348 / 507
第2章 誕生日と男子会
第326話 ふて寝とお願い
しおりを挟む
「神木くん、大丈夫ですか!?」
それから暫くして、飛鳥の着替えを終えた隆臣が、大河を部屋の中に呼び返した。
だが、大河が部屋に入り、一番に飛び込んできたのは、なにやら疲れた顔をして、コタツに突っ伏している飛鳥の姿。
「どうしたんですか、神木くん! 顔色悪いというか、大丈夫ですか!?」
「大丈夫じゃないよ。隆ちゃん、乱暴すぎるんだもん。もっと優しくしてくれたらよかったのに……っ」
「え? 乱暴? 優しくって……橘これ、なんの話?」
「着替えの話だ! 着替えの!!」
飛鳥が軽く涙目になっているせいか、何の想像したのか顔を赤くした大河に、隆臣がピシャリと言い放つ。
あの後、飛鳥の服を脱がしたはいいが、思った以上に擽ったがりだったのか、肌に触れる度に変な声をだして嫌がるものだから、思いのほか手荒くなってしまった。
だが、何が悲しくて、男を襲って感覚に陥りながら、酔っぱらいの介抱をしなくてはならないのか。
はっきりいって、泣きたいのはこちらの方だ。
「はぁ……俺、疲れたから、ちょっと横になるわ」
「えー、橘、寝ちゃうの!」
すると、カーペットの上にふて寝し始めた隆臣をみて、大河が残念そうな声を上げる。
「夜は、まだまだこれからなのにー。あ、神木くんは、どうしますか?眠いなら、寝ても」
「大丈夫だよー、まだ付き合えるよー」
(何が「付き合えるよー」だ。さっきまで、寝てたヤツが……)
隆臣は、軽く苛立つ。
着替えの際に、ある程度目が覚めたようだが、どうやら、まだ思考は、酔っぱらいのままらしい。
だが、もうどうにでもなれ──と、隆臣は知らぬ存ぜぬを決め込むと、そんな隆臣の傍らで、飛鳥と大河が、二人だけで話を始めた。
「神木くんて、酔うと、こんなに可愛くなるんですね~」
「うーん、そうかなー」
「そうですよ! いつものキリリとした感じが、ふわふわの綿菓子みたいになっちゃうというか! 俺、神木くんと飲めて幸せです!」
「あはは、武市くんて、やっぱり面白いね~」
「…………」
本音、なんだろうか?
隆臣は、ふと考える。
だが、酔って発した言葉は、かなりの確率で、本音だった。つまり、日頃あんなにも辛辣なことばかり言いつつも、本心では、そこまで大河のことを嫌ってはいないのだろう。
(まぁ、嫌いな奴なら、一緒につるんでないか)
寝たフリを続けながら、隆臣は、二人の会話に耳をすませる。だが、それからしばらくして話は思いもよらぬ方向に向かい始めた。
「そうだ、神木くん! さっきの話覚えてますか!?」
「さっきの……?」
「何でも、言うこと聞いてくれるってやつですよ!」
「…………」
おっと、まだあの話し覚えてたのか?
ちょっと、雲行きが怪しくなってきた会話に、隆臣はじっと聞き耳を立てる。
まさか、飛鳥のやつ、OKするんじゃないだろうな?
「うん。いいよー。なにすればいいの?」
たが、隆臣の予想どおり、またもや飛鳥は承諾した。ニコニコ笑って、危機感など一切抱いていない飛鳥。
どうしよう。
眠りたいのに、心配で眠れない!!
「じゃぁ、神木くん! 俺の質問に、全部答えてもらってもいいですか!」
「ん、いいよ」
「じゃぁ、まず、好きな食べ物は!」
「いちご」
「じゃぁ、嫌いな食べ物」
「納豆」
「好きな動物は?」
「ハムスター」
「行ってみたい国は!」
「うーん、フランスかなー」
「おー、フランス! じゃぁ、得意料理は?」
「んーと……なんだろー、オムライス?」
「あー、神木くんのオムライス食べたい! ケチャップで文字とか書いて欲しい~」
「たまに、書いてるよー。妹弟のやつに」
「マジですか!? なんて書くんですか!?」
小学生か!!?
