122 / 509
第8章 遭遇
第110話 親と子
しおりを挟む「いつか子供もつなら、6人くらいいてもいいかな~」
「ろ、6人?!」
一方、あかりは、飛鳥が放ったその発言に、ひどく顔をひきつらせていた。
いくら子供が好きだからと言って、6人は、さすがに多くないだろうか?
てか、人を好きになれないなんて、いっておきながら、子供は6人もほしいって、それってかなり矛盾してる気がする!!
「6人って、さすがにそれは、将来奥さんになる人がビックリしますよ? せめて4人じゃないですか?」
「え? 4人も6人もそんなに変わらないでしょ?」
「いや、変わるでしょ!」
のちに、この人の奥さんになる人が現れるのかと思うと、あかりは少しだけ可哀想な気がした。
だが、これだけの美男子だ。もしかしたら本当に6人産みたいという女が現れても、おかしくなくなさそうで、なんだかちょっと複雑だ。
「……でも、まさか、そこまで"子供好き"だとは思いませんでした」
「そう? だって子育てって、大変だけど楽しいよ~♪」
(なに、この人、隠し子でもいるの? いや、いてもおかしくないけど……)
子育て経験豊富そうな発言に、あかりはちょっと困惑する。
すると、まるで異星人でも見るようなあかりに「そんなにおかしいか?」と首を傾げた飛鳥は、再度あかりに話をふってきた。
「じゃぁ、あかりだったら、何人欲しい?」
「え? 子供ですか?」
「うん。参考までに♪」
「そうですね。私は……」
欲しい子供の人数を聞かれ、あかりはふむと考え込む。
「いりません」
「え?」
だが、予想外の返答に、今度は飛鳥が瞠目する。
「は? いらないって何が?」
「え? だから子供が」
「え? その見た目で?」
「見た目? どういう意味ですか。見た目で子供産む産まないが決まるんですか?」
にっこりと笑顔で反論され、今度は飛鳥が複雑な心境になる。
意外だった。こんな「母性の塊」みたいな顔して、まさか子供嫌いだったとは、人は見かけによらないとは、まさにこの事だ。
だが、子供嫌いなら、なぜエレナにあんなに親身になれるのだろうか?
それに、あかりが目指しているのは司書。図書室の先生になるなら、どうしたって子供と関わるわけで……
「そういえば……あかりは、なんで司書目指してるの?」
「え?」
「本が好きなのはわかるけどさ、図書室の先生って、子供と関わる仕事だし。それに進路決めるのギリギリだっとか言ってたよね? 地元にはなかったの、行きたい大学?」
飛鳥からの突然の質問。あかりは、それを聞いて、僅かに視線を泳がせると
「あ、いえ……本当は、地元の大学を受けるつもりだったんですけど……色々考えて、家を出ることにして……」
「……」
「それに、私は……神木さんみたいに『誰かの役にたちたい』とか、そんな立派な目標があるわけではなくて……ただ、一人で生きていくために必要な学歴とか資格を、とっておきたかっただけなんです」
「……え?」
一人で──?
「なんで……」
「お母さん、痛い!!」
「「!?」」
瞬間、どこからか切羽詰まるような声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。
飛鳥とあかりが、咄嗟に声がした方に目をむければ、公園の外の歩道で、強引に腕を引かれながら叫ぶ子供の姿があった。
「お母さん、ごめん! ごめんなさい……っ!」
「エレナ、言ったはずよ。学校から戻った後は、もう家からでちゃダメだって」
「あ……っ、それは……」
母親らしき女性に叱られているエレナ姿。
だが、涙を流しながら必死に謝るエレナの姿が目に入った瞬間、あかりは、顔を青くしベンチから立ち上がった。
(あれって……エレナちゃん……っ)
そして、その腕を掴むのが、エレナの母親である「紺野ミサ」だということがわかった瞬間、あかりは思わず身を強ばらせた。
直接、目にするのは初めてだった。だが、エレナから母親の話はよく聞いていた。
本来なら、口を挟むべきではないのかもしれない。でも……
ガシッ──!!
「!?」
だが、あかりがベンチから離れようとした瞬間、隣にいた飛鳥が、突如あかりの腕を掴んだ。
突然、腕を捕まれ、あかりは瞠目する。
「あ……あの、神木さん、離してください、エレナちゃんが……!」
「──ダメだ」
「え?」
それは、聞き取れないくらい、小さな声だった。
だけど、ハッキリと聞こえたその言葉に、あかりは困惑する。
それはまるで「行くな」とでも言うかのようで……
「神木、さん……?」
なぜ引き止めるのかが分からず、あかりが飛鳥を見つめる。
だが、飛鳥の瞳は、ただまっずぐエレナたちにむけられていた。
(っ……なんで)
なんで、あの人が
ここにいるんだ────?
0
お気に入りに追加
172
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~
椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」
仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。
料亭『吉浪』に働いて六年。
挫折し、料理を作れなくなってしまった――
結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。
祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて――
初出:2024.5.10~
※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる