226 / 507
第15章 オーディション
第210話 兄と部屋の中
しおりを挟む
~~♪
その後、葉月との約束がなくなり、一人自室にこもった華は、スマホで音楽をかけながら、蓮から借りてきた漫画を読んでいた。
気になりつつも読めずにいた「進撃の小人」
それの1巻読み終わり、2巻目に入ろうとしたその時──
バタン!!!
「きゃ!?」
突然、扉が開いた!
華は、ビクリと体を弾ませると、何事かと部屋の入口に目を向ける。
「ちょっと、蓮!! 入るならノックくらいしなさいよね!?」
すると、そこには弟の蓮が立っていた。華はうつ伏せになっていた体を起こしながら、蓮に注目する。
だが、その顔は、どことなく青ざめていて
「……蓮? どうしたの?」
「あ、兄貴が……っ」
すると、蓮は
「兄貴が、女の人連れ込んでる!」
「え!?」
第210話『兄と部屋の中』
◇◇◇
(あー、なんでよりによって……っ)
一方、飛鳥は部屋に入ったあと、扉の前で一人項垂れていた。
誰もいないと思って、家に連れつきたのに、まさか二人揃って、今日の予定が中止になるなんて!
(参ったな。あかりはいいとして──)
扉から離れると、飛鳥は改めてエレナを見つめた。
そして、その容姿は、自分の幼い頃にとてもよく似ている。
瞳の色は違うが、この珍しい髪の色とあの顔立ちを見れば、なにかしら関係があることには気づくだろう。
だぎ、できる限り、華と蓮を、ミサに関わらせたくはない。
となれば、やはり今、エレナを華と蓮に会わせるわけにはいかない。
「あの……迷惑かけて、ごめんなさい」
すると、エレナが不安そうな眼差しで、飛鳥を見つめ、そういった。
「誰もいない」と言っていた家に人がいたせいか、申し訳なさを感じたのかもしれない。シュンと俯いたエレナを見て、飛鳥は小さく微笑みながら
「大丈夫だよ」
と、エレナの前に歩み寄り、ぽんぽんと頭を撫でる。
確かに家の中では、華と蓮に見つかるリスクがある。だが、このまま二人を、いつ見つかるかわからない外に放置しておくわけにもいかない。
「とりあえず、座ろうか? ベッド、座っていいよ」
その後、気持ちを切り替えると、飛鳥が二人に座る場所を指示し、あかりとエレナは、言われるままベッドの上に腰掛けた。
すると、今度はあかりが心配しつつ、声をかけてきた。
「あの、本当に大丈夫なんですか? やっぱり、私たち帰った方が……」
「大丈夫だよ」
飛鳥は、安心させるようにニコリと笑い、ベッド側にあるデスクのイスに腰掛けた。
仮に、どちらかに見つかるのだとしたら、あの人に見つかるよりは、蓮華に見つかった方が、何十倍もマシだ。
「……とはいっても、少し声を落として話した方がいいかもね? あとは……ん?」
だが、その瞬間、何かを察知した飛鳥が、再び部屋の扉に視線を向けた。
じっと耳をすませ扉を凝視する。すると、飛鳥の表情が、心做しか険しいものに変わった。
「? あの……っ」
急に黙り込んだ飛鳥に、エレナが再び不安そうな顔をする。すると飛鳥は、口元に指を立て、エレナの言葉を静止すると
「ごめん。ちょっと待ってて……」
◇
◇
◇
「華! バレだらどうすんだよ!」
一方、飛鳥の部屋の前では、先ほど忠告されたにも関わらず、華と蓮が部屋の様子を伺いにきていた。
蓮から「兄が女の人を連れ込んでる」と聞いた華。
一瞬耳を疑ったが、それが本当だとするなら、このまま見過ごすわけにはいかない!
そんなわけで、二人は兄の部屋の前でコソコソと話をしていた。
「だって、このまま見て見ぬふりなんてできないよ! 彼女ならともかく、彼女じゃないんだよ! しかも、家だよ! オマケに私達いるんだよ!?」
「そうだけど……でも俺、さっき『絶対近づくな』って言われたし」
「言われたからなんなの! 絶対近づくなって、ますます怪しいじゃん!」
引き止める蓮の言葉など聞かず、華は部屋の扉にそっと耳を近づける。
「ちょ、待て華! おちつけ!!」
「こら蓮! 引っ張らないでよ!」
「お前、わかってるのか!? 近づくなってことは、俺たちに聞かれたらマズイ『何か』をシてるってことだぞ」
「ッ……」
蓮の言葉に、華は顔が真っ赤にする。
年頃の男女が、密室に二人きり。華とて、その『何か』が全くわからない訳ではない。
「いいのか? 女の人の喘ぎ声とか聞こえてきても」
「はっきり言わないでよ、バカ!!」
酷く狼狽える華。
だが、蓮の言い分も分からなくはない。
今まで、真面目だった兄が、ここ最近、危ない恋愛に手を出している。
しかも、あろうことか、今まさに、その女を部屋に連れ込んでいる!
