上 下
167 / 246

第53話『ヤンデレキャラのバッドエンドはハッピーエンド』③

しおりを挟む
あぁ、愛があるので、そういう行為も当然してくるぞ。R18じゃないから、具体的な所までは出さないけど。

なんならグッドエンドよりも、そういう描写が多いせいで、トリスタン推しは、このバッドエンドがトゥルーエンドとか言っている人も居るくらいだ。

いや、まぁ、気持ちは分からなくも無いけどさ。

遊び人風のイケメンが自分を監禁してる癖に捨てないでとか縋ってくるのは、まぁ独特の良さがあるよね。癖というか。

冷静に考えると早く病院に行け。案件な訳だけど。

退廃的な世界にしかない良さもあると言えばある。

私は理解のある女。受け入れますよ。そんなキャラもね。

ただ、まぁ。それもこれもゲームならという話だ。

ここはゲームの世界ではない。現実の世界である。

レナちゃんを監禁などさせてたまるかという話だ。

いや、レナちゃんが、レナちゃんとトリスタンの二人きりの世界が良いと思っているのなら、邪魔をするのはどうかと思うけど。

少なくとも私が知っている限り、そういう趣味をレナちゃんは持っていなかった筈である。

ならば、いざレナちゃんが敗北したとしても、私がバッドエンドになる事を防げば良い。

簡単な話だ。

「おや。シーラ様。こんにちは」

「あぁ、トリスタン君。こんにちは」

「シーラ様も決闘をご見学に?」

「そうですね。レナちゃんもトリスタン君も私の生徒ですから」

私がいつもの笑顔でそう答えるとトリスタン君はチャラ男らしい笑顔で笑った。

なんやねん。

「何か?」

「いえいえ。シーラ様も嘘を吐くのだなと」

「嘘……?」

「シーラ様が気になったのは、レナが俺に負けた時どうなるか。という所でしょう?」

スッと細められた目で射抜かれて、私は思わず一歩後ずさってしまった。

「ご心配なさらなくても、レナは俺が大切に、大切に保護しますよ」

「大切にするというのは、世界から隔離するという事ではありませんよ!」

何かトリスタン君が怖くて、思わず口走ってしまったが、トリスタン君は私の言葉に疑問を持つ事はなく、より深い笑みで私を真っすぐに見据えた。

「そこまでご存知でしたか。であれば話は早いですね。もしレナが負けた時はシーラ様も楽園にお越しください」

「え!? わ、私も!?」

「当然でしょう。レナには貴女が必要だ」

「……」

私はトリスタン君を警戒しつつ、魔法を使おうとした。

決闘自体をなかった事にしようと。

しかし。

「あぁ、ソレは止めた方が良いですよ。俺もこの学園を壊したくはないですから。孤児院もね」

「っ」

「そんな怖い顔で睨まなくても、貴女が邪魔をしなければ何もしませんよ。ただ俺とレナを見守ってくれていればね」

「……分かりました」

私は右手を握りしめながら、決闘を見守る事にした。

トリスタン君が明確に敵であるならば、止める事も可能だけど、今はまだその時じゃない。

それに、そうだ。

レナちゃんが決闘に勝てば良いのだ。

レナちゃんが今どんな称号なのか、それは分からないけど。

多分『ふつうの女の子』か『優しい一輪花』のどちらかだろう。慈愛の値高そうだし。

間違っても、『特別教室の狂戦士』ではない筈だ。

もし、一番下の称号だったら、相当危険だけど……大丈夫だよね? レナちゃん。

私は両手を握りしめながらレナちゃんを見守るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

家族と移住した先で隠しキャラ拾いました

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」  ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。  「「「やっぱりかー」」」  すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。  日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。  しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。  ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。  前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。 「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」  前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。  そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。  まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――

処理中です...