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本編
12 最終話※
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「君は本当に、良くない……いやいや、良い子だけど、いけない子だ」
「……?」
「君に煽られては、私の理性は風前の灯だ。歳上の余裕なんて音を立てて崩れていく」
「煽っ……?ですか?」
「誰のせいだと思う?フェリス。でも歳上だから、いつでも止まるからね。脳の血管が切れたとしても私は止まってみせる。分かったね」
「それは危ないので、どうか無理をなさらないで下さい」
「ああっ……もう……っ!」
レオン様はますます僕の身体にたくさんの痕を付けると同時に、指をゆっくり、ぬるぬると入れて、擦る。すると。
「……っぁあ!?えっ、あっ、あんっ!?」
「気持ちいい?」
「う……あっ、いい、です……っ!」
ビクン!と身体が跳ねた。自分では制御できない声と、勝手に動く腰の卑猥さに赤面する。なにを、されたの?
レオン様はうっそりと笑って僕の顔を眺めながら、そのやけに跳ねてしまう箇所をぐっと押してくる。
「はぁ、っ、あっ!あっ、あっ、あっ、」
「あー、えっろ。かわい。えっろ。好き。フェリス。かわいいね」
耳元で囁かれる。たまらなくなって、レオン様にしがみついた。僕ではついぞ得られなかった逞しい、筋肉の鎧だ。
「はぁ、少しきついかもしれないけど……ごめんね」
そう言って、レオン様はようやく下穿きを脱いだ。そしてバチィィイン!と腹に当たって跳ね返るほどのモノに怖気付く。おっ……大人のおちんちんだ。いや、僕だってもう18だ、大人のおちんちんのはずだけど、レオン様のレオン様はあまりにも大人だった。
バキバキにいきり立ち、血管も浮き出た生々しい怒張は、僕の小さなアナルにぴたと当てがわれた。少し身を丸め、硬くしてしまうのは、次の衝撃に備えるための、防御反応か。
だけど、いつまでも入ってくる気配はない。ふんわりと降ってくるキス。柔らかな愛撫。甘くとろけた綺麗な碧眼が、僕を見つめていた。
「力を抜いてね。ゆっくりするから、痛かったら……俺の身体のどこでも噛んで、痛みを与えて」
「……っ、そんな、」
「君だけに我慢をさせる気はないからね。愛しているよ、フェリス」
ぬち。
ぬち。
慎重に、ゆっくりと入ってくる。もどかしい。焦らされているみたい。
覆い被さっているレオン様からは、苦悶の汗が流れて、僕の肌にぴちょんと落ちた。
とてもきつい。あの人ならすぐに突き入れてガシガシと好きなままに動く。レオン様だってそうしようと思えば出来るはずなのに、しない。
レオン様の優しさに泣けてきてしまった。ぽろぽろと泣く僕に焦ったレオン様は、動きを止めてしまう。けれど、違う。もっと奥に。もっとくっついて、混ざり合いたい。
大きく開いていた脚で、レオン様をぎゅっと挟んだ。自分から腰を浮かせて、誘い込む。
「~~っ、フェリス……!」
「あ、う、う、……っ!来て、下さい……!」
とても熱い抱擁。と共に、僕の中にレオン様がねじ込まれて、息も絶え絶えになりながらつるつるのシーツを握った。
やはり奥は、少し敏感すぎる。それだけいっぱい入っているのに、まだレオン様の腰は僕のお尻に付いてない。けど…………気持ちが溢れて、止まらない。レオン様は歯を食いしばるほどに我慢をして動かないでいる。
「れお、さま……我慢、しないで」
「……くっ!」
「嬉しい……です。大好き……レオン様」
うっとりと幸せに浸り、レオン様を腕でも足でも抱きしめた。すると、とうとうなにか切れてしまったのだろう。
レオン様は、ものすごく色っぽく笑った。
ぐちっ!
「……ん……っ」
はい、った……!
