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番外編(リスティアの花紋)
10 ※
しおりを挟む隣室に連れ込まれたリスティアは、アルバートによって寝台に縫い止められていた。
「ふっ、んん、んんぅ……っ」
「ティアッ……!はぁ、たまらない、ああ、俺のティア……!」
荒々しい口付け。舌を深く絡ませ、口蓋を嬲られてゾワゾワと快感に満ちていく。
流れるように脱がされて、リスティアはもう一糸纏わぬ身になっていた。アルバートの服は一切力加減なく引きちぎられて、無惨に床へ散らばっている。
「はぁ、んっ、ああっ……、」
アルバートの大きな熱い手が、リスティアの白くなめらかな肌を弄る。黄金の桜桃の花紋をなぞられば呼応するように輝き、薄い腹の奥でキュンキュンとひくつくのを感じた。
(あ、だめだ、こんなに……っ、)
甘い汁が、秘孔より溢れ出ている。もう、リスティアには制御不能。アルバートを、アルファを、全力で誘うフェロモン。
無骨な剣ダコのある指が、リスティアのささやかな陰茎を撫で、ほんの数回扱いただけで達してしまう。もう、リスティアの体はそのように散々と教え込まれていた。
「はぁ、ン……――――っ!」
「可愛い、ティア……、こんなに、濡らして……」
花紋を汚すようにかかった白濁を、指で掬ってペロリと舐められ、リスティアは赤面した。全く、そんなものを嬉々として舐めるなんて!
「はぁ、アル、ばか、へんた、い……っ」
「変態でいい……!ティアを、味わえるなら、」
そのつゆを指に纏わせて、リスティアの内部を開いていく。じゅぷっ、じゅぷっ、と柔らかな媚肉と、十分な愛液のなす、卑猥な音。
「あっ、あっ、や、ああっ、あ――――」
「……いい子だ。もっと、もっとイっていいから……」
ぷちゅっ。しこりを正確に擦られて、快楽に従順な体は一気に跳ねた。絶頂に達して、快楽の凄まじさに顔を歪めても、アルバートは褒めてくれるのだ。だから、リスティアは安心して理性を手放せる。
熱せられた鉄塔のようなアルバートの陰茎が、孔へあてがわれた。ドクドクと脈立つそれが、欲しくてたまらない。
「あ、アル、欲しい……、おねが……っ」
「ああ、今、すぐ……っ!」
「ひ、あ、あああああああ」
ずぷぷぷっ!ぐちゅっ!
一気に貫かれた圧迫感で、リスティアはまたも高みへと昇った。逃げようとする肩は鎧のような身体に押さえつけられ、シーツを掻こうとする手は絡め取られていた。
アルバートの腰はゆっくり、ねっとりと、大きく抽送を繰り返す。時に止まり、リスティアを焦らし、時に奥へ叩きつけ、翻弄し。ずりずりと内壁を擦るその動き全てが、リスティアを震わせる。
「あああっ、も、~~っ、また……っ、イクっ――――!」
「ふっ、可愛いな、ティア。こんなに跳ねて……っ」
「ひんっ!」
(あ、トぶ――――)
ぐちっ!
