間であり、一つの生命体なんだよ。アッチ側からしたら俺こそが魔王そのものじゃないのか、なんて考えるんだ」

 酒が入るといつも以上に饒舌になってしまうのはライオネルの唯一の弱点かもしれない。

 その晩は、昔話から軍隊に所属していた頃までの話をガロアと語り尽くした。


「ハッ、ハクション!」

  国に帰った初朝は最悪だった。

  酒を飲んでそのまま店で寝てしまったらしい。
 
 ガロアは…いない。

 勝手に帰ったのか。

 俺も帰るか。

 妻も待ってることだし。

 家に着くとやはり懐かしさがあった。

 寝ているだろうからドアを静かに開け、二人の寝室に向かった。

「あいつはまだ帰らないから大丈夫だって」

 ん?誰の声だ?家を間違えたか?いや、そんなはずはない。もう酔いは覚めた。

「でも、バレたらあなたも私もどうなるか」

 次に聞こえたのは妻の声。

「あいつの酒の中に睡眠薬たんまり入れといたから昼頃まで寝込んでるよ、絶対」

 この声は…ガロア。

 そういうことか。

 俺が遠征に出ている間に…

 ライオネルは静かに音も立てず家を去った。

 
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