圧迫された腹は、ぽこりと形を変えてしまうんじゃないだろうか。くらくらする頭はバカなことしか考えられなくて、思わずお腹を撫でてしまう。
するとレオン様は感じ入るように嘆息し、ずるり、と引き抜く。入れる。腰を引いて、くっつける。
意地悪なほどにゆっくりなその動作は、ますます僕を苦しめた。
「あっ!あんっ!アアアッ!すっ、ごい……!」
はぁ、はぁ、はぁ、ああ、なんて、気持ちいいの……?!
大人おちんちんの先っぽのくびれのところが、僕の中をゴリッと引っ掻いて、太い竿は硬く、熱く、満たしてくれる。
僕は全然動いていないのに感じすぎて、全身に汗をかいていた。あ、も、だめ……!
レオン様は断続的に腰を動かしながら、僕のペニスにも手を伸ばし――――先の方を、くにくにと撫でる。その刺激は今の僕に、完全に過分だった。
「ひぁあああッ!――――っ!」
快感が身体の芯を貫いた!そしてそのまま掴まって、離してくれない!
きゅうぅっ、と下腹が締まったと同時にレオン様も放ったのか、中に温かいものが流れ込んでくる。それがまた気持ちいい!気持ちいい……っ!
「あっ……あっ、……あっ、」
「ぷるぷるしてる……気持ち、良いね……?」
「は、い……っ、あっ、い、いいで、す……っ!」
痙攣する身体を抱き寄せられる。レオン様の、爽やかなオレンジのような香りにホッとして、だんだんと快楽の漣が引いていくのを感じて……、あれ?そういえば、レオン様のものは、入ったままで……。あれ?
「可愛い。油断してふにゃふにゃだね……」
「ゆだん……?」
ぱち、ぱち。討伐後の疲れも相まって瞼が落ちそうになるも、目の前のレオン様の目はパッチリ、もっと言うならギラギラとさえしていた。
そして、再び身体を揺さぶられることとなり…………朝が来ても、レオン様は僕を離すことはなかった。
「うう……」
「可哀想に。フェリスちゃん。ああ!こんな狼に食べられちゃって……色気やっばいわね……」
三日後、僕はヴァネッサ様と朝食をちびりちびりと食べていた。腰は立たないし部屋から動けないので、部屋に持ってきてもらったのだ。
僕と違い、ヴァネッサ様は全くもってシャンとしている。あの体格の良いガルフ様との夜をこなしてその強靭さはすごい。僕も鍛錬しなくちゃな……と決意を新たにしていると、ヴァネッサ様に笑われてしまった。
「もう、フェリスちゃん。あたくしとガルフはそんなんじゃないのよ。スポーツとか、ぶつかり稽古みたいなもん。次の日スッキリ起きるための運動くらいにしか思ってないのよ。レオンの、三日連続耐久戦のような狂気じみたものとは違うから、安心してちょうだい」
「ひえっ……そ、そんな……」
「ひどいなぁ、ヴァネッサ。私はいつだって真面目で爽やかだよ?」
「どこがよ、変態勇者。あたくしを使って下着に魔法収納付けさせたくせに……」
「おっと、それは言わないお約束だ。あちらでちょっとお話しようか、ヴァネッサさん?」
どうやら勇者様の知らなくていい秘密を聞いてしまったようだ。レオン様の下穿きの見た目と、出てきた凶器のサイズがどうみても見合わないのは、…………まさかね。
「……はよう。フェリス。故郷からの手紙が来ていたぞ」
「ガルフ様!ありがとうございます」
痛む腰をさすりながら、手紙を受け取る。
村を出て、もう二年も経ったんだなぁ。
僕の両親と弟は、相変わらずあの村に住み続けている。お父様の言った通り、勇者パーティーの一員を出したということで村への注目度が高まり、近隣の街までのちょっとした道を敷いてもらえたのだ。
僕の生家ということで国からの支援金も送られて、両親はそれを村の観光地化に投資した。ただし実生活は、そのお金に頼ることなく質素堅実な暮らしをしている。たまに、街へ買い物を楽しむようになったくらい。
『お前の好きなレモンパイの売り上げは好調だし、修行中の神官も訪れるようになったぞ。お前の力にあやかりたいとな。おとうさまは鼻が高い』
だそう。
うちのお父様は観光大使として色々な催し物や建物を考えて指示するのに忙しいみたい。村人たちから総スカン中の村長やアノンより、村長として敬われているとか。
