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10 最終話

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「どうしたのですか、急に……っ」

「やっと緊迫した状況を終わらせて、婚約も結び、我慢する理由は無くなった。そこに、獲物アヤトがネギを背負って自分から鍋に飛び込んできたんだ。食うしかない」

「どういう事っ?!」

ぽふ。
柔らかな寝台に押し付けられると共に、ジェラルドの唇で口を塞がれる。これは2回目の口付け。しかしここには邪魔な鉄格子も、ジェラルドの鎧も無い。


「ん、んんっ」


ちゅ、くちゅ。じゅうぅぅっ。
唾液を吸い取られ、与えられ、厚めの唇は綾人を食べるように覆って、長い舌はこしこし、すりすりと上顎を撫でたり舌同士を絡めたり。


「ふぁ……、」


唾液の甘さに驚愕し、翻弄され、次第に綾人はぼうっとしてきた。
先程身につけたばかりの浴衣は性急で無骨な手によって簡単に脱がされて、あっという間に下着だけとなる。

「……これは……?なんだ?脱がせない……っ」

「んん、ちょっと、ルド、待って……」

「貞操帯か?この頑なにアヤトを守る布は……」

「ふ、ふんどしです!もっ、だから待ってと!」


褌を脱がそうと躍起になっているジェラルドに、アヤトは笑いが込み上げてくる。少し余裕を取り戻して、ゆっくりと解いていく。
そこはもう、待ち望んでいたように腫れていた。


「綺麗だ……アヤト」

「ぼ、僕ばかり……ルドも脱いで下さい」


綾人がそういうと、ジェラルドは衣服を豪快に脱ぎ捨てた。その筋肉は、洗練し研ぎ澄まされた武人のそれ。うっとりと見惚れる程見事な身体。
そしてブルン!と早くも主張してきたソレを見て、綾人は固まる。

そうだった。ここは異世界で、ジェラルドは異世界人の中でも取り分け立派な体躯を持つ。

綾人は175センチであり、自分の身長に対して不満はない。そして自身の息子についても体格に見合ったそこそこのものを所持している。優奈によって女性への恐怖心を植え付けられていなかったならば、殆どの女性を満足させることが出来た筈。

従って、綾人が自身の後孔で遊ぶ際には、無意識に自分と同等くらいのサイズを想像していた。

しかし。目の前で硬く聳り立つ巨根。

ペニスでは可愛すぎる。
股間という玉座に堂々と鎮座する魔王。

あまり現代では使われなくなった、『魔羅まら』という単語が頭に浮かぶ。


「こ、れは……」

「絶対に痛くしないから安心しろ。参考書は色々と読んできたからな」

「ええと……実践経験は?」

「ない」


童貞とはとても思えない色気を醸し出したジェラルドは、ごそごそと道具を取り出して、綾人は困惑するしかない。
今どこから出した?いつ寝室の引き出しに仕込んだのか?


尻の中の洗浄は、坐薬のような錠剤。
潤滑剤はぷるぷるしたカプセル状で、中に仕込むと、じわりと溶けて役割を果たす。

早口の説明が耳を通り抜けて、あまり咀嚼できていない綾人を、ジェラルドは再び押し倒した。

薄い胸の飾りにむしゃぶりつき、齧った。舌先でくにくにと押して、転がす。ピリピリとした快感が胸からじんわり広がっていくようだった。自分でいじったことはあったものの、これほど感じたことはない。

目の前の艶やかな、銀髪の頭にしがみつく。


「んんっ、は、あっ、ああっ、」

「……アヤトは肌も甘いな。神気の力だろうか。初めて見た時から、ここを舐めてみたかった」

「ええっ、ちょ」


驚く綾人を他所に、ジェラルドは少し嫌なことを思い出してしまう。




綾人が降臨した時。白い薄衣を濡らして現れた綾人は正しく神の遣いだった。神々しい光景に息を呑んだ。
そしてぴったりと張り付いた衣服は綾人の身体を余すことなく浮かび上がらせた。目を引いたのは、白い肌の中でただひとつ、薄い桃色の胸の突起。