ならば、兄の部屋の中で、あ~んなことや、こ~んなことが繰り広げられていても全くおかしくないわけで……
「いやいやいや、落ち着こう! いくら二人きりだからって、本当に、そ、そんなことしてるとは限らないし! それに、もし本当に彼女もない女の人連れ込んで、変なことしてるなら、辞めさせた方がいいしでしょ! もう、こうなったら、白黒ハッキリつけるよ!」
「マジか。お前、この前まで、決定的な証拠掴む勇気ないとかいってなかった?」
「家に連れ込んだ時点で、決定的な証拠突きつけられてるようなもんでしょ!? これもお兄ちゃんのためだよ! ほら蓮、腹くくって!」
「……っ」
確かに、華の言う通りだ。さっき兄は、まるで隠すように女の人を部屋の中に押し込んだ。
何もやましいことがないなら、弟に一言くらい紹介したっていいだろうに……
「……分かった」
「よし……!」
二人真面目な顔で、その意思を固めると、再度兄の部屋を見すえた。
もし、これで中から、兄の囁き声とか、女の子のあられもない声が聞こえてきたとしても、絶対に動揺しないように!……そう決意に二人は深呼吸をすると、改めて兄の部屋の扉に、耳を近づける。
──ドカッ!?
「「いったぁ!?」」
だが、その瞬間、二人の頭に鈍い痛みが走った。
何事かと顔を上げれば、どうやら兄の部屋の扉が開いたらしい。扉に思い切り頭をぶつけた二人が、頭を押さえて蹲れば、中から出てきた兄は
「お前ら、何やってんの?」
と、二人を睨みつけた。
その後、葉月との約束がなくなり、一人自室にこもった華は、スマホで音楽をかけながら、蓮から借りてきた漫画を読んでいた。
気になりつつも読めずにいた「進撃の小人」
それの1巻読み終わり、2巻目に入ろうとしたその時──
バタン!!!
「きゃ!?」
突然、扉が開いた!
華は、ビクリと体を弾ませると、何事かと部屋の入口に目を向ける。
「ちょっと、蓮!! 入るならノックくらいしなさいよね!?」
すると、そこには弟の蓮が立っていた。華はうつ伏せになっていた体を起こしながら、蓮に注目する。
だが、その顔は、どことなく青ざめていて
「……蓮? どうしたの?」
「あ、兄貴が……っ」
すると、蓮は
「兄貴が、女の人連れ込んでる!」
「え!?」
第210話『兄と部屋の中』
◇◇◇
(あー、なんでよりによって……っ)
一方、飛鳥は部屋に入ったあと、扉の前で一人項垂れていた。
誰もいないと思って、家に連れつきたのに、まさか二人揃って、今日の予定が中止になるなんて!
(参ったな。あかりはいいとして──)
扉から離れると、飛鳥は改めてエレナを見つめた。
そして、その容姿は、自分の幼い頃にとてもよく似ている。
瞳の色は違うが、この珍しい髪の色とあの顔立ちを見れば、なにかしら関係があることには気づくだろう。
だぎ、できる限り、華と蓮を、ミサに関わらせたくはない。
となれば、やはり今、エレナを華と蓮に会わせるわけにはいかない。
「あの……迷惑かけて、ごめんなさい」
すると、エレナが不安そうな眼差しで、飛鳥を見つめ、そういった。
「誰もいない」と言っていた家に人がいたせいか、申し訳なさを感じたのかもしれない。シュンと俯いたエレナを見て、飛鳥は小さく微笑みながら
「大丈夫だよ」
と、エレナの前に歩み寄り、ぽんぽんと頭を撫でる。
確かに家の中では、華と蓮に見つかるリスクがある。だが、このまま二人を、いつ見つかるかわからない外に放置しておくわけにもいかない。
「とりあえず、座ろうか? ベッド、座っていいよ」
その後、気持ちを切り替えると、飛鳥が二人に座る場所を指示し、あかりとエレナは、言われるままベッドの上に腰掛けた。
すると、今度はあかりが心配しつつ、声をかけてきた。
「あの、本当に大丈夫なんですか? やっぱり、私たち帰った方が……」
「大丈夫だよ」
飛鳥は、安心させるようにニコリと笑い、ベッド側にあるデスクのイスに腰掛けた。
仮に、どちらかに見つかるのだとしたら、あの人に見つかるよりは、蓮華に見つかった方が、何十倍もマシだ。
「……とはいっても、少し声を落として話した方がいいかもね? あとは……ん?」
だが、その瞬間、何かを察知した飛鳥が、再び部屋の扉に視線を向けた。
じっと耳をすませ扉を凝視する。すると、飛鳥の表情が、心做しか険しいものに変わった。
「? あの……っ」
急に黙り込んだ飛鳥に、エレナが再び不安そうな顔をする。すると飛鳥は、口元に指を立て、エレナの言葉を静止すると
「ごめん。ちょっと待ってて……」
◇
◇
◇
「華! バレだらどうすんだよ!」
一方、飛鳥の部屋の前では、先ほど忠告されたにも関わらず、華と蓮が部屋の様子を伺いにきていた。
蓮から「兄が女の人を連れ込んでる」と聞いた華。
一瞬耳を疑ったが、それが本当だとするなら、このまま見過ごすわけにはいかない!
