神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜

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最終章 愛と泡沫のアヴニール

第473話 同級生と息子

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「神木くーん!!」
「久しぶり~!」

 浴衣やオシャレな服装で、わらわらと集まって来た女子たちは、飛鳥が通う桜聖福祉大学で、同じく教育学部を専攻している女子大生たちだった。

「みんな、久しぶり」

 そして、久方ぶりにあった学友たちに向かって、飛鳥はにっこりと笑いかけた。

 これは、いつもの事。
 飛鳥は、どんな相手にも、にこやかに対応する。

 すると、その天使のような笑顔と、色っぽい浴衣姿を目にし、女子たちがウットリとした表情で騒ぎはじめる。

「神木くんて、やっぱ、何着ても似合うね~!」

「浴衣姿を見られるなんて、嬉しい!」

 ちなみに、この女子たちは、昨年出くわした女子の群れとは、全く別のグループだ。

 飛鳥程の人気者になれば、入れ替わり立ち代り、様々なグループが声をかけてくる。

 もちろんそれは、女子だけでなく、男子、さらには先生まで!

 きっと今日も、祭りの会場で、たくさん声をかけられるのだろう。

 そんなことを思っていると、女子大生たちは、飛鳥の前でヒソヒソと話し始める。

「ほら! 今がチャンスだよ」

「言ってみなよ!」 
 
「で、でも……っ」

 女子たちが、奥にいた控えめの女子に声をかける。

 赤い浴衣を着た、ボブヘアーの女の子。
 小柄で、まるで小動物のような、大人しそうな子。

 そして、その子は、隆臣も知ってる女の子だった。

「飛鳥……あの子、小松田さんか?」
 
「そうだよ。俺たちと同じ、桜聖高校に通っていた子」

 彼女の名前は、小松田こまつだ しずくさん。

 飛鳥と隆臣と同じ高校で、同じ大学を受験した同級生だ。
 
 しかし、高校時代は特に接点もなく、あまり話したことはなかった。

「ほら、勇気だして……せっかく会えたんだから!」

 すると、また女子のひとりが、小松田さんに話かけ、飛鳥は首を傾げる。

 何か話したいことがあるのだろうか?

「小松田さん、なに?」

 小松田に向けて優しく笑いかける。
 すると、小松田は、顔を赤らめながら

「あ、あの……今夜8時に、ステージの側まで来てくれない?」

「ステージ?」

 その言葉に、飛鳥はさらに首を傾げた。
 ステージって、なんのステージ?

 すると、困惑する飛鳥の横から

「小学校の方にステージがあるんだよ。太鼓の演奏とか手品とか、色んなイベントやってるの!」

「へー、そうなんだ」

 友達から聞いたのだろう。エレナが、自慢げに答えれば、飛鳥は、兄らしく妹の頭を撫でた。

 まさか、祭りの会場が、小学校まで拡大しているとは。昔は、神社側でしか祭りをしていなかったから、知らなかった。

 すると、どうやら飛鳥が理解したのを見届けたらしい、女子たちは

「じゃぁ、神木くん! 8時に絶対きてね! 約束だから!」

「え? あ、うん」

 すると、一方的に約束を取り付けた女子たちは、飛鳥の元から離れていって、飛鳥は『なんだろう?』と隆臣に訊ねる。

「ねぇ、なんの用だと思う? ステージで何かあるの?」

「さあな? でも、お前を呼び出す目的といえば、大体が告白だろ」

「………」

 そして、的確と言わんばかりの言葉を返され、飛鳥は苦笑いをうかべた。

「いやいや、祭りに来てまで!?」

「むしろ、祭りだからだろ」

「なんで、どういうこと!? それに、小松田さん、高校も一緒だったし、7年間も同じ学校にいて、今まで、そんな素振り一切なかったよ。それに俺、バレンタインすらもらったことないし」

「そうか。じゃぁ、秘めた恋だったのかもな」

「……っ」

 隆臣が、しんみり返せば、飛鳥は困り果てた。
 
 まさか、あの小松田さんが?
 もしかして、高校の時から、好きだった??

 すると、今度は、そんな飛鳥の肩を、華と蓮がポンと叩き

「さすが飛鳥兄ぃ! 神社に入った瞬間、告白の呼び出しを受けるなんて、もう、伝説になれるんじゃない?!」

「いつか、モテ神として君臨できる日がくるよ。まぁ、本命にはフラれたけど」

「おまえら、ケンカ売ってるよね?」

 兄が困ってるのを楽しんでいるような双子。
 それを見て、飛鳥がにっこりと黒い笑顔をうかべた。

 だが、そうして、わちゃわちゃと騒いでいる飛鳥たちを見つめながら、かなり複雑な表情をしている美女がいた。

「ねぇ、飛鳥って、いつもあんな感じなの?」

 そう、飛鳥の生みの母である、紺野 ミサだ。
 
「あんな感じって、そりゃ飛鳥は、顔よし性格よしで、かなりの人気者だぞ」

 そして、その問いに、侑斗が答えれば、ミサは『はぁ……』と深くため息をついた。

「そう、やっぱり、あーいう社交的なところは、侑斗に似てしまったのね」

「ん? なんだって? もしかして、ケンカ売ってる?」

「別に。でも、侑斗も女子社員に囲まれて、デレデレしてたってことを、ふと思い出したのよ」

「お前っ、俺は、デレデレなんてしてないからな!?」

「してたでしょ! 手作りのケーキとか貰ってきてたし、あれはどう見ても本気のケーキだったわ!」

「本気のケーキ? そんなの貰ったか?」

「もらってたわよ。覚えてないの?」

「全く。つーか、ケーキごときで、ヤキモチ妬いてたのかよ」

「っ……うるさいわね! 仕方ないでしょ、夫がモテまくってると心配にもなるのよ! はぁ、それなのに、飛鳥まで、モテる男になってるなんて」

「言っとくが、飛鳥がモテまくってる原因の大元は、お前の美貌だからな」

 性格よし!な息子だが、それ以上に、あの見た目の影響がはるかに大きい。

 だから、飛鳥がモテるのは、どちらかと言えば、ミサのせい。しかし、そんなことを言い争ったところで、なんの意味もない。

「まぁ、モテるのは悪いことじゃないだろ。それに、飛鳥が、それだけ良い男に育ってるってことだ」

「まぁ、そうだけど……でも飛鳥、今、好きな子がいるんでしょ?」

「え?」
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