目を凝らしてしまうくらいに色っぽい姿に、思考停止したのはジェラルドだけではないはず。実際、あの姿を目に焼き付けた中年貴族は、綾人を襲おうとした。

あのエロすぎるすばらしい姿を見るのは、自分だけでいい。あの場にいた貴族を一人一人殴って意識を刈り取った方が良かったかもしれないとすら思う、自分の執着心に驚く。

綾人が現れるまで、この世にすら、さして執着していなかったのに。闘って死ぬのは本望だと。機械のように生きていたのに。

胸も、脇も、薄く割れた腹や臍も、少ししか生えていない下揃えも、その下にぴょこんと張ってふるふると震える陰茎も、全部、自分のものだ。


「ひあっ、あ、あっ」


綾人の欲望をパクッと食べてしまう。先走りの透明の蜜すら甘い。神力の影響かは不明だが、まるで魔蜜のような――上品な、どこか花の香りも感じるような甘さだ。


「ああっ、ンン、も――むり……っ」


夢中になって舌で扱いていると、みるみるうちに高めさせられた綾人は吐精した。


「る、ど……!」


強い快感にぐっと唇を噛み、波に抗うように耐える。自慰で得られる快感よりも余程強い、脳の中心がどろりと溶けていくような気持ちよさ。

うっすらと瞼を開けると、そこに見えたのは、ごくごくと飲み干そうとする、どタイプの顔の男。視界の暴力すぎる。


「あ、は、あ、あ、あ……」


白蜜を全て綺麗に舐めとったジェラルドは、ちゅぽんと音を立てて口を離した。呼吸の整わない綾人は、ぼうっと見上げるしかない。恥ずかしいのに、目を逸せない。


「甘い。美味いな。……いくらでも飲めるぞ」

「う、嘘……」


問答無用で口付けをしてきたジェラルド。驚くことに青臭さはなく、無味。どちらかというとジェラルドの唾液の方が甘い。

くちゅくちゅと優しいキスをしている間に、ジェラルドは引き締まった滑らかな尻を割り開き、ぷちゅっ、と浄化剤を入れる。じんわりと暖かい魔力が広がっていく。

こちらに来てから忙しくて触っていなかった蕾は、固く閉じていた。ジェラルドの長い指でくるくると弄ばれ、ドキドキしている間に疼いてくる。


「すぐに、柔らかくなったな……」

「くっ、んんっ、あ、そこ、はっ!」


コリッ!
キュゥウウウッ!
しこりを掠ったと同時に湧き上がる快感の渦。白い喉を逸らして仰反るも、その気持ちよさからは逃げきれない。


「ひあっ、や、あ、あんっ、あうっ……!」

ぷにっとした粒を押し込まれるのにも気づかず、ひたすらに気持ちよくて、情けない喘ぎ声を止めることも出来ない。

潤滑油が広がりぬちゃぬちゃと水音を響かせる頃には、綾人の孔は指三本をしっかりと咥え込み、『早くいれてくれ』とばかりにきゅうきゅうと締め付けていた。

ぜー、はー、と息をするのすら精一杯の綾人に、ジェラルドの熱杭がぴたりと押し当てられた。


「くっ、すまない、もう限界だ……っ!」

「い、いいから……っ!欲しい……!」

「くっそ……!」


ぐぐっ。ぬち、ぬち。
狭い隘路を開いていく。ゆっくりと、だが、初めての綾人にとっては容赦なく感じられる。
覆い被さる男は、汗を垂らし、ギラギラと獲物を食い破る猛獣のような瞳をしていた。いつも綾人を守る為に冷静さを失わない男が。

そんなにも自分を欲しているのか、と思うと、腹の奥の方がきゅんと疼く。


「ああああっ、ルド、好き、あ!や、あ――っ!!」


その言葉を放った瞬間。
グッ……!と押し込まれたと同時に、視界はチカチカと飛んで、訳の分からない高みへ置いてけぼりだ。仰け反った体が弧を描く。綾人の花芯からはぴゅっ、ぴゅっ、と愛液が断続的に垂れていく。

ジェラルドを催促するように、ヒクヒクと蕾が蠢いた。

ぐちゅっ!ぐちゅっ!パンパンパンッ!
ぬめり切った内壁を、ジェラルドは容赦なく攻め立てる。キツく搾り取ろうとする畝りに、直ぐにでも放ってしまいそうになるのを堪えたが――。


「あっ、あっ、は、あ、待っ、あ!」


身体の下には全身を桃色に染め、口端からは涎を垂らして、涙目になりながら、翻弄されている綾人。


初心者どうていにはとてもではないが、直ぐに限界を迎えたのは仕方のないことだった。


「くっ、出る……っ!」

「は、あああっ、あん、あん、あ、あ、あ、」


熱い飛沫が注ぎ込まれる。長い、長い射精。その熱さと滑りからか、綾人はぴくぴくと痙攣する。気持ちがいい。強くはない、けれど全身を甘くくすぐる気持ちよさ。


「はーっ、はーっ」

「アヤト……次は後ろからだ」

「は……、はあっ?」


脱力した綾人。くるりと後ろにひっくり返される瞬間、ちらりと見えたのはすぐさま元気さを取り戻した剛直。


「背中もエロいな。頸も真っ白で……」


かぶりつきたい。
そう思ったジェラルドは本能のまま、綾人の頸に噛み付いた。


「ひぎぃっ……、」


そしてまた臀部を揉み広げ、穿つ。もはや力の無い綾人の身体を容易く抱え込み、汗で湿った肌が密着した。ジェラルドの逞しく発達した大胸筋が、むっちりと背中に当たる。

長い節立つ指にピンッ!と胸の飾りを弄ばれ、撫でられ、その度ぴくっ、と肩を揺らした。
綾人の優秀な内壁はジェラルドの大きさを覚えたようにぴったりと受け入れ、綾人はまた絶頂する。


