神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜

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第17章 華の憂鬱

第232話 母親と隠し子

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「え?」

 瞬間、華の目に飛び込んできたのは、あの日、兄が家に連れ込んでいた女の人の姿だった。

 栗色の髪をした、優しげな女の人。

 白のシフォンブラウスに、チェック柄のロングスカートをきたその姿は、どこか清楚で柔らかな印象を受けた。

 だが、その女性のそばには、あろうことか「ママ~」と言ってスカートを引っ張る、2歳くらいの女の子がいて、華はその光景に絶句する。

(ま……ママ?)

 ということは、つまり──

(え!!? まさか、もう子供が!?)

 衝撃の展開に、華は蒼白した。

 兄と身体の関係があるかもしれない女の人に、子供がいる!?

 ということは、もしかしてあの子は、兄の──

(いやいや、ちょっと待って!! だって、あの子2歳くらいだし!! それじゃ、飛鳥兄ぃが、2年前に子供作ったことになるじゃん!!)

 いや、でも2年前だとしたら
 飛鳥兄ぃ18歳だよね?

 ぶっちゃけ、なくはないよね!?
 ありえない話ではないよね!?

 むしろ、あんなにモテるんだし、くらいいても不思議じゃないよね!!

 ていうか、最近あの人の家に行ったり、私たちに内緒で会ってたのは、もしかして、子供に会うためとか!?

 家族に内緒で『第二の家族』を作っていたとか!?

(あぁぁぁぁぁぁ、ちょっと待って! いくらなんでも、それはマズいッ!!)

 華の頭の中は、もうパニックだった。

(嘘でしょ、子供までいるなんて、このこと、お父さんは知ってるの!?……いやいやいや、落ち着け! いくらなんでも、そこまで節操のない人じゃ……っ)

 だが、さすがにありえないと、華は一度深呼吸をすると、その二人をマジマジと見つめた。

 女の子と会話をする女の人は、ふわりと優しい笑みを浮かべていた。

 穏やかに話しかけながら、女の子の手を引いていく姿は、本当に優しいお母さんと言う印象を受けた。

 だが……

(うーん。でもよく見たら、あの子、飛鳥兄ぃには似てないかも?)

 だが、兄の子かも?……と疑いかけたその女の子は、どこにでもいそうな"普通の子"だった。

 金髪でもないし、碧眼でもない。

 それに、もしあの兄に、子供がうまれたとしたら、もっとが産まれてくるような気がした。(失礼)

(お兄ちゃんの子供じゃない? でも『ママ』ってことは……)

 やっぱり、人妻?
 もしや、人様の女に手を出しているのか?

 華が、そう思った時だった──

「あ! ママだー!」

 と、女の子が別の女性を指さした。

 女の子に指をさされた女性は、その後、女の子の元に駆け寄ると、その小さな体を抱きあげる。

「ハルカ~、探したんだから!」

 どうやら、その女性は、その女の子の本当の母親らしく、母親はぺこりと頭を下げると、申し訳なさそうに、女性に話しかけはじめた。

「すみませんでした。ちょっと目を離した隙にいなくなってしまって」

「いいえ。多分、同じ色のスカートをはいてたので、私をお母さんと間違えたのかも? 良かったね、ハルカちゃん。お母さん見つかって」

「うん!」

 遠巻きに聞こえてきた会話は、そんな感じだった。

(あれ? じゃぁ……あの人…)

 どうやら母親でも、人妻でもないらしい。

(っ……私、なんて勘違いを!?)

 とんでもない早とちりに、安堵と恥ずかしさでいっぱいになった華。

 だが、子持ち疑惑の誤解はとけたものの、あのお姉さんが、兄と怪しい関係であることに変わりはない。

 結局、そのあとも華は、一人買い物をする、その女の人から目を離すことが出来ず……


 ◇◇◇


(──ていうか、これ尾行だよね!?)

 そして、買い物を終え、会計まですませ、店の外に出た瞬間、華は自分の行動にハッと我に返った。

 女の人が気になりすぎて、ついコソコソと後をつけてしまった!

 だか、いくら気になるとはいえ、見ず知らずの人を尾行するなんて……!

(ど、どうしよう。いっそ話しかけて……っ)

 だが、そんな勇気もなかった。
 大体、話しかけたところで、何を話せばいい

 ──ガシャン!?

「いッ──た!?」

 だが、その瞬間、華の足に激痛が走る。

 考え事をしていたせいで、道路脇に停めてあった自転車に気づかなかったらしい。華は、足を思い切りぶつけ、そのままアスファルトの上に蹲った。

「っ~~~ッ!」

 露骨に弁慶の泣き所を強打し、痛みに耐える華。

 しかも、スーパーでもらった買い物袋が、自転車にぶつかった反動で破れてしまったらしい。
 中の荷物が破れた隙間から、ワラワラと路上に散らばりはじめた。

(っ……最悪)

 足をぶつけただけでなく、まさか、袋まで破れてしまうなんて……!

 踏んだり蹴ったりの状況に、華が深々とため息をついた、その時──

「大丈夫?」

「!?」

 と、突然、声をかけられた。
 その声に、華が視線をあげると……

「怪我、してない?」

 そう言って、心配そうに、さっきの女性が声をかけてきた。


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