あの人……アノンは、ララと結婚することになったらしい。子供が出来たから、と。
それを聞いても、僕は何にも感じなかった。
ああ、元気に生きているようで良かった。それだけ。
ただお母様が言うには、あんまり幸せそうには見えず、ララは別の男の人といるのを良く見かけるし、アノンは夕陽を見る度に黄昏るようになったそう。しまいには失恋の歌まで創作しているとか。
僕が村を出てからは、もう森へ無理に入るようなことはしなくなり、みんなからも『慈悲深い神官をキレさせるくらい無下に扱った奴』として、腫れ物に触れるような微妙な立場にいる。
『そりゃああんたにみんなの前でこっぴどく振られてっからね!ララちゃんも今じゃ、どれだけ夜が下手なのか、粗末なものなのか、面白おかしく話してるくらいよ!笑えるねぇ~!』
と書いてあった。男として同情するが、そんな赤裸々な事を話さないで欲しい。特に母親に!元彼の夜の事情とか……狭い村なら仕方ないか。とほほ。
僕はあれが普通だと思っていたけれど、レオン様のあらゆるテクニックにどろどろに溶かされて、セックスとはかくも異なるものなのかと身に染みて分からせられた所だ。
レオン様は、僕をずっと見つめてくれた。怖いと思ったら抱きしめてくれて、身を縮こませても気付いてくれた。痛くないどころか、気を何度か飛ばすくらいに気持ち良くて、自分じゃなくなるくらいに乱されて、……すっごく、愛されているな、と実感した。
それはもちろん、そこに至るまで一年と何ヶ月か、手を繋ぎ、頬へチュッとキスをするだけの、優しいお付き合い期間があったからだろう。
良く考えればレオン様は立派な男性だし、僕よりお肉もたくさん食べるし、そういった欲が無いはずがない。それなのに、そんなの微塵も感じさせない清らかなお付き合いだったから、僕は心から安心して身を委ねることが出来た。はぁ、レオン様、すき……。
「迷宮は踏破したが、これからどうする?どこへ行くんだ?」
「ガルフ……、そうだね。暫く蜜月を過ごしたら、北へ行ってみようか。雪景色もフェリスに似合うと思うんだ」
「それはいいわね。言っておくけど蜜月はあんたたちだけよ。あたくし、フェリスちゃんにもこもこのふわふわケープを着せたいの。もちろんふわふわの耳付きの……ふふふ、布と糸、お買い物しなくちゃ」
「北の迷宮か。たしかに俺は暑いより寒い方が好きだ。そちらで居を構えてもいいし」
「北でなくてもいいでしょ?わざわざそんな寒いとこに住みたくないわよ」
「そうだな。うん。お前は寒がりだもんな……で、いつ結婚する?ヴァネッサ」
「ばか、するわけないでしょ!?」
ふふふっ。ヴァネッサ様、顔、真っ赤。嬉しいよね。
によによする口元を押さえて眺めていると、不意に近付いてきたレオン様に肩を抱かれる。
「私たちも、いつ結婚しようか?一度は王都に帰らなくちゃならないから、その前がいいね。横槍入ったら面倒だし。家は、フェリスがいればどこでも良い。そうだね……月が綺麗に見える所が、いいかな」
「……っ、も、もう、レオン様!僕をドキドキさせるのも、大概にして下さい!」
「ははっ、もー、可愛いんだから。たまんないよね」
賑やかな僕たちの旅は、まだまだ続きそうだ。
End
「……?」
「君に煽られては、私の理性は風前の灯だ。歳上の余裕なんて音を立てて崩れていく」
「煽っ……?ですか?」
「誰のせいだと思う?フェリス。でも歳上だから、いつでも止まるからね。脳の血管が切れたとしても私は止まってみせる。分かったね」
「それは危ないので、どうか無理をなさらないで下さい」
「ああっ……もう……っ!」
レオン様はますます僕の身体にたくさんの痕を付けると同時に、指をゆっくり、ぬるぬると入れて、擦る。すると。
「……っぁあ!?えっ、あっ、あんっ!?」
「気持ちいい?」
「う……あっ、いい、です……っ!」
ビクン!と身体が跳ねた。自分では制御できない声と、勝手に動く腰の卑猥さに赤面する。なにを、されたの?