寝たフリを続けながらも、隆臣が思わずつっこむ。
心配して損した。どんな無理難題が飛び出すかと思いきや、ただの一問一答が始まっただけだった。
しかも、内容が、かなり子供!!
(これなら、大丈夫そうだな)
背後では、未だに飛鳥への質問が続いていた。
ほのぼのとした内容に安心してか、ちょっとだけ睡魔が襲ってきて、隆臣は静かに目を閉じる。
だが──
「では、ズバリ! あかりさんの、どこを好きになったんですか!?」
「!!?」
いきなりぶっ込んできた赤裸々な話題に、隆臣の眠気はあさってにぶっ飛ばされた。
だが、これは、ちょっと気になる。
あの飛鳥が、これまで家族優先で元カノ達とも、あっさりサヨナラしてきた恋愛面では超が付くほどダメダメだった、あの飛鳥が、ついに女の子に、本気になったのだ!
これは、さすがの隆臣とて、気になっていた。
飛鳥が、あかりさんを好きになった理由は、一体……まぁ、これで『ゆりさんに似てるから』とか言い出したら、確実にマザコン決定だが。
「え? あかりの……?」
「はい、どこに惹かれたのかなーと? 見た目ですか? それとも性格?」
「…………」
あかりのことでも思いだしているのか、ボーッとする飛鳥は、それから暫く沈黙すると
「……空気」
「え?」
「俺は……あかりの……空気が好き」
それから暫くして、飛鳥の着替えを終えた隆臣が、大河を部屋の中に呼び返した。
だが、大河が部屋に入り、一番に飛び込んできたのは、なにやら疲れた顔をして、コタツに突っ伏している飛鳥の姿。
「どうしたんですか、神木くん! 顔色悪いというか、大丈夫ですか!?」
「大丈夫じゃないよ。隆ちゃん、乱暴すぎるんだもん。もっと優しくしてくれたらよかったのに……っ」
「え? 乱暴? 優しくって……橘これ、なんの話?」
「着替えの話だ! 着替えの!!」
飛鳥が軽く涙目になっているせいか、何の想像したのか顔を赤くした大河に、隆臣がピシャリと言い放つ。
あの後、飛鳥の服を脱がしたはいいが、思った以上に擽ったがりだったのか、肌に触れる度に変な声をだして嫌がるものだから、思いのほか手荒くなってしまった。
だが、何が悲しくて、男を襲って感覚に陥りながら、酔っぱらいの介抱をしなくてはならないのか。
はっきりいって、泣きたいのはこちらの方だ。
「はぁ……俺、疲れたから、ちょっと横になるわ」
「えー、橘、寝ちゃうの!」
すると、カーペットの上にふて寝し始めた隆臣をみて、大河が残念そうな声を上げる。
「夜は、まだまだこれからなのにー。あ、神木くんは、どうしますか?眠いなら、寝ても」
「大丈夫だよー、まだ付き合えるよー」
(何が「付き合えるよー」だ。さっきまで、寝てたヤツが……)
隆臣は、軽く苛立つ。
着替えの際に、ある程度目が覚めたようだが、どうやら、まだ思考は、酔っぱらいのままらしい。
だが、もうどうにでもなれ──と、隆臣は知らぬ存ぜぬを決め込むと、そんな隆臣の傍らで、飛鳥と大河が、二人だけで話を始めた。
「神木くんて、酔うと、こんなに可愛くなるんですね~」
「うーん、そうかなー」
「そうですよ! いつものキリリとした感じが、ふわふわの綿菓子みたいになっちゃうというか! 俺、神木くんと飲めて幸せです!」
「あはは、武市くんて、やっぱり面白いね~」
「…………」
本音、なんだろうか?
隆臣は、ふと考える。
だが、酔って発した言葉は、かなりの確率で、本音だった。つまり、日頃あんなにも辛辣なことばかり言いつつも、本心では、そこまで大河のことを嫌ってはいないのだろう。
(まぁ、嫌いな奴なら、一緒につるんでないか)
寝たフリを続けながら、隆臣は、二人の会話に耳をすませる。だが、それからしばらくして話は思いもよらぬ方向に向かい始めた。
「そうだ、神木くん! さっきの話覚えてますか!?」
「さっきの……?」
「何でも、言うこと聞いてくれるってやつですよ!」
「…………」
おっと、まだあの話し覚えてたのか?
