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第51話『巣立つ時は今そこに』③
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キッフレイ聖国に戻ってきた私はナルシス君が居る場所へと向かって、廊下を歩いていた。
そして、ナルシス君が居る部屋の扉を開けて、驚いているレナちゃん、ナルシス君、マクシム君をそのままに私は近くのソファーにうつ伏せで倒れ込んだ。
「……失礼します」
「え、えぇ。いくらでもどうぞ」
「だぅー!」
クッションに顔を押し付けて、お腹の中にたまった不満を撒き散らした。
不満が溢れすぎてクッションを食べてしまいそうである。
「あのー? シーラ様……?」
「はい」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫でふ」
「そ、そうですか」
マクシム君の声が離れていくのを感じて、私は両腕をソファーに立てながら起き上がった。
そして叫ぶ。
「皆さんは幸せになりたいと思わないんですか!?」
「っ!?」
「え、えと?」
私は感じていた想いを吐き出してゆく。
「自分たちでどうしようもない問題があるのなら、言えば良いじゃないですか! 私に! 何でも出来るんですよ!? 別にお金だって欲しくも無いし、物だって要らない! ただ、助けてって言えば良いだけなのに!」
「……シーラ様」
私は何だか感情が高ぶって溢れてきた涙を手で拭う。
「死んじゃう所だったんですよ!? みんな、みんな! それなのに、変な意地を張って! 要らないんですよ! そういうのは! 生きてこそじゃないですか!」
「シーラ様。だからこそなんですよ」
「……?」
「私たちは生きています。だからこそ己の力で生きて行かなくてはいけないのです」
「意味が分かりません」
「私たちは母に抱かれ、この世界に生まれ落ちました。しかし、いつまでも母と共に生きてゆく事は出来ないのです。だからこそ、私たちは己で出来る事は己でやりたいのです」
「……」
「無論シーラ様としては受け入れられない物かもしれませんが」
「はい。まったく。これっぽっちも分かりません」
私がムッと口を尖らせて、ナルシス君を見据えると、クスっとレナちゃんが笑う。
そして、ナルシス君の近くに座っていたレナちゃんが私のすぐそばまで歩いてくると、そのまま私の隣に座って寄りかかる。
「私は、シーラちゃんにいつまでも甘えてるよ。それじゃ駄目? 足りない?」
「うん」
「ふふ。シーラちゃんは我儘だなぁ」
「そうだよ。私は我儘なエルフなんだから」
「そっか。そっか。でもさ。残念だけど。世界はシーラちゃんの思い通りには進まないんだよ」
「……むぅ」
「私たちはどれだけシーラちゃんが望んでも、いつか離れてゆくし。思い出だけの存在になっちゃう」
「そんなの!」
「だからさ。私もシーラちゃんに我儘言うから、シーラちゃんも私に我儘を言ってよ」
「レナちゃんに?」
「そう。きっとそれが家族になるって事だと私は思うからさ」
レナちゃんが私を抱きしめながら言った言葉に、私は何かを言おうとしたのだけれど、結局何も思いつかなくて、そのまま黙ってしまった。
そして、私は、何かが急激に変わろうとしている様な不思議な予感を受けるのだった。
そして、ナルシス君が居る部屋の扉を開けて、驚いているレナちゃん、ナルシス君、マクシム君をそのままに私は近くのソファーにうつ伏せで倒れ込んだ。
「……失礼します」
「え、えぇ。いくらでもどうぞ」
「だぅー!」
クッションに顔を押し付けて、お腹の中にたまった不満を撒き散らした。
不満が溢れすぎてクッションを食べてしまいそうである。
「あのー? シーラ様……?」
「はい」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫でふ」
「そ、そうですか」
マクシム君の声が離れていくのを感じて、私は両腕をソファーに立てながら起き上がった。
そして叫ぶ。
「皆さんは幸せになりたいと思わないんですか!?」
「っ!?」
「え、えと?」
私は感じていた想いを吐き出してゆく。
「自分たちでどうしようもない問題があるのなら、言えば良いじゃないですか! 私に! 何でも出来るんですよ!? 別にお金だって欲しくも無いし、物だって要らない! ただ、助けてって言えば良いだけなのに!」
「……シーラ様」
私は何だか感情が高ぶって溢れてきた涙を手で拭う。
「死んじゃう所だったんですよ!? みんな、みんな! それなのに、変な意地を張って! 要らないんですよ! そういうのは! 生きてこそじゃないですか!」
「シーラ様。だからこそなんですよ」
「……?」
「私たちは生きています。だからこそ己の力で生きて行かなくてはいけないのです」
「意味が分かりません」
「私たちは母に抱かれ、この世界に生まれ落ちました。しかし、いつまでも母と共に生きてゆく事は出来ないのです。だからこそ、私たちは己で出来る事は己でやりたいのです」
「……」
「無論シーラ様としては受け入れられない物かもしれませんが」
「はい。まったく。これっぽっちも分かりません」
私がムッと口を尖らせて、ナルシス君を見据えると、クスっとレナちゃんが笑う。
そして、ナルシス君の近くに座っていたレナちゃんが私のすぐそばまで歩いてくると、そのまま私の隣に座って寄りかかる。
「私は、シーラちゃんにいつまでも甘えてるよ。それじゃ駄目? 足りない?」
「うん」
「ふふ。シーラちゃんは我儘だなぁ」
「そうだよ。私は我儘なエルフなんだから」
「そっか。そっか。でもさ。残念だけど。世界はシーラちゃんの思い通りには進まないんだよ」
「……むぅ」
「私たちはどれだけシーラちゃんが望んでも、いつか離れてゆくし。思い出だけの存在になっちゃう」
「そんなの!」
「だからさ。私もシーラちゃんに我儘言うから、シーラちゃんも私に我儘を言ってよ」
「レナちゃんに?」
「そう。きっとそれが家族になるって事だと私は思うからさ」
レナちゃんが私を抱きしめながら言った言葉に、私は何かを言おうとしたのだけれど、結局何も思いつかなくて、そのまま黙ってしまった。
そして、私は、何かが急激に変わろうとしている様な不思議な予感を受けるのだった。
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