レオン様はうっそりと笑って僕の顔を眺めながら、そのやけに跳ねてしまう箇所をぐっと押してくる。
「はぁ、っ、あっ!あっ、あっ、あっ、」
「あー、えっろ。かわい。えっろ。好き。フェリス。かわいいね」
耳元で囁かれる。たまらなくなって、レオン様にしがみついた。僕ではついぞ得られなかった逞しい、筋肉の鎧だ。
「はぁ、少しきついかもしれないけど……ごめんね」
そう言って、レオン様はようやく下穿きを脱いだ。そしてバチィィイン!と腹に当たって跳ね返るほどのモノに怖気付く。おっ……大人のおちんちんだ。いや、僕だってもう18だ、大人のおちんちんのはずだけど、レオン様のレオン様はあまりにも大人だった。
バキバキにいきり立ち、血管も浮き出た生々しい怒張は、僕の小さなアナルにぴたと当てがわれた。少し身を丸め、硬くしてしまうのは、次の衝撃に備えるための、防御反応か。
だけど、いつまでも入ってくる気配はない。ふんわりと降ってくるキス。柔らかな愛撫。甘くとろけた綺麗な碧眼が、僕を見つめていた。
「力を抜いてね。ゆっくりするから、痛かったら……俺の身体のどこでも噛んで、痛みを与えて」
「……っ、そんな、」
「君だけに我慢をさせる気はないからね。愛しているよ、フェリス」
ぬち。
ぬち。
慎重に、ゆっくりと入ってくる。もどかしい。焦らされているみたい。
覆い被さっているレオン様からは、苦悶の汗が流れて、僕の肌にぴちょんと落ちた。
とてもきつい。あの人ならすぐに突き入れてガシガシと好きなままに動く。レオン様だってそうしようと思えば出来るはずなのに、しない。
レオン様の優しさに泣けてきてしまった。ぽろぽろと泣く僕に焦ったレオン様は、動きを止めてしまう。けれど、違う。もっと奥に。もっとくっついて、混ざり合いたい。
大きく開いていた脚で、レオン様をぎゅっと挟んだ。自分から腰を浮かせて、誘い込む。
「~~っ、フェリス……!」
「あ、う、う、……っ!来て、下さい……!」
とても熱い抱擁。と共に、僕の中にレオン様がねじ込まれて、息も絶え絶えになりながらつるつるのシーツを握った。
やはり奥は、少し敏感すぎる。それだけいっぱい入っているのに、まだレオン様の腰は僕のお尻に付いてない。けど…………気持ちが溢れて、止まらない。レオン様は歯を食いしばるほどに我慢をして動かないでいる。
「れお、さま……我慢、しないで」
「……くっ!」
「嬉しい……です。大好き……レオン様」
うっとりと幸せに浸り、レオン様を腕でも足でも抱きしめた。すると、とうとうなにか切れてしまったのだろう。
レオン様は、ものすごく色っぽく笑った。
ぐちっ!
「……ん……っ」
はい、った……!
圧迫された腹は、ぽこりと形を変えてしまうんじゃないだろうか。くらくらする頭はバカなことしか考えられなくて、思わずお腹を撫でてしまう。
するとレオン様は感じ入るように嘆息し、ずるり、と引き抜く。入れる。腰を引いて、くっつける。
意地悪なほどにゆっくりなその動作は、ますます僕を苦しめた。
「あっ!あんっ!アアアッ!すっ、ごい……!」
はぁ、はぁ、はぁ、ああ、なんて、気持ちいいの……?!
大人おちんちんの先っぽのくびれのところが、僕の中をゴリッと引っ掻いて、太い竿は硬く、熱く、満たしてくれる。
僕は全然動いていないのに感じすぎて、全身に汗をかいていた。あ、も、だめ……!
レオン様は断続的に腰を動かしながら、僕のペニスにも手を伸ばし――――先の方を、くにくにと撫でる。その刺激は今の僕に、完全に過分だった。
「ひぁあああッ!――――っ!」
快感が身体の芯を貫いた!そしてそのまま掴まって、離してくれない!
きゅうぅっ、と下腹が締まったと同時にレオン様も放ったのか、中に温かいものが流れ込んでくる。それがまた気持ちいい!気持ちいい……っ!
「あっ……あっ、……あっ、」
「ぷるぷるしてる……気持ち、良いね……?」
「は、い……っ、あっ、い、いいで、す……っ!」
痙攣する身体を抱き寄せられる。レオン様の、爽やかなオレンジのような香りにホッとして、だんだんと快楽の漣が引いていくのを感じて……、あれ?そういえば、レオン様のものは、入ったままで……。あれ?
「可愛い。油断してふにゃふにゃだね……」
「ゆだん……?」
ぱち、ぱち。討伐後の疲れも相まって瞼が落ちそうになるも、目の前のレオン様の目はパッチリ、もっと言うならギラギラとさえしていた。
そして、再び身体を揺さぶられることとなり…………朝が来ても、レオン様は僕を離すことはなかった。
「うう……」
「可哀想に。フェリスちゃん。ああ!こんな狼に食べられちゃって……色気やっばいわね……」
三日後、僕はヴァネッサ様と朝食をちびりちびりと食べていた。腰は立たないし部屋から動けないので、部屋に持ってきてもらったのだ。
僕と違い、ヴァネッサ様は全くもってシャンとしている。あの体格の良いガルフ様との夜をこなしてその強靭さはすごい。僕も鍛錬しなくちゃな……と決意を新たにしていると、ヴァネッサ様に笑われてしまった。
「もう、フェリスちゃん。あたくしとガルフはそんなんじゃないのよ。スポーツとか、ぶつかり稽古みたいなもん。次の日スッキリ起きるための運動くらいにしか思ってないのよ。レオンの、三日連続耐久戦のような狂気じみたものとは違うから、安心してちょうだい」
「ひえっ……そ、そんな……」
「ひどいなぁ、ヴァネッサ。私はいつだって真面目で爽やかだよ?」
「どこがよ、変態勇者。あたくしを使って下着に魔法収納付けさせたくせに……」
「おっと、それは言わないお約束だ。あちらでちょっとお話しようか、ヴァネッサさん?」
どうやら勇者様の知らなくていい秘密を聞いてしまったようだ。レオン様の下穿きの見た目と、出てきた凶器のサイズがどうみても見合わないのは、…………まさかね。
「……はよう。フェリス。故郷からの手紙が来ていたぞ」
「ガルフ様!ありがとうございます」
痛む腰をさすりながら、手紙を受け取る。
村を出て、もう二年も経ったんだなぁ。
僕の両親と弟は、相変わらずあの村に住み続けている。お父様の言った通り、勇者パーティーの一員を出したということで村への注目度が高まり、近隣の街までのちょっとした道を敷いてもらえたのだ。
僕の生家ということで国からの支援金も送られて、両親はそれを村の観光地化に投資した。ただし実生活は、そのお金に頼ることなく質素堅実な暮らしをしている。たまに、街へ買い物を楽しむようになったくらい。