「かはっ――」


ぐらり。尻だけを突き出したまま頭から倒れ込んだ。あまりにも強すぎた快感。もうどこを触られても何をされても気持ちが良い。

ジェラルドはまたぎゅうぎゅうと締め付けられてイキそうになるのを堪え、ゆっくりとストロークする。
先ほどより少しだけ余裕が出来たために、それが却って綾人を追い詰めてしまった。その全ての摩擦で前立腺が刺激され、イキっ放しになるからだ。


「あ、あ、あ、あ、」


意識が朦朧とする。
分かるのは気持ち良くて、息すら止まりそうなこと。
酸素を追い求めてはくはくとしているのに、口付けを求められていると思ったジェラルドによって塞がれ、その後の記憶が無い。













「……。」


目を覚ました時、まだ昼だった。しかし恐らく2回目の昼の陽気だった。
前日の昼から始め、夜ご飯も食べずに快楽に耽り、朝も寝過ごすとは。規則正しい生活を好む綾人にとっては滝行に駆け込みたい程の怠惰だ。

しかしそれはきっと叶わない。身体はぴくりとも動かず、喉も張り付いたように乾いて、下肢では使った事のない、名前も知らない内部の筋肉が悲鳴を上げていた。


「おはよう……ゴザイマス……」


パタン。寝室に入ってきたジェラルドは、朝食……粥のようなものをお盆に載せて、申し訳なさそうに恐る恐る近付いてくる。寝台に寝たままジトリと見つめる綾人の上半身を優しく起こし、ぬるい水を口に含み、口付ける。

少しずつ押し込まれる甘い水。こく、こく、と大人しく飲んでいると何回か繰り返し与えられた。


「もう……ルド」

「すまない。……途中で、頭がパーンと……どうにも止められなくて、これほど自分が獣になるとは初めて知った。アヤトは……大丈夫か……?」

「脚は動かせそうにないけれど、神気で治……ううん、いや、ルドには戒めのために世話してもらいます。もう……こんなになるまでするのはダメですよ」

「それは、適度ならいいということか?」


綾人は真っ赤になって目を逸らす。あまり素直ではない綾人は恥ずかしかった。とんでもなく気持ち良かったから。

これまで想像していたセックスの概念が弾け飛んで塵になる程の快楽に、落ちてしまったなんて、言えない。

普段は騎士然とした紳士なジェラルドが、ベッドの上でだけは野獣となる。
それは……なんというか、嫌いじゃない。ありていに言えば、性癖に刺さった。

またあの少し強引なジェラルドを思い出してしまい、綾人は顔がボッと赤くなるのを自覚する。

顔を手で覆いながら、もごもごと声を絞り出す。

その様子を見た男の、獣心を呼び起こすことになるとは気づかず。


「……朝は、夜明け前に起きたいです。早朝の日課もこなしたいし、そう、ちゃんと朝ごはん、昼ごはん、夜ごはんを食べたい。日中は浄化の旅を続けたいし、魔物の素材を売ってお金も稼がなければ。だから、ええと、」

「分かった。翌日に響かない程度ならいいと。……毎日でも」

「え、あ、……はい?」

「ところで今日は、蜜月ということになるだろう?我慢していた反動か、どうにもアヤトが欲しくてたまらないのだが」


怪しい手つきで腰を撫でる男に戦慄するも、既に綾人はジェラルドの膝の上にいた。そして、覆い被さられ……。



毎日は流石に精力が持たないだろうと思っていた綾人は甘かった。

爽やかに笑みを浮かべたこの男は、この国どころか他国を含めても身体能力及び魔力の高さは飛び抜けている。
すなわち、どれだけ吐精しても怠さなど無縁。
そこに生来の生命力、王譲りの『絶倫』が加わるとどうなるか。





聖者と聖騎士は、仲睦まじく浄化の旅を続けていく。聖者は神気を宿すための、滝行や行衣を始めとした修行方法を広く伝えた。この聖者の教えは後世に長く受け継がれることになる。
神子は各地で増え、以降聖女が降臨することは無かった。

時折、聖者に怒られしょんぼりとする聖騎士の姿が見受けられたが、腰のたたない聖者を抱え上げる聖騎士は、甘く蕩けた笑みを浮かべていた。
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