最奥を穿たれた衝撃と共に、リスティアの意識は完全に、快楽に飲み込まれたのだった。
―――――――― 一方ノエルは。
発情したジェシーをどうするかと言えば、二つの選択肢を提示していた。
「こちら、良く効く抑制剤です。それからこちら、この町ナンバーワンの男娼さんです」
「こんにちは~。わぉ!可愛らしいお嬢さん~」
「はっ、えっ、あんっ、やっ、えっ?」
顔を赤らめながら、ジェシーはローブをかなぐり捨てて、ノエルの持つ薬瓶と男娼とを交互に見ていた。
「この抑制剤も、大錬金術師様のお墨付きですからご安心を。また、こちらの男娼さんはなかなか予約の取れない超人気な方でして、次の予約は三ヶ月先だとか……」
「お願いっ!抱いて!」
「はい、喜んで~。お姫様~」
ニコリと白い歯を見せて笑いかけた男娼に、ジェシーは飛びつく。そのまま寝室へ運ぼうとする男娼に、ノエルはぽそりと囁いた。
「最初の二日分のお金は置いておきますが、その後はそのジェシーさんから貰って下さい。ジェクソン商会の娘さんだそうなので、金払いは良いはずです。では、ご武運を」
「ありがとうございます。良い太客を紹介頂いて」
「いえいえ」
ふふふ。ははは。
胡散臭い笑みが交わされて、すぐにそれぞれの仕事へと向かった。
ノエルはその部屋を出て、隣室へ向かう。ところが、扉の前に人が群がっているのに気付いて血相を変えた。
リスティアの発情フェロモンが、漏れ出ているのだ。
顔を赤くしたアルファや、ベータまでもが扉をこじ開けようとしている。
「ちょっと!離れて!ほら!立ち入り禁止ですよ!」
「えっ……こんな、良い匂いのオメガがいるんだろう?!」
「そうだ!誘ってるんだ、いますぐ行ってやらねぇと……」
「私のオメガです、こら!爪を立てないで!」
風を操りフェロモンを霧散させる。それでも一度嗅いだフェロモンが忘れられないのか、集まった男たちはぶつくさと文句を言う。しかしそれも、仕方なしに威嚇フェロモンを出し始めたノエルに怯えて散っていった。
(やはり、高級宿とは言え、完全には防ぎきれませんね……、あの痴女の方は大丈夫そうですが、リスティアのはダメだということですか)
ノエルはリスティアの発情期が終わるまで、フェロモンを霧散させる地味な作業に追われたのだった。
(……今回はアルバートに花を持たせてやりますが、次は覚えていなさい……)
そう、悔しそうに歯噛みしながら。
――――――――――――――――
目の前で圧倒的な差を見せつけられ、大敗したジェシーは、その悲しみを埋めるように男娼へ入れ込んだ。金の力を使って恋人のような振る舞いをさせているらしい。それは俗に言う、”同伴"というサービス。男娼は儲かっているそうだが、いつまで続くか。
実はジェシーの発言を聞いたラヴァ。
『弟子を疑うってことはボクを疑うってこと。信用してくれないところになんて売らないよ?』と根に持ってしまったために、ジェクソン商会は大錬金術師の薬を卸されなくなってしまった。
ラヴァを止められる唯一の男、マーリンも黙ったまま。そのため、これによる影響で今後商会は縮小していくのだろう。
「ティアに勝てる要素がフェロモンの相性だけだったらしいが、元より勝てるはずも無い。わかりきってはいたが、やっと安心出来そうだ」
「ふふ、良かった。身体張った甲斐がありました」
「アレで諦める程度で助かりました。他にも手は考えていたのですが、面倒でなくて」
ノエルの美麗な笑みを見たところ、何種類か考えがあったのだろう。それでも一番平和な解決方法で良かったと、リスティアは息を吐いた。
運命に会ってしまうと、それほどまでに執着してしまうのだろうか。リスティアは怖くなった。
「どうしよう、今後、僕やノエルに運命が現れたら」
「ティア。大丈夫だ、俺を見てくれ」
「だって……んんっ」
甘い口付けを受けながら、アルバートの美麗な笑みを眺める。
「生物学的な運命など、必要ない。俺にはティアしか要らない。こんなに満たされるのは、相手がティアだからだ」
「んん……」
とろり、溶けていく。
リスティアの紫水晶は、熟れた果実のように蕩けて、ふやけて、果汁がこぼれて。
それをアルバートの舌が味わうように舐めている。
「リスティアのフェロモンでしか、我々は発情しません。ということは、我々こそリスティアの運命、ということになりませんか?」
ノエルはリスティアの耳を柔らかく食んだ。ふ、ふ、と吐息をかけられて、腰の奥の方が熱くなってくる。
「そうだね……君たちが、僕の運命。僕が、君たちの運命……」
「ええ」
「そういうことだ」
※次話で終わります!
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