聖女の証

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
上 下
78 / 143

第25話『ただ、お話をしたいなと考えているのです』②

しおりを挟む
「陰魔さん」

「マーセ!!」

「あー。マーセさん」

「なぁに!? 私のお姫様! あれ? この場合だと私が王子様になるの!? どうしよう。私、王子様なんてやった事ない! どうすれば良いの!? でもお姫様にリードされる王子様なんて私の理想じゃない!! そう! 王子様は格好良くて完璧でいつだってお姫様を導いていて……」

「あの。まず訂正したいんですが、私、お姫様じゃありません」

「嘘だ!!!!!」

マーセさんの声の勢いで、家が揺れ、外で鳥が飛び去って行く音が聞こえた。

「ど、どどどどどうしてそんな嘘を吐くのかなぁ! カナカナカナァ!」

「いえ。嘘ではなくて、ですね」

「うしょだ!! だって、そんなに綺麗でお姫様じゃなかったらなんだっていうの!? 生まれた瞬間からプリンセスフォームで生まれてきたみたいな見た目してぇ! レインボーバーストしながら産声を上げたんでしょぉおお!?」

「お待ちなさい! マーセ!」

「この声は! お姉様!!」

どこから聞こえてきた声に、私はその声がしているであろう方へ目を向けると、怪しげな仮面を付けた人が腕を組みながらやたら大きな窓の向こうに立っていた。

窓はおそらく勝手に開かれている。

「生まれた時からプリンセスな方なんて居ないわ! 皆、絶望を抱えながらも希望と共に夢を追いかけて本当のプリンセスになるハズよ!! つまり、彼女もそうなのだわ!」

新しく現れた陰魔さんは、やや高い窓を乗り越えて中に入ろうとしたが、足を引っかけてしまい部屋の中に転びそうになってしまった。

私は咄嗟に風の魔術を使って移動して、その新しく現れた陰魔さんを支える。

「っ!!!?」

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ、貴女は、もしや私のお姉様?」

「え?」

「そんな! お姉様のお姉様だなんて、薔薇さまだと言うの!? では、お姉様は」

「私は薔薇のつぼみという事になるわ。そしてマーセ! 貴女は薔薇のつぼみの妹よ!!」

「なんて事!! 私、まだまだお姉様方から遠い存在だったのですね!?」

「いいえ。そんな事ないわ。マーセ。貴女もいずれ一輪の薔薇になるのですから」

「お姉様!!」

なんだこれ?

もうここまで来ると彼女たちが何を話しているのかさえ分からない。

完全に置いてきぼりである。

しかし、長い間見てなかった間に陰魔さん達も独特の文化を築いているんだなと感慨深い気持ちになる。

楽しそうだし。

多分良い事なんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

処理中です...