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番外編(リスティアの花紋)

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 リスティアの朝は、アルバートに起こされることから始まる。


「んん……」

「かわい……」


 身体が熱くて起きると、アルバートに背中から抱きつかれ、首筋や耳の辺りへふわふわと唇を押し付けられていた。
 大きな手のひらで、筋肉を揉みほぐされている。それはいいのだが、いかんせん素肌のため刺激が強い。


「アル……おはよ……んっ、ちょっと、はぁ、待って、ね……」

「いくらでも」


 まだ覚醒しきっていないリスティアを、思う存分堪能している。しばらくもみもみと気持ちの良いマッサージをされて、ようやく起床した。


「アル、おはよ。……ふふ」


 ちゅ、とアルバートの頬に口付けをして、サッと身を起こした。枕元に追いやられていた誰かのシャツを適当に裸の身体に着せると、簡単な朝食を作りに台所へ立つ。

 リスティアの無属性魔術は細かい作業に向いている。【細断】【粉砕】【撹拌】などを駆使すると、健康的なスムージーやフルーツの盛り合わせも瞬時に出来る。その間に、コンロを使ってトーストや目玉焼きなどを作ってしまえば、ものの10分ほどで完成だ。

 リスティアはぷるぷるの半熟目玉焼きが好き。ノエルは固め、アルバートは両面焼き。それぞれの嗜好も知るようになった。

 くるくると動くリスティアの周りで、アルバートもまた食器を出したり、はたまたリスティアに頬擦りをしたり、シャツの隙間から尻や乳首に触れたりする。鍛練に行く前に、リスティアを補充しておかなければならない、のだとか。

 その手によって否応なしに性感を高められても、なす術はない。精々アルバートを睨むくらいで、本人はにやりと笑うだけ。

 味付けは主にアルバートが担当する。味覚が鋭いアルバートに任せればほぼ間違いはない。

 そして全てが出来上がった頃、リスティアはノエルを起こす。少し体重をかけて抱きつくと、ノエルはふにゃふにゃの笑顔で起きてくれるため簡単だ。これがアルバートであれば反応は全く違うのだが、それはリスティアも知らなくていいことだった。


「今日も美味しそうです。ありがとう、リスティア、アルバート」

「どういたしまして。作るものが決まっていると楽だからね」

「……珈琲、淹れた」

「ありがと、アル」


 このパールノイア王国最南端にあたる森は、珈琲の産地で有名だった。そのため、紅茶ではなく珈琲を飲むことも増えた。もちろん紅茶も飲むのだが、ノエルの手による紅茶は、おやつ休憩に限る。

 アルバートはサクサクと食べ終わると、そのまま外へ鍛練へ行く。巷で『魔境』と呼ばれている、この生命力の強すぎる森の中で、縦横無尽に駆け抜けていくのだ。そして一日かけて、珍しい果物や魔物の肉なども採ってきてくれる。

 ノエルは食器の後片付けを指一つ鳴らして終わらせた。大賢者マーリンに師事してもらってからというものの、ますます魔術技巧に磨きをかけている。


 朝食を終えると、それぞれ師匠の元へ向かう。

 リスティアはラヴァの助手のような仕事をしていた。素材集めや製作の補助をしながら、師匠の恐るべき技巧を目の前にし、日々学ぶ。

 また、ラヴァは自分の商会を持っていた。そこに自作の魔道具や丸薬を卸すことで、それなりの資金を貰えるようになった。ありがたい事に、弟子とはいえ品質は師匠のお墨付きでもあるため、値を低く見積られることも無い。


 ラヴァは最近、自宅警備用の魔道具を色々と作っている。リスティアはそれを横から見て真似をしたり、完成品を試運転したりしているのだが、……いかんせん、ラヴァの遊び心が強烈過ぎて、毎日、割と大変な目に遭っていた。







「ら、ラヴァさま……っ!」

「ん~、拘束力は良いけど、センスがねぇ……もうちょっと、」

「もう、い、いいですか?恥ずかしいのですが……」


 侵入者役のリスティアは、森の中で宙吊りになっていた。とは言っても、安全面を考慮され、つま先がほんの数センチ浮いている程度。落ちても怪我一つ負わない高さ。
 うねうねと柔らかい蔓は、リスティアの両手両足を拘束している。それだけなら良かったのに、開脚した格好で浮いているのだった。


 センスもなにも、製作者はラヴァ本人だ。リスティアを見ながら、蔓の根元にある魔術陣に手を加えるのに夢中になっている。


「ちょっと……まだ待ってねぇ~……んん~~、『擽り』が足りないかなぁ……」

「んっ」


 そろりそろりと身体を這う蔓が、リスティアの服の隙間から入ってきた。調整中なのは分かるものの、くすぐったくてたまらない。
 ラヴァの手が魔術陣の上を移動する度、蔓に際どい所を触れられている。


「ラヴァ様、ちょっ……ちょっと止めてください……っ!」

「あともう少し……、待って~、ちょっと『敏感』も足して……」

「ふ、んんっ、あっ……」


 柔らかな蔓の先が、下履きの中に入ってきてしまった!
 唇を噛むようにして、リスティアは黙った。二人の恋人によって、リスティアの身体はどこもかしこも性感帯に育てられている。肉厚な蔓に、ちょんちょん、と鼠蹊部を撫でられるだけで、昼間には相応しくない気分になってしまう。


「ふぁ、し、師匠~っ!」

「んん……?あれ?おかしいなぁ……リスティアくん、めちゃくちゃいい匂いなのは君のフェロモンか……?」

「呑気な事、言ってないで……っひぅ!」


 太ももの付け根を這っていた蔓は、リスティアの秘孔を見つけたらしい。くるりと縁を撫でると、何か分泌液のようなネトネトするものを塗っている。
 そこからじんじんと、熱くなってきた。


「ぅ、ああっ、んん、もう、辞めてください……っ!」


 歪む視界にちらと見えたのは、わくわくした顔のラヴァだった。


「ん~、勿体無い……よね?」




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