ちょっと、雲行きが怪しくなってきた会話に、隆臣はじっと聞き耳を立てる。
まさか、飛鳥のやつ、OKするんじゃないだろうな?
「うん。いいよー。なにすればいいの?」
たが、隆臣の予想どおり、またもや飛鳥は承諾した。ニコニコ笑って、危機感など一切抱いていない飛鳥。
どうしよう。
眠りたいのに、心配で眠れない!!
「じゃぁ、神木くん! 俺の質問に、全部答えてもらってもいいですか!」
「ん、いいよ」
「じゃぁ、まず、好きな食べ物は!」
「いちご」
「じゃぁ、嫌いな食べ物」
「納豆」
「好きな動物は?」
「ハムスター」
「行ってみたい国は!」
「うーん、フランスかなー」
「おー、フランス! じゃぁ、得意料理は?」
「んーと……なんだろー、オムライス?」
「あー、神木くんのオムライス食べたい! ケチャップで文字とか書いて欲しい~」
「たまに、書いてるよー。妹弟のやつに」
「マジですか!? なんて書くんですか!?」
小学生か!!?
寝たフリを続けながらも、隆臣が思わずつっこむ。
心配して損した。どんな無理難題が飛び出すかと思いきや、ただの一問一答が始まっただけだった。
しかも、内容が、かなり子供!!
(これなら、大丈夫そうだな)
背後では、未だに飛鳥への質問が続いていた。
ほのぼのとした内容に安心してか、ちょっとだけ睡魔が襲ってきて、隆臣は静かに目を閉じる。
だが──
「では、ズバリ! あかりさんの、どこを好きになったんですか!?」
「!!?」
いきなりぶっ込んできた赤裸々な話題に、隆臣の眠気はあさってにぶっ飛ばされた。
だが、これは、ちょっと気になる。
あの飛鳥が、これまで家族優先で元カノ達とも、あっさりサヨナラしてきた恋愛面では超が付くほどダメダメだった、あの飛鳥が、ついに女の子に、本気になったのだ!
これは、さすがの隆臣とて、気になっていた。
飛鳥が、あかりさんを好きになった理由は、一体……まぁ、これで『ゆりさんに似てるから』とか言い出したら、確実にマザコン決定だが。
「え? あかりの……?」
「はい、どこに惹かれたのかなーと? 見た目ですか? それとも性格?」
「…………」
あかりのことでも思いだしているのか、ボーッとする飛鳥は、それから暫く沈黙すると
「……空気」
「え?」
「俺は……あかりの……空気が好き」
0
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
あやかし民宿『うらおもて』 ~怪奇現象おもてなし~
木川のん気
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞応募中です。
ブックマーク・投票をよろしくお願いします!
【あらすじ】
大学生・みちるの周りでは頻繁に物がなくなる。
心配した彼氏・凛介によって紹介されたのは、凛介のバイト先である『うらおもて』という小さな民宿だった。気は進まないながらも相談に向かうと、店の女主人はみちるにこう言った。
「それは〝あやかし〟の仕業だよ」
怪奇現象を鎮めるためにおもてなしをしてもらったみちるは、その対価として店でアルバイトをすることになる。けれど店に訪れる客はごく稀に……というにはいささか多すぎる頻度で怪奇現象を引き起こすのだった――?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
それいけ!クダンちゃん
月芝
キャラ文芸
みんなとはちょっぴり容姿がちがうけど、中身はふつうの女の子。
……な、クダンちゃんの日常は、ちょっと変?
自分も変わってるけど、周囲も微妙にズレており、
そこかしこに不思議が転がっている。
幾多の大戦を経て、滅びと再生をくり返し、さすがに懲りた。
ゆえに一番平和だった時代を模倣して再構築された社会。
そこはユートピアか、はたまたディストピアか。
どこか懐かしい街並み、ゆったりと優しい時間が流れる新世界で暮らす
クダンちゃんの摩訶不思議な日常を描いた、ほんわかコメディ。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる