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天高く陰謀巡る秋

麻帆佳のライフは0です

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 現在、私は旦那様に抱きかかえられております。
 腕、ですか? まだネクタイで縛られたままですが何か。お姫様抱っこだと色々と不都合があった為、断念したようです。どうせなら、抱きかかえるのを断念したうえで、ネクタイ外していただけると助かったのですが。

 そして、靴をください。
「……おい」
 高部さん、言ってやってください!!
「あのなぁ、お前にこういう趣味があると思われたらどうするんだ?」
 そっちですか!?
「麻帆佳限定でしていると言えばいいだけ」
 そういう問題じゃありません!!
 突っ込みを入れたいのはやまやまなんですが、無理です。もう、いろいろとぐったりしております。

 しかもそのまま本当に部屋でるし! 恥ずかしくて顔を隠すしかないじゃないですか!!
「腕、拘束したままの理由聞いていい?」
「もちろん、麻帆佳が逃げないため」
 明日さんの呆れがちな問いにも、あっさりと旦那様はお答えなさるわけで。……あのですね。このフロアにいる方々が聞いてらっしゃると思うのですが。
「で、いつまでこのままでいるつもりで?」
「もちろん、車に乗るまで」
 車に乗ったら膝の上。あっさりとのたまいやがりました。

 そして、その言葉に周囲がざわついております。一体何人の方がいらっしゃるのでしょうか。

 エレベーターの前でばったり出くわしたお義父様とお義兄様には呆れられました。
「お前な。今どういう状況か分かってんの?」
 あ、この声はお義兄様。
「もちろん。別れるように言ったやつの背後・・くらいわかっている」
「その上でかよ」
「私はあの人の・・・・言いなりにはこれ以上なるつもりはないので」
「そこまで言うなら、何も言わん。ただ、若菜の逆鱗に触れそうな気が」
「その時はその時。麻帆佳が逃げないようにしただけと、弁明するから」
「もう逃げませんからっ! 降ろしたうえで、外してくださいっ!!」
「兄さん、父さん。聞いた? 麻帆佳は私から・・・もう逃げないって。母さんとお義姉さんに伝えておいて。子供は授かりものだけど誠心誠意努力するから」
 そういう意味じゃなぁぁあぁい!!
「……車に乗るまで、そのままにしといたほうがよさそうだな。多分脱兎のごとくいなくなりそう」
 お義兄様! なんてことをおっしゃるんですか!! 私靴はいてないんですよ!? そして今エレベーターの中! 逃げれませんからっ!!
「うん。部屋につくまで離さない」
「……一緒の車は勘弁だな。胸やけしそうだ」
 それは旦那様のせいですぅぅぅ。


 結局、終始ご機嫌な旦那様に抱っこされたまま車に乗り、車から降ろされ、コンシェルジュと恵真さんの驚きの声で出迎えられました。

 うぅぅぅぅ。恥ずかしいぃぃぃ。
「千夏様のお宅に行きまして、麻帆佳奥様の荷物を持ってまいります」
「頼んだ。それから、買い物も」
「かしこまりました」
 えぇぇぇ。恵真さんもうお出かけですか。この状況を何とかする方法を教えてください!
「麻帆佳奥様。自業自得でございます」
 私の自業自得ですか。……そうですね。話し合いしなかったと言えばそうですし、嫌がらせの一件はほとんど旦那様に言ってませんし。
 でも、これはないです。
「嫌がらせ? 手紙以外で?」
「……手紙のことですよ」
 そういう事にしておきましょう。面倒なので。おそらく、あの人たちが原因でしょうし。
「あとでじっくり話を聞かせてくださいね」
 ……過保護になってやしませんか? 旦那様。
水速の家にいたことを考えれば可愛いんですよ。予想より早くあの家を出れましたので、天国です。
 そんなことを想っているうちに、部屋の前に到着しました。


 その時、私は知らなかったのです。旦那様のお仕置きがまだ済んでいないなんて。
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