そんなわけで、二人は兄の部屋の前でコソコソと話をしていた。
「だって、このまま見て見ぬふりなんてできないよ! 彼女ならともかく、彼女じゃないんだよ! しかも、家だよ! オマケに私達いるんだよ!?」
「そうだけど……でも俺、さっき『絶対近づくな』って言われたし」
「言われたからなんなの! 絶対近づくなって、ますます怪しいじゃん!」
引き止める蓮の言葉など聞かず、華は部屋の扉にそっと耳を近づける。
「ちょ、待て華! おちつけ!!」
「こら蓮! 引っ張らないでよ!」
「お前、わかってるのか!? 近づくなってことは、俺たちに聞かれたらマズイ『何か』をシてるってことだぞ」
「ッ……」
蓮の言葉に、華は顔が真っ赤にする。
年頃の男女が、密室に二人きり。華とて、その『何か』が全くわからない訳ではない。
「いいのか? 女の人の喘ぎ声とか聞こえてきても」
「はっきり言わないでよ、バカ!!」
酷く狼狽える華。
だが、蓮の言い分も分からなくはない。
今まで、真面目だった兄が、ここ最近、危ない恋愛に手を出している。
しかも、あろうことか、今まさに、その女を部屋に連れ込んでいる!
ならば、兄の部屋の中で、あ~んなことや、こ~んなことが繰り広げられていても全くおかしくないわけで……
「いやいやいや、落ち着こう! いくら二人きりだからって、本当に、そ、そんなことしてるとは限らないし! それに、もし本当に彼女もない女の人連れ込んで、変なことしてるなら、辞めさせた方がいいしでしょ! もう、こうなったら、白黒ハッキリつけるよ!」
「マジか。お前、この前まで、決定的な証拠掴む勇気ないとかいってなかった?」
「家に連れ込んだ時点で、決定的な証拠突きつけられてるようなもんでしょ!? これもお兄ちゃんのためだよ! ほら蓮、腹くくって!」
「……っ」
確かに、華の言う通りだ。さっき兄は、まるで隠すように女の人を部屋の中に押し込んだ。
何もやましいことがないなら、弟に一言くらい紹介したっていいだろうに……
「……分かった」
「よし……!」
二人真面目な顔で、その意思を固めると、再度兄の部屋を見すえた。
もし、これで中から、兄の囁き声とか、女の子のあられもない声が聞こえてきたとしても、絶対に動揺しないように!……そう決意に二人は深呼吸をすると、改めて兄の部屋の扉に、耳を近づける。
──ドカッ!?
「「いったぁ!?」」
だが、その瞬間、二人の頭に鈍い痛みが走った。
何事かと顔を上げれば、どうやら兄の部屋の扉が開いたらしい。扉に思い切り頭をぶつけた二人が、頭を押さえて蹲れば、中から出てきた兄は
「お前ら、何やってんの?」
と、二人を睨みつけた。
0
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
あやかし民宿『うらおもて』 ~怪奇現象おもてなし~
木川のん気
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞応募中です。
ブックマーク・投票をよろしくお願いします!
【あらすじ】
大学生・みちるの周りでは頻繁に物がなくなる。
心配した彼氏・凛介によって紹介されたのは、凛介のバイト先である『うらおもて』という小さな民宿だった。気は進まないながらも相談に向かうと、店の女主人はみちるにこう言った。
「それは〝あやかし〟の仕業だよ」
怪奇現象を鎮めるためにおもてなしをしてもらったみちるは、その対価として店でアルバイトをすることになる。けれど店に訪れる客はごく稀に……というにはいささか多すぎる頻度で怪奇現象を引き起こすのだった――?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる