77 / 246
第24話『第1回シーラ様杯開幕』②
しおりを挟む
気合十分で始まった第一回戦。
相手はどこぞの地方で冒険者をやっているという男だった。
「ここまで勝ち残ってきたという事は、かなりの使い手とみた。よろしく頼むよ」
「……はい」
私は目の前に立つ男を見た。
軽装の鎧は、小さな傷が多くあり、顔にも大小様々な傷があるという事は、それなりに修羅場を歩んできたのだろう。
しかも、おそらくは利き腕ではない方の腕に付いている傷の付き方から考えるならば、誰かを庇って付いたような傷だと思われる。
無論、この人が迂闊でついた傷という可能性もあるけれど。
応援席でこの人の応援をしている人が多い事から考えると、それだけ慕われているという事になる。
なるほど。
でも駄目!!
全然ダメ!!
だって髭を整えてないし、髪だってぐちゃぐちゃ!
とてもじゃないけど、シーラ様の隣に立つ相手として相応しくない!!
シーラ様はあんなにもお綺麗なのに、その隣がこんな見るからに山で生きてます。みたいな人では釣り合わない。
だから……人としては良いかもしれないけど、私が気に入らないから不合格だ。
「……倒します」
私は武器を構えて、飛び込んだ。
一回戦目の男は非常に強く、上手く私の攻撃を受け流すが、途中からハッキリと弱点が見えた。
そう。なるべく私を傷つけない様にしているのだ。
無理に一歩踏み出しても攻撃しないし、その攻撃が私の体を傷つける可能性があるのなら、遠ざけてしまう。
そうなれば、どれだけ実力差があろうとも、勝てるわけがないのだ。
結果、彼は破れ。辛くも私の勝利となった。
「私の負けか」
「貴方が手加減をしていなければ、私が負けていました。ですが、その甘さは、シーラ様を危険にさらします。そんな人を勝たせる訳にはいきません」
「……そうだな。私には覚悟が足りなかった様だ。今日は実に楽しかったよ」
「一応確認ですが、貴方は勝って、何を求めていたんですか?」
「いや大した事は無いんだ。ただ、私の弟子がね。昔シーラ様に助けられたという事で礼を言いたいと、な。ただ、シーラ様に近づくのは難しくてな、こうしてトーナメントに参加しただけさ」
「そうですか。では、私の方からシーラ様に話を通しておきます。トーナメントが終わってから学園にある孤児院に来てください」
「良いのか?」
「はい。貴方は甘い人でしたが、強く正しい人でしたから」
護衛じゃないから別に良い。
護衛だったら色々と駄目だけど。
そして私は冒険者の人と別れ、次に進んだ。
相手はどこぞの地方で冒険者をやっているという男だった。
「ここまで勝ち残ってきたという事は、かなりの使い手とみた。よろしく頼むよ」
「……はい」
私は目の前に立つ男を見た。
軽装の鎧は、小さな傷が多くあり、顔にも大小様々な傷があるという事は、それなりに修羅場を歩んできたのだろう。
しかも、おそらくは利き腕ではない方の腕に付いている傷の付き方から考えるならば、誰かを庇って付いたような傷だと思われる。
無論、この人が迂闊でついた傷という可能性もあるけれど。
応援席でこの人の応援をしている人が多い事から考えると、それだけ慕われているという事になる。
なるほど。
でも駄目!!
全然ダメ!!
だって髭を整えてないし、髪だってぐちゃぐちゃ!
とてもじゃないけど、シーラ様の隣に立つ相手として相応しくない!!
シーラ様はあんなにもお綺麗なのに、その隣がこんな見るからに山で生きてます。みたいな人では釣り合わない。
だから……人としては良いかもしれないけど、私が気に入らないから不合格だ。
「……倒します」
私は武器を構えて、飛び込んだ。
一回戦目の男は非常に強く、上手く私の攻撃を受け流すが、途中からハッキリと弱点が見えた。
そう。なるべく私を傷つけない様にしているのだ。
無理に一歩踏み出しても攻撃しないし、その攻撃が私の体を傷つける可能性があるのなら、遠ざけてしまう。
そうなれば、どれだけ実力差があろうとも、勝てるわけがないのだ。
結果、彼は破れ。辛くも私の勝利となった。
「私の負けか」
「貴方が手加減をしていなければ、私が負けていました。ですが、その甘さは、シーラ様を危険にさらします。そんな人を勝たせる訳にはいきません」
「……そうだな。私には覚悟が足りなかった様だ。今日は実に楽しかったよ」
「一応確認ですが、貴方は勝って、何を求めていたんですか?」
「いや大した事は無いんだ。ただ、私の弟子がね。昔シーラ様に助けられたという事で礼を言いたいと、な。ただ、シーラ様に近づくのは難しくてな、こうしてトーナメントに参加しただけさ」
「そうですか。では、私の方からシーラ様に話を通しておきます。トーナメントが終わってから学園にある孤児院に来てください」
「良いのか?」
「はい。貴方は甘い人でしたが、強く正しい人でしたから」
護衛じゃないから別に良い。
護衛だったら色々と駄目だけど。
そして私は冒険者の人と別れ、次に進んだ。
13
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
解かり合えない二人
karon
ファンタジー
マリーアンヌは十歳の時真理という前世の名を思い出した。そしてこの世界は真理のやっていた乙女ゲームの世界だと気付く。
そして乙女ゲームのハーレムエンドを目指しことにする。
もちろん乙女ゲームには悪役令嬢がつきもの。
悪役令嬢はもちろん一筋縄ではいかなかった。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる