上 下
13 / 16
ダニエル編

04

しおりを挟む


アンジェラが我が家に来た翌日、なぜか幼馴染のグスタフが予告もなくやってきた。奴は、何故かアンジェラを見るなり目を見開き、すぐに嫌悪に満ちた顔で彼女を睨みつけた。そして、彼女に近づき挨拶もせずに無礼なもの言いをした為、俺は怒りが湧いた。アンジェラは、失礼な事を言われても健気に返そうとしていたが俺が止めに入った。


「あんた、みない顔だけど…誰?なんで、この家にいる。」
「…グスタフ。突然来たと思ったら随分な態度だな?彼女は、大事な客人だ。」
「…んぐ?」

どさくさに紛れて、彼女を後ろから抱きしめて、何かを言いかけていた可愛い唇を塞いだ。俺の行動にアンジェラもグスタフも固まっているが気にしない。

ちらりと、シャーリーを見ると我関せずで優雅に紅茶飲んでいた。

「いくら、幼馴染のお前でも彼女に失礼な態度を取るなら許さない…覚えておけ。」


彼女を侮辱する奴は許さない。その意味も込めて、グスタフを睨みつけた。手の置き場に困り、さりげなくアンジェラのお腹をサワサワと撫でる。


「ダニー…なんで、君は…。」

グスタフは、俺の態度にショックを受けた様だったが、知るか。しばらくアンジェラのお腹を撫でながらグスタフを、睨むという妙な構図だったが、沈黙を破ったのは優雅に紅茶を飲んでいたシャーリーだった。


「グスタフ兄様、彼女はアンジェラ。私の大切なお友達なの。しばらく、この屋敷に滞在するからくれぐれもよろしくね?」
 

ニコッと、有無を言わせないシャーリーの微笑みにグスタフも逆らえないのか、小声で「あぁ…。」と返事をして、落ち込んで帰っていった。
ナイスだ、妹よ。

「すまなかったな…アンジュ。グスタフが失礼な態度を取って…辛かったろう?」
「い、いえ。平気ですから…あっ。」

彼女の耳元で囁いて、チュッと耳たぶにキスを落とす。あっと、声が出てめちゃくちゃ可愛らしい。


というか、恋人でもないのにどさくさに紛れて耳にキスを落としてしまったが、後悔などない。明らかに鈍そうな彼女だから、これくらいの行動を起こさなければ俺の事など意識をしてくれなさそうだ。

ーー俺はアンジュを必ず手に入れると決意した。

できれば両思いがいいが、アンジュの事だから大胆な行動で示さないと逃げかねない。その時は、泣かれても無理矢理でも繋ぎ止めてやる。今の俺は獲物を見つけた狩人の気分だ。
彼女を見ると、何やら考え込んでいて俺の方を見ようとしない。それが腹ただしく感じて、彼女に問いかけた。


「アンジュ…?どうしたんだい。何を考えている?」
「へっ?!わわっ、ダニエル様⁈」

彼女は、俺に驚き距離を取ろうとしたため、すかさず詰め寄った。
 
「どうした?アンジュ…。」
「いっ、いえ、あの…ち、近すぎませんか?」
「そうか?君の顔がよく見える。」

俺が微笑んでそう言うと、彼女は俯いたがその白い頬に朱が差したのを俺は見逃さなかった。

もしかして、彼女も俺に気があるのか?

浮かれていた俺は、この時とんでもない思い違いをしていたのだが、それは置いておこう。

…まさか、彼女が俺で妄想していたなんて露にもおもわなかったのだから。



アンジュが我が家に滞在するようになり、俺の生活はそれはそれは健全なものに変わって行った。
夜な夜な出歩いて、していた火遊びをやめて誘われても応じなくなったし、たまに襲われたが、なんとか撃退してやり過ごしていた。
あの、変態国王兄弟からの呼び出しにも行くのは、行ったが見るに徹してプレイには混じらなかった。


本当、国王がしつこかったが何とか言いくるめた。



やっかいなのは、グスタフだった。
あいつは、家が近所なのもあるし使用人達にも顔が効くもんだから、人の寝込みを襲いに来るのだ。
男の朝の生理現象を利用されて、起きたら喘ぎながら腰振ってた事が数回あった。気づかない俺もいけないが、アイツも相当だと思う…。
まぁ、グスタフの件に関しては俺が悪かった事もあるんだが…。俺が男女見境なく遊び歩いてるとこを見かけたアイツは、それまで心の奥に抑えてた俺への恋情が爆発して、半分ヤケになって俺を襲ってきた。
俺は、兄弟の様に育った彼の事を見捨てる事ができず、身体だけの関係を続けてしまった。その結果、グスタフを誰にでも尻を開くビッチにしてしまったのだ…。俺も人のこと言えないけど…。
とりあえず、グスタフには悪いがアンジュに誤解されたくないから当面、屋敷に出入り禁止にしよう。
アイツには、幸せになれるよう可愛がってくれるいい男を紹介してやろう。うん。



俺の願いはただ一つ、彼女が欲しい。
その為なら、どんな事だってする。例え、彼女に蔑まれても、泣かれても。




ーー俺の心に宿ったのは、彼女に対する恋心と仄暗い独占欲と執着心だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

