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天高く陰謀巡る秋
旦那様と団欒
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「で、悩んだ末にカレーです」
ずずいっと旦那様の目の前に差し出します。
いやぁ、「麻帆佳の得意な料理」というリクエストが来て、いったい何を作れと? となるわけですよ。得意な料理なんてありませんし、いつもあり合わせで作るだけですし。
「カレーが得意というわけではないの?」
「違います」
得意料理なんてないです。冷蔵庫を見て、家出前に拵えたカレールウがあったので、使ったまでです。確か旦那様の好みに合わせていたと思ったのですが。
今回食べていただければ、また分かるでしょうし。
「それって、得意料理って言わないよね」
「得意料理なんてありませんもん」
昔なら、「お味噌汁!」とか言ったでしょうが。千夏のお母さんに教えてもらってから、得意料理というものが消えましたよ。
「……それってどうなの」
「そんなものだと思います」
だって、ねぇ。毎日作ってたら「これ得意です」なんて言えないわけで。だから、リクエストを取るわけですよ。作ったことがないやつは、とりあえず千夏のお母さんあたりに聞いて、それでも駄目ならネットです。で、改良を加えていきます。
「気が長くなる作業だね」
「作ったことがない料理なんてそんなもんですよ」
カレーはカレールウを買わなきゃ作れないと思っていたのが懐かしいです。
「その時点で得意料理と言ってもいいと思うけど」
どうなんでしょうね。よく分かりませんが。
「つまみ食いした高部が言ってたけど、麻帆佳は出汁から取ってるって?」
「本格的な出汁じゃないですよ。手抜き出汁です」
「でも、市販されている顆粒だしではないでしょ」
よく分かりましたね。一応、顆粒だしも顆粒コンソメも買ってあるんですが。
「そのあたりも、高部がね。あいつ料理するから」
「え!?」
ちょっと意外です。まぁ、私は水出しで出汁とりしてますから。
「……あれか」
どうやら間違って飲んだことがあるようです。家出前に片づけるのを忘れてました。
「なので、手抜きです。沸騰前にとかはあまりやらないですよ」
お味噌汁作るときにも使ってます。小母さんの知恵です。どうやらその情報、高部さんに流すみたいです。
「数少ない男性育児休暇取得者だからね」
あらま。育メンとかいうやつでしたか。そうは見えませんでしたが。
「そういうお話なら、小母さんが詳しいですよ。克人さんあたりに話を振るといいと思います」
「ありがとう」
……それにしても、どうして私の得意料理を食べたいなんて言い出したのでしょう。
犯人は明日さんでした。旦那様に「麻帆佳ちゃんの得意料理も知らないなんて! 私は知ってるけど」とおっしゃったそうで……。明日さんいい性格してます。結婚後、喫茶店に来た時聞いたのはそのためでしたか。その時「得意料理はないです」って答えたはずですよ。
「ぬ~く~い~~!!」
「さすがに、見かけない食材を使った料理は苦手ですけど」
俗にいう「海外の」郷土料理というやつです。うん、アヒルとか、孵化前卵とか無理です!
「……ああ、うん。昔出張先で出されたよ」
おおう。食べたんですか!
「いや、無理だった」
ぽつりと旦那様が呟きました。
そんな会話をしながら、久しぶりに二人で食事です。あの手紙のあたりから、一緒に食事取るのも避けてましたし。
「やっぱり、麻帆佳と二人で食べる食事が一番美味しい」
ななななな……なんつうことを言いやがりますか、しかもしれっと! こっちが恥ずかしいですよ!!
「毎日こうやって、夜だけでもいいから麻帆佳と色々話をしながら、麻帆佳の手料理が食べたい」
ううううう。顔が真っ赤になってるのが自分でも分かりますよ。旦那様の顔はまったく変わってませんけど!
「あ、でもっ! バイトの日は無理です!」
賄いがありますから。
「賄いを食べないで帰ってくるという選択肢は……」
「ないです」
あ、思わずきっぱり言っちゃいました。だって、賄い込みのバイトですよ。それにかなり美味しいですし。
「分かった。麻帆佳がバイトの日はなるべくあそこの店で私も食事をとる」
えぇぇぇぇ!? なんでそうなるんですかぁぁぁ。
「大丈夫、店には迷惑かけないから」
……十分迷惑だと思います。
それをきっちりと実行に移した旦那様。気が付けばバイト先でも商談とかしているのを見かけることになりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
旦那様とほのぼのの回でした。
麻「……そういえば、旦那様の好きな食べ物は」
龍「麻帆佳の手料理(どや顔)」
麻「(そういう意味じゃなかったんだけどなぁ……)では、嫌いな食べ」
龍「麻帆佳と一緒に食べれない食事」
……いや、それ、食べ物じゃないですから。
龍「なんかね、麻帆佳と一緒に食事をとるようになったら、麻帆佳がいないと食べ物の味がしなくなった。麻帆佳が作ってくれたものだと、美味しく感じるんだけど、他のは無理」
それってどうなの!?
麻「明日は旬のものを使った料理を作りますね!!(焦りまくり)」
龍「楽しみにしてるよ。今が旬だと何?」
麻「実りの秋ですしねぇ。商店街で見繕って買います」
龍「買い物付き合うよ(ご機嫌)」
麻「旦那様! 明日はお仕事です。無理です」
龍「ちっ」
舌打ちしやがったよ!!
という会話がなされたとかww
旦那様は現在、麻帆佳と距離を縮めるべく奮闘中です。
明日さんと、旦那様の会話は、旦那様視点で書きます。いい感じで嫌がらせになっておりまする。
麻帆佳、餌付けミッションクリア!!←違うww
ずずいっと旦那様の目の前に差し出します。
いやぁ、「麻帆佳の得意な料理」というリクエストが来て、いったい何を作れと? となるわけですよ。得意な料理なんてありませんし、いつもあり合わせで作るだけですし。
「カレーが得意というわけではないの?」
「違います」
得意料理なんてないです。冷蔵庫を見て、家出前に拵えたカレールウがあったので、使ったまでです。確か旦那様の好みに合わせていたと思ったのですが。
今回食べていただければ、また分かるでしょうし。
「それって、得意料理って言わないよね」
「得意料理なんてありませんもん」
昔なら、「お味噌汁!」とか言ったでしょうが。千夏のお母さんに教えてもらってから、得意料理というものが消えましたよ。
「……それってどうなの」
「そんなものだと思います」
だって、ねぇ。毎日作ってたら「これ得意です」なんて言えないわけで。だから、リクエストを取るわけですよ。作ったことがないやつは、とりあえず千夏のお母さんあたりに聞いて、それでも駄目ならネットです。で、改良を加えていきます。
「気が長くなる作業だね」
「作ったことがない料理なんてそんなもんですよ」
カレーはカレールウを買わなきゃ作れないと思っていたのが懐かしいです。
「その時点で得意料理と言ってもいいと思うけど」
どうなんでしょうね。よく分かりませんが。
「つまみ食いした高部が言ってたけど、麻帆佳は出汁から取ってるって?」
「本格的な出汁じゃないですよ。手抜き出汁です」
「でも、市販されている顆粒だしではないでしょ」
よく分かりましたね。一応、顆粒だしも顆粒コンソメも買ってあるんですが。
「そのあたりも、高部がね。あいつ料理するから」
「え!?」
ちょっと意外です。まぁ、私は水出しで出汁とりしてますから。
「……あれか」
どうやら間違って飲んだことがあるようです。家出前に片づけるのを忘れてました。
「なので、手抜きです。沸騰前にとかはあまりやらないですよ」
お味噌汁作るときにも使ってます。小母さんの知恵です。どうやらその情報、高部さんに流すみたいです。
「数少ない男性育児休暇取得者だからね」
あらま。育メンとかいうやつでしたか。そうは見えませんでしたが。
「そういうお話なら、小母さんが詳しいですよ。克人さんあたりに話を振るといいと思います」
「ありがとう」
……それにしても、どうして私の得意料理を食べたいなんて言い出したのでしょう。
犯人は明日さんでした。旦那様に「麻帆佳ちゃんの得意料理も知らないなんて! 私は知ってるけど」とおっしゃったそうで……。明日さんいい性格してます。結婚後、喫茶店に来た時聞いたのはそのためでしたか。その時「得意料理はないです」って答えたはずですよ。
「ぬ~く~い~~!!」
「さすがに、見かけない食材を使った料理は苦手ですけど」
俗にいう「海外の」郷土料理というやつです。うん、アヒルとか、孵化前卵とか無理です!
「……ああ、うん。昔出張先で出されたよ」
おおう。食べたんですか!
「いや、無理だった」
ぽつりと旦那様が呟きました。
そんな会話をしながら、久しぶりに二人で食事です。あの手紙のあたりから、一緒に食事取るのも避けてましたし。
「やっぱり、麻帆佳と二人で食べる食事が一番美味しい」
ななななな……なんつうことを言いやがりますか、しかもしれっと! こっちが恥ずかしいですよ!!
「毎日こうやって、夜だけでもいいから麻帆佳と色々話をしながら、麻帆佳の手料理が食べたい」
ううううう。顔が真っ赤になってるのが自分でも分かりますよ。旦那様の顔はまったく変わってませんけど!
「あ、でもっ! バイトの日は無理です!」
賄いがありますから。
「賄いを食べないで帰ってくるという選択肢は……」
「ないです」
あ、思わずきっぱり言っちゃいました。だって、賄い込みのバイトですよ。それにかなり美味しいですし。
「分かった。麻帆佳がバイトの日はなるべくあそこの店で私も食事をとる」
えぇぇぇぇ!? なんでそうなるんですかぁぁぁ。
「大丈夫、店には迷惑かけないから」
……十分迷惑だと思います。
それをきっちりと実行に移した旦那様。気が付けばバイト先でも商談とかしているのを見かけることになりました。
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旦那様とほのぼのの回でした。
麻「……そういえば、旦那様の好きな食べ物は」
龍「麻帆佳の手料理(どや顔)」
麻「(そういう意味じゃなかったんだけどなぁ……)では、嫌いな食べ」
龍「麻帆佳と一緒に食べれない食事」
……いや、それ、食べ物じゃないですから。
龍「なんかね、麻帆佳と一緒に食事をとるようになったら、麻帆佳がいないと食べ物の味がしなくなった。麻帆佳が作ってくれたものだと、美味しく感じるんだけど、他のは無理」
それってどうなの!?
麻「明日は旬のものを使った料理を作りますね!!(焦りまくり)」
龍「楽しみにしてるよ。今が旬だと何?」
麻「実りの秋ですしねぇ。商店街で見繕って買います」
龍「買い物付き合うよ(ご機嫌)」
麻「旦那様! 明日はお仕事です。無理です」
龍「ちっ」
舌打ちしやがったよ!!
という会話がなされたとかww
旦那様は現在、麻帆佳と距離を縮めるべく奮闘中です。
明日さんと、旦那様の会話は、旦那様視点で書きます。いい感じで嫌がらせになっておりまする。
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