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天高く陰謀巡る秋

突撃×2

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 恵真さんはコンシェルジュに走っており、気が付くと私一人です。

 ……自分で何とかしろってことですね。了解です。

 こちらに来た女性は、おなかが大きくなければ、おそらくボンキュッボンなお方なのかなと思います。そして美女です! 妖艶な美女ですよ! メイクなし、整形なしならば。
「あなたが龍雅さんの『自称』奥さん?」
 ……いつから「自称」奥さんになったのでしょうか。あぁ、あれですね。きっと婚姻届けにサインだけして出していないという。
 うん。了解しました。
「話あるんだけど」
 はいはい、聞きますよ。


 そんなわけで同じマンションの建物内にある喫茶店へ。
 話が厄介そうなので、目立たぬ奥のほうを目指しました。
「コーヒー」
 ……ん? 妊婦さんっぽいのですが、いいのでしょうか。どなたかにあとで聞きましょう。ちなみに私はここのハーブティが好きです。
「あなた、龍雅さんの押しかけて無理やり籍を入れるよう頼み込んだんですってね」
 ほうほう。そんなことになってましたか。
「否定しないってことは事実ね。で、私のお腹には龍雅さんの赤ちゃんがいるの。別れて頂戴」
「つかぬことをお伺いしますが、何か月目ですか?」
「あなたに関係ないでしょ」
「もう一つお聞きしますが、私に何度か連絡くださいました?」
「したわよ。龍雅さんから電話番号聞いて」
 ほうほう。あまり広めるなとか言っときながら、旦那様が言っちゃいましたか。
「連絡つかないから、あなたが我侭言って龍雅さんにおねだり・・・・したマンションまで来たの」
 いや、我侭言わせてもらえるなら、もっと古くて小さいアパートがよかったです。……どうせ、信じて貰えないでしょうけど。
 そんなことよりも。
「どうやって住所をご存知に?」
「馬鹿にしてるの? 龍雅さんが教えてくれたにきまってるでしょ。自分じゃ埒が明かないから、って」
 なんかおかしいですね。
「じゃあ、ここに来るの今回が初めてなんですね」
「どういう意味よ」
「いえ、ここのところ色々酷いのでストーカーの相談に弁護士さんと一緒に警察行く予定を立ててるものですから」
「あなたが怨み買ってるだけでしょ」
 ……手紙の主とは違う人物でしょうか。困りましたね。
「あ、旦那様はほかにも女性がいるようですが、それはご存じで?」
「旦那様って呼ぶ人間もあなたにはいるのね」
「はい。先ほどから話に出ている方ですが」
 がちゃん。女性がカップを落としました。……ふむ、どうやら別の方ですね。
「というわけですから、そのあたりは旦那様に直接交渉してください。直接交渉の上、旦那様が離婚届持ってきたら喜んでサインしますから」

 驚いた顔で、女性が帰っていきます。うん、言いたいこと言った。あとは旦那様次第ですね。


 そしてまた別の日、違う美女が来ました。

「手紙出したのにしたたかね」
 あ、お手紙の主さんでしたか。わざわざありがとうございます。
「あんた、いい加減離れなさいよ!! あんたが解放しないから龍雅さんが困ってるんでしょ!!」
 おおう、公衆面前で言っちゃいますか。コンシェルジュの方々も恵真さんもあきれてますよ。
「えっと、つかぬ事をお伺いしますが」
「そんな前書き要らないわよ!!」
 ……ん? こちらもなんか違和感が。
「えっとですね、旦那様と出張と称した旅行・・に行かれたりしてる方ですか?」
「当り前じゃない! あたしはあの方の秘書だもの。どんな出張にも着いてくわ。もちろん夜のお供もしてるし」
 うっわぁ。ドン引きですよ。そんなことここで言っちゃいますか。
「ということは、旦那様の出張に一緒に行ってついでに二人でイチャコラしてると」
「分かってるじゃない。誰もいなければ専務室でも激しくしてくれるわ」
 うん。この方にも引きますが、旦那様にも引きます。職場で何やらかしてるんですか!!
「えとですね、妊娠しているというほかの女性いらっしゃるようですが、ご存じで?」
「知ってるわ。あの人は妄想癖があるの。妄想妊娠って知ってるでしょ」
 あ、その女性ご存知でしたか。
「それか、龍雅様があたしを抱いてるのを見て興奮して、他の男に抱かれて妊娠したんでしょ」
 ほうほう。いつなさってるんでしょうねぇ。

 聞かなくても教えてくれました。
 会議の始まる前にいきなりれてきたりとか、時間を惜しんでするそうです。

 やっぱり離婚一直線ですね。録音しとけばよかったです。

 旦那様が次ぎ来る時までに離婚届準備しておきましょうか。水速家のことなんざ、知ったことではないですし。

 最低一年暮らせるお金があればいいんです。


 自分では冷静に判断したつもりでしたが、翌日学校で二人に問いただされました。
「あんた、ちょい待ち。水速なんてどうでもいいけど、少し冷静になったほうがいい。何ならうち来な」
 千夏がすぐさま言ってくれました。
「うん。動揺しまくり。二回続けて別の人に突撃食らったんだから仕方ないよね。ってか、まず、本当に女性秘書がいるかどうかを確認すべきじゃない?」
 する必要ないですよ、花音。仕事中にそんなことをするような方はご免こうむりますから。


「……麻帆佳、だいぶ懐いてきてたからね。かなりショックを受けてるみたい」
「うむ。あたしも兄貴に報告しとくわ。おそらくどっかから、秘書の人員を聞いてくるだろうし」
 そんなことを二人が話していたとも知らず、私は失敗したお弁当をひたすら食べてました。
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