2 / 2
後編
しおりを挟む「新奈、気が付いた?」
意識が戻った時、目の前にいたのは高藤だった。
「スタンガン痛かったね。跡になっていたよ」
「……あ」
「無理に話さなくてもいいから」
「こ……こ」
「俺の家だよ」
「し……ご、と」
「倒産させた。元から新奈を助けるために作った会社だ。鼠が入り込んだ会社に用はない」
一緒に仕事してた人たちに別の意味で迷惑をかけた、新奈の自己嫌悪に高藤が気づいたのだろう、唇に笑みを浮かべていた。
「本当の従業員なんてあの女と、もう一人くらいだ。二人とも新奈を裏切ったんだから、当然だろう? 他は俺が指示して色々動いていたから問題ない」
やっと回りだした頭で、いつの間にか呼び捨てにされているという事実と、衣一枚羽織っていない自分の姿に驚いた。
「新奈の身体は奇麗だ。あいつらも馬鹿だよね。新奈を大切にしていたら、大切にする人のところに嫁に出していれば、俺は動かなかったのに」
「……え?」
「ずっと見ていたんだよ。でもね、手に入れちゃいけないと思って我慢していた。……あいつも周囲の甘言に踊らされなければよかったのに」
胸元に高藤が顔を埋める。そしてピリッと甘い痛みが身体中に走った。
「綺麗に跡が付いた。ずっとこうやって新奈に俺の印をつけたかった。新奈をドロドロに甘やかして、俺のもので染めて、俺が選んだものですべてを包みたかった」
「た、か、……と」
確か、新奈があの人と付き合っていた頃、高藤は結婚していたはずだ。
「あぁ、とうの昔に離婚したよ。だって、新奈が幸せになる条件で、あの女と結婚したんだ。……それなのに、あいつと一緒になって新奈を苦しめた。それだけでも十分離婚案件なのに、今回の新奈の結婚先。俺が我慢する必要なんてどこにもない」
だからね、と高藤は怪しく微笑む。
「もう、新奈を手放さない。あいつを想っていてもいい。誰が好きでもいい。俺の傍にいて」
「……は、い」
頷いた新奈に気をよくした高藤が、優しく抱きしめてきた。
起き上がれるようになり、首輪が付いていることに気づいた。
「それは新奈がここから出られないようにするものだよ。新奈が窓や扉に近づけば自動で鍵がかかる。どうやって開けても、ね。行けるのはそこのキッチンと、トイレ、それからバスルームだけ。
そうやって置けばあいつらが来たとしても、新奈は連れていけないからね」
それ以前に、新奈がまとえる服というのが一切ない。その状態でどうしろというのか。
「やっと手に入れたんだ。手離してなるものか」
ベッドからひょいと持ち上げ、バスルームへと連れて行かれた。
「……あっ……た、か……さん」
俺が洗いたい。その一言で新奈の腕は拘束され、高藤の手が身体中を優しくまさぐっていく。
「この先、『高藤』なんて呼ばれても返事はしない。俺の名前知ってるでしょう?」
そう言うなり、くいっと足を広げ、蜜口の上にある小さな突起にシャワーを強く当てていく。
「あっ……あぁぁぁ!! たか……とうさんっ」
絶頂でおかしくなる寸前、そのシャワーは離れた。
そのあとも、達する前に止めるという状態を何度も続ける高藤。
「あぁぁっ!! 傑さんっ!!」
「やっと呼んだね、新奈。思う存分いかせてあげる」
高藤のそれが新奈の蜜壺へと侵入してく。久しぶりの感覚に、新奈はあっという間に快楽の波に飲み込まれた。
快楽の波で気を失った新奈を、傑は優しく抱きしめた。
初めて会った時から特別な存在、それが新奈である。
新奈の母は、高藤家でお手伝いとして働いていた。そんな女性に気まぐれで傑の父親が手を出した。そして産まれたのが、新奈である。
妊娠に最初に気づいたのは、傑で。堕胎できないように策を巡らせた。
傑が何かに執着することに喜びを見出した、傑の母親が加担した。そして産まれたのが、新奈である。名づけも傑だった。
お手伝いの女は発狂し、その夫は産まれてきた新奈を邪険にした。だから、傑は傍で新奈の成長を見守ろうとした。