竜王陛下の番……の妹様は、隣国で溺愛される

夕立悠理
恋愛
誰か。誰でもいいの。──わたしを、愛して。 物心着いた時から、アオリに与えられるもの全てが姉のお下がりだった。それでも良かった。家族はアオリを愛していると信じていたから。 けれど姉のスカーレットがこの国の竜王陛下である、レナルドに見初められて全てが変わる。誰も、アオリの名前を呼ぶものがいなくなったのだ。みんな、妹様、とアオリを呼ぶ。孤独に耐えかねたアオリは、隣国へと旅にでることにした。──そこで、自分の本当の運命が待っているとも、知らずに。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【R18】さよなら、婚約者様

mokumoku
恋愛
婚約者ディオス様は私といるのが嫌な様子。いつもしかめっ面をしています。 ある時気付いてしまったの…私ってもしかして嫌われてる!? それなのに会いに行ったりして…私ってなんてキモいのでしょう…! もう自分から会いに行くのはやめよう…! そんなこんなで悩んでいたら職場の先輩にディオス様が美しい女性兵士と恋人同士なのでは?と笑われちゃった! なんだ!私は隠れ蓑なのね! このなんだか身に覚えも、釣り合いも取れていない婚約は隠れ蓑に使われてるからだったんだ!と盛大に勘違いした主人公ハルヴァとディオスのすれ違いラブコメディです。 ハッピーエンド♡

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

《R18》このおんな危険人物ゆえ、俺が捕まえます

ぬるあまい
恋愛
「……お願いします。私を買ってください」 身体を震わせながら、声を震わせながら、目の前の女は俺にそう言ってきた……。 【独占欲強め警察官×いじめられっ子女子大生】 ※性器の直接的な描写や、成人向けの描写がふんだんに含まれていますので閲覧の際はお気をつけください。

お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!

林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。 夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。 そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ? 「モンスターポイント三倍デーって何?」 「4の付く日は薬草デー?」 「お肉の日とお魚の日があるのねー」 神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。 ※他サイトにも投稿してます

【完】死にたがりの少年は、拾われて初めて愛される幸せを知る。

唯月漣
BL
「アンタなんか産まなきゃよかった」  コレが俺の母さんの口癖だった。  生まれたときからこの世界に俺の居場所なんてなくて、生きるためには何だってやるしかなかった。  毒親に育てられた真冬にとって、この世界で生きる事は辛い事以外の何者でもなかった。一人で眠るといつも見てしまう、地獄のような悪夢。  悪夢から逃れるため、真冬は今宵も自分を抱きしめてくれる一夜限りの相手を求め、夜の街で男を漁る。  そんな折り、ひょんな事から真冬はラーメン屋の店主、常春に拾われる。  誰にでも見返りを求めずに優しくする大谷常春という人物に、真冬は衝撃を受け、段々と惹かれていく。  人間の幸せとは何かを日々教えてくれる常春に、死にたがりだった真冬は、初めて『幸せになりたい』と願う。  けれど、そんな常春には真冬の知らない秘密の過去があった。残酷な運命に翻弄される二人は、果たして幸せになれるのだろうかーーーー!? ◇◆◇◆◇◆ ★第一章【優しさ垂れ流しお兄さん✕死にたがり病み少年】  第二章【明るく元気な大学生✕年上美人のお兄さん】です。 【含まれる要素】焦らし、攻めフェ、リバ体質のキャラ、お仕置き、くすぐりプレイ、顔射】等。 ☆エロ回には*を付けています。  一部に残酷な描写があります。   ★ムーンライトノベルズにも掲載中。 ※この物語はフィクションです。実際の事件や実在の人物とは一切関係ありません。犯罪行為を容認する意図等は一切ございません。

あと一週間で、聖女の夫になることができたのに……。残念でしたね。

冬吹せいら
恋愛
オーデンバム学園の卒業式の後、首席のリアム・ベルリンドを祝うパーティが行われた。 リアムは壇上で、自分はルイーザ・サンセットに虐めを受けていた。などと言い始める。 さらにそこへ、ルイーザの婚約者であるはずのトレバー・シルバードが現れ、彼女を庇うどころか、ルイーザとの婚約を破棄すると言い出した。 一週間後、誕生日を迎えるルイーザが、聖女に認定されるとも知らずに……。

この行く先に

爺誤
BL
少しだけ不思議な力を持つリウスはサフィーマラの王家に生まれて、王位を継がないから神官になる予定で修行をしていた。しかし平和な国の隙をついて海を隔てた隣国カリッツォが急襲され陥落。かろうじて逃げ出したリウスは王子とばれないまま捕らえられてカリッツォへ連れて行かれて性奴隷にされる。数年間最初の主人のもとで奴隷として過ごしたが、その後カリッツォの王太子イーフォの奴隷となり祖国への思いを強めていく。イーフォの随行としてサフィーマラに陥落後初めて帰ったリウスはその惨状に衝撃を受けた。イーフォの元を逃げ出して民のもとへ戻るが……。 暗い展開・モブレ等に嫌悪感のある方はご遠慮ください。R18シーンに予告はありません。 ムーンライトノベルズにて完結済

処理中です...