『お前の好きなレモンパイの売り上げは好調だし、修行中の神官も訪れるようになったぞ。お前の力にあやかりたいとな。おとうさまは鼻が高い』
だそう。
うちのお父様は観光大使として色々な催し物や建物を考えて指示するのに忙しいみたい。村人たちから総スカン中の村長やアノンより、村長として敬われているとか。
あの人……アノンは、ララと結婚することになったらしい。子供が出来たから、と。
それを聞いても、僕は何にも感じなかった。
ああ、元気に生きているようで良かった。それだけ。
ただお母様が言うには、あんまり幸せそうには見えず、ララは別の男の人といるのを良く見かけるし、アノンは夕陽を見る度に黄昏るようになったそう。しまいには失恋の歌まで創作しているとか。
僕が村を出てからは、もう森へ無理に入るようなことはしなくなり、みんなからも『慈悲深い神官をキレさせるくらい無下に扱った奴』として、腫れ物に触れるような微妙な立場にいる。
『そりゃああんたにみんなの前でこっぴどく振られてっからね!ララちゃんも今じゃ、どれだけ夜が下手なのか、粗末なものなのか、面白おかしく話してるくらいよ!笑えるねぇ~!』
と書いてあった。男として同情するが、そんな赤裸々な事を話さないで欲しい。特に母親に!元彼の夜の事情とか……狭い村なら仕方ないか。とほほ。
僕はあれが普通だと思っていたけれど、レオン様のあらゆるテクニックにどろどろに溶かされて、セックスとはかくも異なるものなのかと身に染みて分からせられた所だ。
レオン様は、僕をずっと見つめてくれた。怖いと思ったら抱きしめてくれて、身を縮こませても気付いてくれた。痛くないどころか、気を何度か飛ばすくらいに気持ち良くて、自分じゃなくなるくらいに乱されて、……すっごく、愛されているな、と実感した。
それはもちろん、そこに至るまで一年と何ヶ月か、手を繋ぎ、頬へチュッとキスをするだけの、優しいお付き合い期間があったからだろう。
良く考えればレオン様は立派な男性だし、僕よりお肉もたくさん食べるし、そういった欲が無いはずがない。それなのに、そんなの微塵も感じさせない清らかなお付き合いだったから、僕は心から安心して身を委ねることが出来た。はぁ、レオン様、すき……。
「迷宮は踏破したが、これからどうする?どこへ行くんだ?」
「ガルフ……、そうだね。暫く蜜月を過ごしたら、北へ行ってみようか。雪景色もフェリスに似合うと思うんだ」
「それはいいわね。言っておくけど蜜月はあんたたちだけよ。あたくし、フェリスちゃんにもこもこのふわふわケープを着せたいの。もちろんふわふわの耳付きの……ふふふ、布と糸、お買い物しなくちゃ」
「北の迷宮か。たしかに俺は暑いより寒い方が好きだ。そちらで居を構えてもいいし」
「北でなくてもいいでしょ?わざわざそんな寒いとこに住みたくないわよ」
「そうだな。うん。お前は寒がりだもんな……で、いつ結婚する?ヴァネッサ」
「ばか、するわけないでしょ!?」
ふふふっ。ヴァネッサ様、顔、真っ赤。嬉しいよね。
によによする口元を押さえて眺めていると、不意に近付いてきたレオン様に肩を抱かれる。
「私たちも、いつ結婚しようか?一度は王都に帰らなくちゃならないから、その前がいいね。横槍入ったら面倒だし。家は、フェリスがいればどこでも良い。そうだね……月が綺麗に見える所が、いいかな」
「……っ、も、もう、レオン様!僕をドキドキさせるのも、大概にして下さい!」
「ははっ、もー、可愛いんだから。たまんないよね」
賑やかな僕たちの旅は、まだまだ続きそうだ。
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