そこで傑の異常なまでの執着に両親が危機感を募らせた。遅いよ、幼いながらも聡かった傑は両親にそう告げた。
必死で引き離そうとする両親。引き留めておこうとする傑。初戦は傑の黒星で終わった。
しばらく会えない歳月が過ぎた。
それで安心した両親の隙をかいくぐり、何とか新奈を見つけたとき、新奈は笑顔も何もなかった。
その時、傑は二十歳、新奈は十四だった。
新奈を守るために、その一心で傑は努力した。友人と新奈が付き合うようになり、傍でも守れる、そう安心していたのに。
友人は新奈と傑を裏切った。おそらく父親の仕業だろう。
そして、新奈が二十二の時、傑の傍からいなくなった。
友人を詰った。事も無げに友人はこう告げた「ただの遊びだった」と。その一言で縁を切るには十分すぎた。
新奈が幸せになるのなら、その理由だけで結婚した女性も、傑を裏切っていた。不貞の証拠を叩きつけ、離婚に踏み切ろうとした時、妻の実家も両親も反対してきた。慰謝料を一切貰わないこと、妻は高藤家の養子とすることなどを盛り込んで、何とか離婚にたどり着いたのはそれから二年後。
一年かけて新奈を探した。
またしても暗い顔をする新奈を見つけた時、箍が外れた。もう、我慢する必要はないのだと。
最初はゆっくりと。この先新奈を幸せにすると改心するなら、と思った。だが、新奈に漬けていたボイスレコーダーが、婚家の暴言を拾った。
じわりじわりと新奈の包囲網を縮め、あの日、動いた愛人と従業員を捕らえると同時に、新奈をこの家に連れてきた。
血がつながっているから、その理由で蓋をしていた己の欲望を解き放ったのだ。
「ずっと、こうしていたかったんだよ、新奈」
未だ気を失ったままの新奈をベッドに連れて行くと、両手はベッドの頭に縛り付けた。己しか見れないようにしてやる。
裸体の新奈はとても綺麗で。誰の手にも穢されていないのではないのかと思えてくる。あの男から聞いていた話の中で、手を出していたのは知っているはずなのに。
「新奈のハジメテも俺が欲しかったかも」
最初から我慢しなければよかったのだ。
「……ん」
「起きた? 新奈。綺麗だよ」
そして己のそれを、新奈の蜜壺に再度挿れた。
「あっ……あぁ」
意識が未だ定まらぬ中でも、新奈は傑に感じていた。
「あぁ、新奈。……新奈。俺だけの新奈」
「たか……っう」
「違うでしょ」
「すぐる……さん」
「よくできました。ご褒美」
「あぁぁぁぁ!!」
最奥でぐりぐりと動かすだけで、あっという間に達していた。
「もう、離したりはしないよ。新奈は俺が幸せにするから」
「……たか……傑、さん?」
「愛している。新奈」
新奈の感じるところを探しつつ、傑はゆっくりと動く。
「我慢、しないから」
喘ぎ声の合間で、傑の名前を呼ぶ新奈の顔を愛おし気に撫でた。
0
お気に入りに追加
46
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。
Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
練習なのに、とろけてしまいました
あさぎ
恋愛
ちょっとオタクな吉住瞳子(よしずみとうこ)は漫画やゲームが大好き。ある日、漫画動画を創作している友人から意外なお願いをされ引き受けると、なぜか会社のイケメン上司・小野田主任が現れびっくり。友人のお願いにうまく応えることができない瞳子を主任が手ずから教えこんでいく。
「だんだんいやらしくなってきたな」「お前の声、すごくそそられる……」主任の手が止まらない。まさかこんな練習になるなんて。瞳子はどこまでも甘く淫らにとかされていく
※※※〈本編12話+番外編1話〉※※※
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる