上 下
206 / 246

第67話『世界を変えた一言』(ヤスミン視点)②

しおりを挟む
「え?」

「聖女様はシーラ様?」

「シーラ様は聖女様?」

「シーラ様が、聖女様!」

「シーラ様が聖女様だったんだ!!」

「あ、いや、ちが」

「シーラ様は聖女様だ!!」

私は自分が間抜けにも呟いてしまった言葉がすごい勢いで広がってゆくのをみて、どうにかそれを止めようとしたが、無理だ。

止まらない。

加速的に広がっていく私から始まったデマは、瞬く間に体育館全体に広がってゆく。

「しかし、俺はあの子が聖女だと聞いたぞ?」

「確かに」

「私もそう聞いたわ」

「いや、しかし、あの勇猛果敢な姿を見ろ。あれはどう見ても聖女ではない」

「そうよね。聖女様ってもっと静かで、気高くて、優しくてって感じだもんね」

「つまり、どういう事だ?」

「もしかして、あの少女は聖女ではない……?」

「ならなんで聖女だなんて噂を流すんだよ」

「決まっているだろう! シーラ様が真実聖女様だからだ!!」

「っ! そ、そうか! 敵の狙いはシーラ様! そして、シーラ様はシーラ様である以上に聖女様だから、狙われた!」

「つまり、あの少女はそんなシーラ様を守る為に、自らを聖女だと言い、囮になろうとしていたのか!」

「なんという気高い少女だ!」

「私、知ってるわ! お婆ちゃんから聞いた昔話! 前に聖女様が現れた時、聖女様をお守りして、生涯乙女として仕えた従者が居たって! 戦乙女、戦乙女よ!」

「おぉ! 戦乙女レナ! そして聖女シーラ様!!」

「なんてこった! 俺たちは今、伝説の中に居るのか!!」

「うぉぉぉおお!! シーラ様万歳! レナ様万歳!!」

「……」

やったー!!

やらかしたー!!

お母様に、貴女の妄想癖はいつかとんでもない事をやらかすわよ。と言われ続けて十七年!

遂に娘はとんでもない場所で、とんでもないやらかしをしましたー!!

親友であるレナに何という事を……を?

ふと、私は壇上に立っているレナを見ていたのだが、聖女ではなく、戦乙女だと呼ばれているのに……喜んでいる様に見える?

そんなバカな。

いや、だって聖女様だよ?

全乙女の憧れ聖女様だよ?

そんな聖女様より、戦乙女の方が良いなんて、そんな事。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

処理中です...