2 / 246
第1話『転生したのはエルフの里でした』②
しおりを挟む
しかし、こんな状況だというのに、私の喉は声を発する事が出来ず、意味のない音を僅かに漏らすばかりであった。
「先輩。痛いですか? でも、私はもっと、もぉーっと痛かったんですよ?」
ナイフがまた抜かれ、私は息を落ち着かせながら、何とか後輩を説得しようとした。
痛みを必死に堪えて口を開く。
「よ、宵闇、さん」
「嫌ですねぇ。咲姫って呼んで下さいよ。いつもみたいに」
正直名前で呼んだ覚えは無いけど、この状況でそんなことを言える勇気が私にある訳もなく。
私は、笑顔を作りながら、サキちゃんと呼んだ。
それだけで、サキちゃんは嬉しそうである。
このまま何とか助かる流れに持って行きたいものだ。
「愛してるよ。咲姫って言って下さい」
「あ、アイシテルヨ? サキ?」
「うふふ。私も愛してますよ。先輩」
満面の笑みでそう答える宵闇さんに、私がぎこちないながらも、笑顔を作り、何とか立ち上がろうとした。
このまま逃れる事が出来そうだ。
そう思っていたのだが、ここで不幸が訪れる。
何と付けっぱなしにしていたゲームから、放置音声が流れ始めたのだ。
この放置音声とは、ゲームを放置している時にだけ聞くことが出来るボイスで、わざわざこのボイスを聞く為だけにゲームを付けっぱなしにして、待つ人も居るくらいだ。
そして、素晴らしいダンディな声がリビングの方から響き渡った。
『いつまで待たせるんだ? 僕はもう我慢の限界だよ』
痺れる様な声と、素晴らしい演技でアンニュイなキャラクターボイスが聞こえてくる。
このキャラクターは私のお気に入りの声優さんがボイスを担当しているので、何度も聞きたくなる様な声なのだが……。
残念ながら、このボイスが私の人生を終わらせる事となった。
最期に見たのは、怒りに染まった宵闇さんの顔で、私はこれから少しして、意識を完全に暗闇へ叩き込まれるのだった。
「先輩。痛いですか? でも、私はもっと、もぉーっと痛かったんですよ?」
ナイフがまた抜かれ、私は息を落ち着かせながら、何とか後輩を説得しようとした。
痛みを必死に堪えて口を開く。
「よ、宵闇、さん」
「嫌ですねぇ。咲姫って呼んで下さいよ。いつもみたいに」
正直名前で呼んだ覚えは無いけど、この状況でそんなことを言える勇気が私にある訳もなく。
私は、笑顔を作りながら、サキちゃんと呼んだ。
それだけで、サキちゃんは嬉しそうである。
このまま何とか助かる流れに持って行きたいものだ。
「愛してるよ。咲姫って言って下さい」
「あ、アイシテルヨ? サキ?」
「うふふ。私も愛してますよ。先輩」
満面の笑みでそう答える宵闇さんに、私がぎこちないながらも、笑顔を作り、何とか立ち上がろうとした。
このまま逃れる事が出来そうだ。
そう思っていたのだが、ここで不幸が訪れる。
何と付けっぱなしにしていたゲームから、放置音声が流れ始めたのだ。
この放置音声とは、ゲームを放置している時にだけ聞くことが出来るボイスで、わざわざこのボイスを聞く為だけにゲームを付けっぱなしにして、待つ人も居るくらいだ。
そして、素晴らしいダンディな声がリビングの方から響き渡った。
『いつまで待たせるんだ? 僕はもう我慢の限界だよ』
痺れる様な声と、素晴らしい演技でアンニュイなキャラクターボイスが聞こえてくる。
このキャラクターは私のお気に入りの声優さんがボイスを担当しているので、何度も聞きたくなる様な声なのだが……。
残念ながら、このボイスが私の人生を終わらせる事となった。
最期に見たのは、怒りに染まった宵闇さんの顔で、私はこれから少しして、意識を完全に暗闇へ叩き込まれるのだった。
20
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる