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彼と彼女の秘密
お坊ちゃまって誰のことですか?
しおりを挟む何をとち狂ったと美冬は思った。何故、電話に出る前に酒をあおるのか。
「無理。酒呑んだから」
桐生が相手に向かって放った言葉を聞いて、これが目的かとやっと悟った。
「あ゛? 勘弁して。……分かった。戻るから」
心底嫌そうに桐生が呟いていた。
「……ごめん。明日までこの部屋で一緒にいるつもりだだったけど、戻らなきゃいけなくなった。チェックアウトは明日の十一時だから、それまで自由にしてていいよ」
お金も支払っていくから。そう桐生が言うものの、美冬は一人でこの部屋にいるつもりはない。
「私も帰ります」
こんなところに一人でいるつもりはない。それに今から帰れば、正月限定の酒が飲めるかもしれない。
……が、それが間違いだったと気付くのは、ホテルを出るときだった。
「お迎えにあがりました」
そう言ってきたのは、初老の男だった。
「着信あってから、時間そんなに経ってないぞ?」
「大旦那様のご指示です」
大旦那様!? ということは、桐生はどこかのお坊ちゃまなんだろうか、そんな不躾なことを美冬は思った。
「お連れ様も出来ればご一緒にとのことです」
「俺、誰と出かけるか言ってないぞ」
出かけると言ってきたとか、そんなものは関係ない。とりあえず、屋台で買ったものは残さなかったし、どうやらそれなりに駅も近いようだ。ならば、姉か兄に自宅最寄り駅まで迎えにきてもらえばいいことだ。
「美冬!?」
帰ると言ったら、桐生に驚かれた。
「だって、桐生さん。お酒呑んでしまってますよね? 車運転できないじゃないですか。だったら、電車で帰ります」
「ちょっと待って! せめて駅まで送らせて」
相手をぎろりと睨んだあと、桐生が美冬に言い募った。
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